・ドライアイってどんな病気なの?
と疑問をお持ちの方の悩みを解決できる記事になっています。
ドライアイとは
ドライアイは涙の量が不足したり、涙の質が悪くなると涙の層にムラができてしまいます。その結果、目が乾くなどの症状が出てきます。
現在、日本には約800~2,200万人ものドライアイの患者さんがいると言われています。さらに、オフィスワーカーでは約30%がドライアイという報告もあります。
ドライアイの原因
パソコンやスマホによるドライアイは近年特に患者数が増加している原因の1つです。しかし、ドライアイの原因は何種類もあり、日本眼科学会HPでは11種類もの原因を挙げています。
1.年齢
日本では60歳以上の73%にドライアイがあると報告されており、年齢とともに涙の分泌が減る、あるいは涙の質が低下するためドライアイの症状が出てきます。
2.性別
実は男性よりも女性のほうがドライアイになりやすいことが知られています。女性ホルモンが低下する閉経後などはドライアイになりやすいです。
3.過度のVDT作業
パソコン、スマホを長時間しているとドライアイの原因になります。今後、これが原因でドライアイになる患者さんは増加していくでしょう。
4.乾燥した環境
例えば冬、砂漠地帯、エアコン近くでは乾燥しているためドライアイが悪化することがあります。
5.コンタクトレンズ
コンタクトレンズはドライアイの症状が出やすいとされていますが、コンタクトレンズでもソフトコンタクトレンズの方がドライアイ症状が出やすくなります。
また、1日使い捨てに比べ、2週間使用ののコンタクトレンズのほうが症状が強いことが分かっています。
6.喫煙
タバコはドライアイの症状を悪化させます。
7.内服薬
血圧を下げる薬や抗コリン作用を持つ薬には涙の量を減少させる薬もあります。
何気なく普段飲んでいる薬の中に、目に影響を及ぼす薬が入っているかもしれません。
8.目薬
「目に良いはずの目薬がドライアイの症状をきたすのは意外だ」と思われる方も多いかと思いますが、目薬の中にもドライアイの原因になるものがあります。
9.マイボーム腺機能不全(MGD)
まぶたの縁にはマイボーム腺という涙の成分を分泌する腺があります。加齢でこの腺が詰まると、涙の成分が一部が出せなくなります。そのため涙の質が変わり、結果的にドライアイになってしまいます。これがマイボーム腺機能不全という病気です。
10.結膜弛緩症
結膜弛緩症はご高齢の方に多いようです。眼科医はよく診察するので特に異常だとは思いませんが、これもドライアイの原因になります。結膜弛緩症は文字通り結膜が弛緩し、白目にシワが寄ります。
このシワが涙を貯めるところに入り込み、涙を貯めるスペースを減らしてしまいます。よって、結膜弛緩症があると涙の貯蔵が減り、ドライアイになってしまうのです。
11.自己免疫疾患
シェーグレン症候群が代表的ですが、自己免疫疾患では涙を分泌する腺(涙腺)が攻撃を受けてしまい、涙の分泌量が減ってしまいます。その結果、ドライアイの症状が現れます。
ドライアイの症状がある方はいくつの原因が当てはまりましたか?
これら原因のうち年齢や性別など避けることができない原因もありますが、たばこやコンタクトレンズなどは工夫すればドライアイは改善するかもしれません。
もし当てはまる原因がなければ、眼科を受診し原因を調べてみてはいかがでしょうか。
ドライアイの症状
日本眼科学会のHPを見ると、「チェックドライアイ!」と題して、簡便なドライアイチェックが掲載されています。
これらはすべてドライアイで起こりうる症状です。あなたも下記のチェック項目のうち、5つ以上当てはまるかどうか試してください。
チェック ドライアイ!
・次の項目で該当する症状はいくつあるでしょうか?
□目が疲れる
□目が乾いた感じがする
□ものがかすんで見える
□目に不快感がある
□目が痛い
□目が赤い
□目が重たい感じがする
□涙が出る
□目がかゆい
□光を見るとまぶしい
□目がごろごろする
□めやにがでる
あなたはいくつ当てはまったでしょうか?
