角膜とその疾患

膠様滴状角膜ジストロフィ

膠様滴状角膜ジストロフィとは

膠様滴状角膜ジストロフィ(gelatinous drop-like corneal dystrophy:GDLD)は、角膜上皮下にアミロイドが沈着し、眼痛などの不快感とともに両眼性に著明な視力低下を生じる希少疾患です。

常染色体潜性遺伝を示し、日本における発症頻度は、1992年に報告された大学病院へのアンケート調査をもとに、約33,000人に1人と推定されています。ただし、全国規模で患者数を直接調査したものではなく、現在の実際の発症頻度とは異なる可能性があります。常染色体潜性遺伝を示すことから、近親婚の減少などに伴い、現在の発症頻度は以前より低下している可能性も指摘されています。

初期病変としては角膜上皮下から実質浅層のびまん性混濁がみられる。進行例では角膜輪部に微小透明な顆粒状変化がみられる。

顆粒状変化は直径0.3㎜~0.5㎜の乳白色の隆起病変です。輪部から角膜表層を中心とする血管侵入がある。さらに進行すると角膜全体に沈着病変が形成され、表面が不正で凸凹になる。実質深層への沈着は実質中層から浅層と比べて遅く、軽度なことが多い。

遺伝形式は常染色体劣性遺伝で、遺伝子座は1p32、原因遺伝子はTACSTD2です。TACSTD2遺伝子に機能喪失型変異が生じることで、角膜上皮細胞のタイトジャンクション形成に異常が起こる。

その結果、角膜上皮のバリア機能が低下し、涙液中のラクトフェリン蛋白質などが角膜内に侵入して、アミロイドを形成すると考えられている。

また、TACSTD2遺伝子解析は、令和2年度から保険収載されているD006-20角膜ジストロフィー遺伝子検査として実施可能です。

膠様滴状角膜ジストロフィの症状と所見

症状

多くは若年期に発症し、10代になると角膜上皮下へのアミロイド沈着が目立つようになります。進行すると、アミロイド沈着が角膜の大部分を覆い、周辺部からの血管侵入、著明な視力低下、眼痛を来します。また、角膜表面の隆起や混濁により整容面の問題を生じることもあり、生活の質に大きく影響します。

所見

典型例では、初期に角膜中央部から瞼裂部の角膜上皮下に、灰白色で半透明の隆起性病変が現れます。病変は次第に数を増し、癒合しながら角膜周辺部へ広がります。進行すると、角膜表面が不整となり、角膜周辺部から表層血管が侵入します。

臨床像には幅があり、角膜上皮下から実質浅層にびまん性混濁を示すタイプや、角膜輪部付近に微小な顆粒状変化を示すタイプもあります。実質深層への沈着は、表層から中層と比べて遅く、軽度にとどまることがあります。

Wikimedia Commons HPより引用

角膜混濁のタイプは、細隙灯顕微鏡所見により、typical mulberry type、band-keratopathy type、kumquat-like type、stromal opacity typeの4つに分類される。典型例では、灰白色から黄色の沈着が増え、成人期以降には瞼裂部を主体に角膜の大部分を覆うことがある。

病理所見は、角膜上皮が菲薄化し、角膜上皮下の乳白色の混濁はアミロイド沈着のためコンゴレッドで赤く染色され、偏光顕微鏡で黄緑色の像を示す。

膠様滴状角膜ジストロフィの診断と重症度

膠様滴状角膜ジストロフィーの診断基準

A.症状

  1. 視力低下
  2. 羞明
  3. 異物感
  4. 流涙

B.検査所見

1.両眼の角膜中央部から瞼裂に灰白色隆起性の角膜上皮直下のアミロイド沈着物の集簇(桑の実状と呼ばれる)を認める。

2.透過性の亢進から角膜上皮障害がないにもかかわらず、フルオレセイン染色後数分後に蛍光が観察されるdelayed stainingを認める。

3.角膜周辺部に表層の血管侵入を認める。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

1.二次性アミロイドーシス(注1)

2.Climatic droplet keratopathy(注2)

D.眼外合併症

なし

E.遺伝学的検査

TACSTD2遺伝子に異常を認める。(注3)

<診断のカテゴリー>

Definite:

  • Dを満たし、Aのいずれかを認め、Bの1を認め、Cの鑑別すべき疾患を除外できる症例
  • Dを満たし、Aのいずれかを認め、Bの2または3を認め、Eを認め、Cの鑑別すべき疾患を除外できる症例 (注4)

