網膜とその疾患

黄斑円孔

早速ですが皆さんに質問です。眼科を受診して医師に

ドクターK
ドクターK
網膜(あるいは黄斑)に穴が空いています。手術しないと治りませんよ

と言われたことはますか?それはもしかしたら、タイトルにある黄斑円孔という病気かもしれません。今回の記事はそんな黄斑円孔について取り上げたいと思います。僕のブログではこのように皆さんの目の健康に役立ちそうな記事を書いています。

黄斑円孔とは

網膜の中心には黄斑という場所があり、そこに穴があいてしまう病気が黄斑円孔という病気です。この病気は高齢者(50-70歳代)、女性(2.15〜3.3倍)、片眼性(84-90%)が多いとされています。有病率は0.09〜0.33%。

また、黄斑円孔は野球ボールやサッカーボールなどが眼に当たることでも生じることがあり、外傷の場合は若年者に多いとされています。

黄斑円孔の症状

黄斑は視力を出すのに最も重要な部位です。ここに穴が開いてしまうため、視力低下(0.1-0.4程度)や視界が歪んで見える(歪視症)という症状がでてきます。

黄斑円孔の診断

視力検査、眼底検査、光干渉断層計(OCT)が有用で、Amslerチャートによる歪視の検出もされることがあります。外傷による黄斑円孔の場合には、網膜色素上皮や脈絡膜の障害を伴うことが多いため、蛍光眼底造影検査を行うこともある。

Assil eye HPより引用

黄斑円孔の分類

黄斑円孔はその穴の状態によって分類されています。最近はOCT(光干渉断層計)の進歩により、黄斑円孔の分類がより詳しくできるようになりました。現在、黄斑円孔の分類は全部でstage1-A~stage4の5段階に分かれています。

Research Gate HPより引用

stage1-A:中心窩の嚢胞
stage1-B:嚢胞の後壁の破綻と外総円孔形成
stage2:前壁の裂隙形成と弁状の牽引、円孔周囲の網膜内に嚢胞様浮腫が生じる
stage3:弁が遊離して蓋を形成する
stage4:後部硝子体剥離が生じたもの

黄斑円孔網膜剥離

黄斑円孔を原因裂孔とする網膜剥離で、正視眼では稀だが強度近視眼女性に多い)で生じることがある。特に、日本では全網膜剥離の5%を占め、欧米の0.5-2.0%に比べて非常に多い。硝子体の液化が進むと、薄い後部硝子体皮質が収縮し、その結果網膜剥離を生じる。

症状は視力低下であるが、後極部の網脈絡膜萎縮が強い症例はもともと視力が悪い。よって、限局性網膜剥離の段階では自覚せず、広範囲の胞状剥離になって初めて気づくことも多い。従来は手術成績不良とされていたが、ILM翻転法などにより改善しつつある(復位率60-70%)。

Research Gate HPより引用

黄斑円孔の治療

黄斑円孔は上記の分類によって、手術をするかどうかを判断します。黄斑円孔のステージ1は自然経過で症状が改善してくることがあるため手術の適応ではありません。

しかし、ステージ2~4の黄斑円孔に対しては手術を行います。黄斑円孔の治療は硝子体手術という手術を行い、50歳以上であれば白内障手術も併せて行うことが多いです。

どのような手術かは詳細は割愛しますが、簡単に説明すると網膜の最も内側にある内境界膜という薄い膜を剥がし、その膜を用いて黄斑円孔で開いた穴を塞ぎます。最後に、塞いだ膜が取れないよう ガスを入れます。このガスは軽いため、うつぶせ寝の姿勢で術後数日間は過ごしてもらいます。

よく分からないなあ・・・
ななし
ななし

ガスが完全に吸収されるまでの期間(空気5日~1週、20%SF₆で2~2.5週、14%C₃F₈で8~11週)は飛行機搭乗や高地への移動を避ける。

という声が聞こえてきそうなので、今回も数多くの手術をされているレトロゲーム先生(@segazukiman)に動画協力していただいていますので、下記の動画をご覧ください。

黄斑円孔の手術
提供:レトロゲーム先生(@segazukiman

無事手術を終え、1週間から10日程度で徐々に視力が回復していきます。その治りは個人差があり、一概には言えませんが、1回手術をすれば生活で支障がない程度まで視力は回復することが多いです。手術により90%は円孔閉鎖が得られますが、その改善の仕方は個人差があり、3か月くらいで改善、安定するまでに1年くらいかかります。

