子どもの近視は、日本だけでなく世界的に増えています。近視というと、遠くが見えにくくなってメガネが必要になるだけ、と考える方もいるかもしれません。
しかし、小児期から眼球が前後方向に伸びる眼軸長の延長が続くと、将来的に強度近視となり、さまざまな目の病気のリスクが高まります。
ここでは、国内外の研究や文部科学省の調査をもとに、子どもの近視の現状と家庭でできる予防について解説します。
もくじ
日本の子どもでは裸眼視力1.0未満が増えている
学校の健康診断で、視力が1.0未満だったという子どもは珍しくありません。文部科学省の学校保健統計では、裸眼視力1.0未満の割合は長期的に増加しています。
令和6年度には、
・幼稚園:約27%
・小学生:約37%
・中学生:約61%
・高校生:約71%
が裸眼視力1.0未満でした。
もちろん、裸眼視力が1.0未満だからといって、すべてが近視とは限りません。しかし、学年が上がるほど裸眼視力不良が増えていることからも、子どもの近視が大きな問題となっていることがわかります。
近年は視力だけでなく、屈折度や眼軸長を測定した調査も行われています。その結果、日本の子どもでは小学校低学年から中学生まで眼軸長の延長が続いていることが確認されています。
近視は早く始まるほど強くなりやすい
近視で特に注意したいのが、発症する年齢です。
海外の長期追跡研究では、7〜8歳で近視を発症した子どもの53.9%が成人期に強度近視となったのに対し、12歳以降に近視を発症した場合は1.3%でした。
つまり、近視が始まる年齢が早いほど、その後に近視が強くなる可能性があります。
その理由の一つが眼軸長です。子どもの目は成長過程にあり、特に低学年では眼軸長が伸びやすい時期です。文部科学省の調査でも、2年間の眼軸長の伸びは小学1年生で平均0.64mmと最も大きく、中学生になっても眼軸長の延長は続いていました。
そのため、近視対策は近視がかなり進んでから始めるのではなく、低学年の段階から意識することが大切です。
近視予防で特に重要なのは屋外で過ごす時間
現在、生活習慣のなかで最も一貫して近視予防との関連が確認されているのが屋外活動です。
中国で行われた研究では、学校生活に1日40分の屋外活動を追加したところ、3年間の近視発症が抑えられました。
複数の研究をまとめた解析でも、屋外で過ごす時間が長い子どもほど近視になりにくい傾向が確認されています。1日120分を超える屋外活動が有効である可能性も示されています。
ポイントは、運動そのものだけではありません。屋外の明るい環境で過ごすことが、近視発症を抑えることに関係していると考えられています。
学校の休み時間に外へ出る、休日に公園で遊ぶ、登下校で屋外を歩くなど、日常生活のなかで屋外時間を増やしていくことが現実的です。
スマホや読書では距離と連続時間にも注意
スマートフォンやタブレットを見ると近視になる、と単純に考えるのは正確ではありません。
近視との関連で重要なのは、近い距離を長時間見続ける近業です。
Sydney Myopia Studyでは、
・30cm未満の距離で読書する
・30分を超えて連続して読書する
ことが近視と関連していました。
つまり、スマートフォンだけでなく、本や勉強でも近い距離を長時間見続ければ近業になります。
勉強やデジタル機器を完全に避けることは現実的ではありません。そのため、
・画面や本に顔を近づけすぎない
・近くを見る作業を長時間続けない
・途中で遠くを見たり休憩したりする
・屋外で過ごす時間も確保する
といった習慣が重要です。
デジタル機器そのものを悪者にするよりも、使い方を見直すことがポイントです。
両親が近視の場合は特に注意したい
近視には生活環境だけでなく、遺伝的な要素も関係します。
日本の小中学生を対象とした調査では、両親とも近視でない子どもと比べた新規近視発症のオッズ比は、
・父親のみ近視:1.65
・母親のみ近視:1.31
・両親とも近視:2.54
でした。
遺伝的な要因を変えることはできません。しかし、両親が近視の場合には、より早い時期から屋外活動や近業習慣に気を配り、定期的に視力や屈折、眼軸長を確認する意味があります。
学校健診で視力低下を指摘された場合にも、単にメガネを作って終わりではなく、近視がどの程度進んでいるのかを眼科で確認することが大切です。
子どもの近視は予防と進行抑制をセットで考える
現在の小児近視対策は、生活習慣の改善だけではありません。日本でも近視進行を抑えることを目的とした点眼薬やコンタクトレンズなどの選択肢が登場しています。
大切なのは、すべての子どもに同じ方法を使うのではなく、
・年齢
・近視の程度
・眼軸長とその伸び方
・近視を発症した年齢
・両親の近視歴
・屋外活動時間
・近業やデジタル機器の使用状況
などを踏まえて考えることです。
子どもの近視は、見えにくくなってからメガネで補えばよいという問題ではなくなっています。
屋外で過ごす時間を確保し、近い距離を長時間見続ける習慣を減らす。そして近視が始まった場合には、視力だけでなく屈折度や眼軸長も確認しながら経過をみることが重要です。
学校、家庭、眼科が連携して早い段階から取り組むことが、将来の強度近視や視覚障害のリスクを減らすことにつながります。
参考
『近視の現状と予防』(日本の眼科 97巻8号、2026年)
『令和6年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)』(文部科学省)