注釈

注1.睫毛乱生症や眼瞼内反症により睫毛が角膜上皮に接触する場合や、円錐角膜の突出の頂点付近の角膜上皮直下のアミロイドを認める場合があり、本疾患の角膜所見に類似する場合がある。

注2.40歳以上の男性に多く、黄色から灰白色の隆起状角膜病変により視力が低下する疾患。通常砂漠や極寒地域に見られ、紫外線や乾燥が原因と考えられている。

注3.TACSTD2はシングルエクソン遺伝子であり、検索が容易であること、また、本邦患者において同祖性が存在しQ118X変異(創始者変異)が病因染色体の80%以上を占めること、さらに、非典型例もこの創始者変異により発症することから診断的価値は高い。

注4.本症においては、Bの1は非常に特徴的な所見であり、診断に苦慮することはない(典型例)。

Bの1を認めない非典型例においては、A~Cのいずれかの組み合わせとEの遺伝子検査をもって診断する。

重症度分類

以下でIII度以上の者を医療費助成の対象とする。

  1. I度:罹患眼が片眼で、僚眼(もう片方の眼)が健常なもの
  2. Ⅱ度:罹患眼が両眼で、良好な方の眼の矯正視力0.3以上
  3. Ⅲ度:罹患眼が両眼で、良好な方の眼の矯正視力0.1以上、0.3未満
  4. Ⅳ度:罹患眼が両眼で、良好な方の眼の矯正視力0.1未満

注1.健常とは、矯正視力が1.0以上であり、視野異常が認められず、また、眼球に器質的な異常を認めない状況である。

注2.I~III度の例で、続発性の緑内障等で良好な方の眼の視野狭窄を伴った場合には、1段階上の重症度分類に移行する。

注3.視野狭窄ありとは、中心の残存視野がゴールドマンI/4視標で20度以内とする。

注4.乳幼児等の患者において視力測定ができない場合は、眼所見等を総合的に判断して重症度分類を決定することとする。

※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項

1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。

2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。

3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

膠様滴状角膜ジストロフィの治療

膠様滴状角膜ジストロフィの治療は、視力低下の程度、角膜混濁の深さ、角膜内皮機能、輪部上皮幹細胞疲弊症の有無などに応じて選択します。

視力低下が軽度で、まだ外科的治療を必要としない段階では、病変の進行や、治療後の再発を抑える目的で、治療用ソフトコンタクトレンズの装用が検討されます。

視力低下や異物感などが進行し、外科的治療が必要になった場合には、角膜混濁が表層にとどまっていれば、治療的レーザー角膜切除術(PTK)、角膜表層切除、マニュアルケラテクトミーなどが選択肢になります。

角膜混濁が深層に及んでいる場合は、角膜内皮機能が保たれていれば表層角膜移植術または深部層状角膜移植術、角膜内皮機能が保たれていなければ全層角膜移植術が検討されます。

また、輪部上皮幹細胞疲弊症を伴う場合には、輪部上皮移植術や角膜上皮形成術などを併用することがあります。

ただし、膠様滴状角膜ジストロフィは治療後の再発率が高く、治療後数年で再発することがあります。そのため、症状が改善した後も、若年期から生涯にわたる定期的な経過観察が必要です。

1.治療用ソフトコンタクトレンズ

2026年に公表された「膠様滴状角膜ジストロフィの診療ガイドライン」では、膠様滴状角膜ジストロフィに対して治療用ソフトコンタクトレンズを装用することが弱く推奨されています。

特に、視力低下が軽度で、まだ外科的治療を必要としない段階では、治療用ソフトコンタクトレンズを用いて病変の進行を抑える治療が検討されます。装用により、多くの症例で膠様隆起病変の再発抑制や、次の手術までの期間の延長が期待されます。また、角膜表面を保護することで、異物感などの自覚症状が軽減することもあります。

一方で、感染性角膜炎、脂質やタンパク質成分によるレンズ表面への沈着物、レンズのタイトフィッティングによる眼痛などが生じることがあります。

そのため、治療用ソフトコンタクトレンズは自己判断で使用するものではなく、眼科医の管理下で定期的にレンズを交換し、角膜の状態を確認しながら使用する必要があります。

2.外科的治療

外科的治療は、角膜混濁の深さや角膜内皮機能などに応じて選択します。

治療用ソフトコンタクトレンズを使用していても、視力低下、異物感、眼痛などの自覚症状が悪化した場合には、外科的治療を検討します。

角膜混濁が表層にとどまっている場合には、治療的レーザー角膜切除術(PTK)、角膜表層切除、マニュアルケラテクトミーなどが選択肢になります。ガイドラインでは、治療用ソフトコンタクトレンズを装用していても視力低下や異物感などが悪化した場合に、PTKを実施することが弱く推奨されています。