ところが、患者さんの中には手術の合併症が出ることがあります。網膜裂孔や網膜剥離、白内障等の合併症も出ることがあるため、手術後も定期的な受診をしていただくことになります。 

手術後少し経ったけど、見えづらくなってきたな
ななし
ななし

このような症状が出てきたら必ずかかりつけの眼科医に相談するようにしてください。また、手術の進歩により黄斑円孔が再発する恐れは減ってきていますが、反対側の目にも約1割の方は黄斑円孔を発症するとされています。

黄斑円孔網膜剥離に対しては硝子体手術(に加えて内境界膜剥離(2~3乳頭径)+ガスタンポナーデ)行われることが多いですが、再手術例や難治例には黄斑バックリング術を行います。通常の裂孔原性網膜剥離に比べて(90%以上)、復位率が70%程度と低いとされています。

最近は硝子体手術後の非閉鎖例や最小円孔径が600μm以上の黄斑円孔に対して、自身の網膜を移植する自家網膜移植術を行う施設もある。

黄斑円孔の予後

罹病期間が短いほど、円孔が小さいほど閉鎖率は高く、視力予後も良好である。再発リスクは5%程度であり、円孔径が大きい場合や罹病期間が長い場合には眼軸長26 mm以上の強度近視眼などでは再発率が高くなる傾向がある。

術後の視機能予後については,円孔径が大きいほど視力回復不良、歪視や不等像視が残存しやすい、高齢になるほど不等像視が改善しにくいなどがある。

また、約15%に両眼発症するといわれており、僚眼が硝子体黄斑付着、特に硝子体黄斑牽引所見を伴っている場合では、MH発生のリスクが高いため長期的に慎重な経過観察が必要である。

参考文献

  1. 眼科学第2版
  2. 三和化学研究所HP
  3. 身につく眼底検査のコツ
  4. クローズアップ網膜診療
  5. 今日の眼疾患治療指針 第3版
  6. 第74回日本臨床眼科学会シンポジウム6強度近視による失明予防に向けて
  7. あたらしい眼科Vol37,No.7,2020
  8. Wang S, Xu L, Jonas JB. Prevalence of full-thickness macular holes in urban and rural adult Chinese: the Beijing Eye Study. Am J Ophthalmol 2006; 141: 589–591.
  9. Sen P, Bhargava A, Vijaya L, George R. Prevalence of idiopathic macular hole in adult rural and urban south Indian population. Clin Exp Ophthalmol 2008; 36: 257–260
  10. Mitchell P, Smith W, Chey T, Wang JJ, Chang A. Prevalence and associations of epiretinal membranes: The Blue Mountains Eye Study, Australia. Ophthalmology 1997; 104: 1033–1040.
  11. Rahmani B, Tielsch JM, Katz J, Gottsch J, Quigley H, Javitt J, et al. The cause-specific prevalence of visual impairment in an urban population. The Baltimore Eye Survey. Ophthalmology 1996; 103: 1721–1726
  12. McCannel CA, Ensminger JL, Diehl NN, Hodge DN. Population-based incidence of macular holes. Ophthalmology 2009; 116: 1366–1369. 
  13. Cho SC, Park SJ, Byun SJ, Woo SJ, Park KH. Five-year nationwide incidence of macular hole requiring surgery in Korea. Br J Ophthalmol 2019; 103: 1619–1623
  14. Ezra E, Wells JA, Gray RH, Kinsella FM, Orr GM, Grego J, et al. Incidence of idiopathic full-thickness macular holes in fellow eyes. A 5-year prospective natural history study. Ophthalmology 1998; 105: 353–359.
  15. Oh JH, Kim KT, Kang SW, Bae K, Lee SE, Kim AY. Development of idiopathic macular hole in fellow eyes: spectral domain optical coherence tomography features. Retina 2020; 40: 765–772
  16. Predictors for metamorphopsia in eyes undergoing macular hole surgery
  17. Aniseikonia and retinal morphological changes in eyes undergoing macular hole surgery
  18. Macular hole formation in fellow eyes with a perifoveal posterior vitreous detachment of patients with a unilateral macular hole

関連記事

硝子体・網膜・脈絡膜とその疾患このページでは網膜・脈絡膜とその疾患についてのリンクを掲載しています。...
オンライン眼科のサポート