角膜混濁が深層に及んでいる場合には、角膜内皮機能が保たれていれば表層角膜移植術または深部層状角膜移植術を検討します。角膜内皮機能が保たれていない場合には、全層角膜移植術が選択肢になります。

ただし、いずれの治療を行っても角膜へのアミロイド沈着が再発する可能性があります。治療後数年で再発することもあり、複数回の手術が必要になる患者もいます。

3.輪部上皮幹細胞疲弊症に対する治療

膠様滴状角膜ジストロフィでは、角膜表層の手術や角膜移植を繰り返すことなどにより、輪部上皮幹細胞疲弊症を生じることがあります。

輪部上皮幹細胞は、角膜と結膜の境界にある輪部に存在し、角膜上皮を維持する役割を担っています。この細胞が減少または消失すると、血管を伴った結膜上皮が角膜内へ侵入し、角膜混濁や視力低下を生じます。

輪部上皮幹細胞疲弊症を伴う場合には、輪部上皮移植術や角膜上皮形成術などを併用することがあります。2026年の診療ガイドラインでは、膠様滴状角膜ジストロフィに対して輪部上皮移植や角膜上皮形成術を行うことが弱く提案されています。

ただし、拒絶反応や緑内障などを生じる可能性があるため、術式や患者の状態に応じた適切な術後管理と長期的な経過観察が必要です。

4.治療に伴う合併症

外科的治療では、手術中や手術後に合併症を生じることがあります。

主な合併症には、以下のものがあります。

1. 術中合併症:前房出血、角膜の層間出血など
2. 術後早期合併症:縫合不全、浅前房、縫合糸の緩み、感染症など
3. 術後晩期合併症:緑内障、感染性角膜炎、拒絶反応、移植片不全、網膜剥離など

特に緑内障は、膠様滴状角膜ジストロフィの視機能予後に影響する重要な合併症です。アミロイドの線維柱帯への沈着、複数回の眼科手術、術後の炎症、ステロイド点眼の長期使用などが関係すると考えられています。

過去の症例集積では緑内障の合併率に大きな幅がありますが、対象となった患者の重症度や手術歴が異なるため、正確な合併率は明らかではありません。

角膜混濁が強い患者では眼圧測定や視神経の評価が難しいこともあります。そのため、角膜の状態だけでなく、眼圧、視神経、視野についても長期的に評価することが重要です。

5.治療後も生涯にわたる経過観察が必要

膠様滴状角膜ジストロフィは、治療によって一時的に角膜の透明性や視力が改善しても、数年以内に再発することがあります。

再発した場合には、PTKや角膜移植などを再度行う必要が生じることもあります。しかし、手術を繰り返すことで、輪部上皮幹細胞疲弊症、拒絶反応、移植片不全、感染性角膜炎、緑内障などのリスクが高まる可能性があります。

そのため、治療後に症状が落ち着いていても、自己判断で通院を中断せず、定期的な眼科受診を続けることが重要です。若年期から生涯にわたり、角膜の再発、眼圧、視神経、視野などを定期的に確認する必要があります。

参考文献

  1. 細隙灯顕微鏡用語活用アトラス事典
  2. 今日の治療指針第3版
  3. 眼科学第2版
  4. 難病情報センターHP
  5. あたらしい眼科Vol.39,No.12,2022
  6. Identification of the gene responsible for gelatinous drop-like corneal dystrophy
  7. Primary gelatinous drop-like keratopathy
  8. Boston Type 1 Keratoprosthesis for Gelatinous Drop-Like Corneal Dystrophy
  9. Limbal Stem Cell Transplantation for Gelatinous Drop-like Corneal Dystrophy
  10. Limbal stem cell transplantation for the treatment of subepithelial amyloidosis of the cornea (gelatinous drop-like dystrophy)
  11. Efficacy of therapeutic soft contact lens in the management of gelatinous drop-like corneal dystrophy
  12. あたらしい眼科Vol. 42,No. 7,2025
  13. 膠様滴状角膜ジストロフィの診断基準および重症度分類
  14. 膠様滴状角膜ジストロフィの診療ガイドライン

関連記事

角膜ジストロフィこの記事では角膜ジストロフィの記事をまとめています。...
オンライン眼科のサポート