あなたも上のチェック項目が5つ以上当てはまればドライアイの可能性が高くなりますので、一度眼科を受診することをお勧めします。
ドライアイの検査
ドライアイの自覚症状があるため、眼科を受診したとしましょう。眼科でドライアイと診断するために必要な検査はたった1つです。2016年に改訂されたドライアイの診断基準を見てみましょう。
ドライアイの診断基準
1と2 の両者を有するものをドライアイとする。
- 眼不快感、視機能異常などの自覚症状
- 涙液層破壊時間(BUT)が 5 秒以下
この条件が満たされればドライアイの診断になります。これに加えて、シルマー試験などの検査を行うこともありますが、ドライアイの診断には必須ではありません。
このように、ドライアイは自覚症状があれば、ドライアイと診断するために行うべき検査はBUTの測定のみということになります。
ドライアイの治療
薬局やAmazonにはドライアイ用の目薬が売られており、コンタクトレンズにも保湿効果の高い製品も出てきています。
ちなみに、僕の病院でおススメしているのはこのソフトサンティアです↓
ただ、これら製品はあくまで一時的な症状に対する治療であり、根本的な治療にはなりません。
ドライアイの治療は
原因を取り除き、症状の程度に応じて目薬や涙点プラグ等で治療する。
現在は、ドライアイの原因を眼表面の層別診断(TFOD)で診断し、それに応じて眼表面の層別治療(TFOT)を行う。
です。ここからは具体的な治療薬について解説していきます。
1.人工涙液
最も早くからドライアイ治療に用いられている。生理食塩水のようなものから、カリウムなどの電解質を調整したものなど様々種類があり、市販されているものも多い。
人工涙液は涙液を補充すると考えられがちだが、涙液量が増加するのは高々3分以内という報告もある。
人工涙液の作用は、一時的な涙液量増加による安息効果と涙液効果促進による老廃物や代謝産物の除去(wash out効果)の2つと考えられる。しかし、このwash out効果によって、分泌型ムチンやビタミンAなどの上皮細胞の恒常性維持に重要な蛋白群を洗い流してしまうため、1日10回程度の使用にとどめた方が良いとされる。
以上のことから、ごく軽症例を除き、第一選択になることは少ない。
2.ヒアルロン酸点眼
ヒアルロン酸は高分子量のムコ多糖類で、粘弾性と保水性を有する。
ヒアルロン酸は認可以降、広く使われており、現在でもドライアイ治療で多く使われている点眼の一つである。
ヒアルロン酸点眼がよく使われる理由は下記の3つが挙げられる。
- 角膜上皮に対する作用:上皮細胞伸展促進作用による角膜上皮の修復、創傷治癒の促進
- 涙液に対する作用:粘性による滞留性の増加、涙液層の安定化、眼表面の摩擦軽減
- 高い安全性と忍容性:目立った副作用がなく、刺激感が少ないため忍容性が高い
※ヒアルロン酸による保水効果は、涙液層の水分が十分に保持されているときに期待され、眼表面涙液が非常に不足している際には盗涙現象に注意する必要がある。
また、最近になりスイッチOTC薬化されたため、処方機会は減ると思われるが、今後も広く使われていく薬剤になると思われる。
3.ジクアホソル点眼液
ガイドラインによれば、従来の点眼治療(人工涙液やヒアルロン酸点眼)に比べて自覚症状、上皮障害を有意に改善させるとされる。ただし、眼刺激感の頻度が高い。
ジクアホソル点眼液はクロライドチャネルを介した結膜からの水分分泌により、30分以上眼表面の涙液貯留量を増加させ、加えて結膜上皮の杯細胞から分泌型ムチンの分泌を促すため、とくに涙液減少型ドライアイにも効果が期待できる。
一方で、分泌型ムチンがより高濃度で停滞し、涙液の粘度が増加するのとで、瞬目摩擦の亢進を生じる可能性がある。
ジクアホソルナトリウムの薬理
眼表面の角膜、結膜、マイボーム腺などに広く分布しているP2Y₂受容体のアゴニストである。
結膜上皮細胞や結膜杯細胞膜上に存在するP2Y₂受容体から細胞内シグナルが順次動き、細胞内カルシウムイオン濃度が上昇し、結膜上皮細胞ではCl⁻が分泌されるとともに水分が分泌され、結膜杯細胞からは分泌型ムチンであるMUC5ACが分泌されることが確認されている。また、角膜上皮細胞ではmRNA発現レベルで、膜型ムチン発現亢進も確認されている。
実際に、涙液分泌量は点眼5分後から増加し、30分後までに生理食塩水点眼と比較して、有意に増加している。
4.レバミピド点眼液
ガイドラインによれば、従来の点眼治療(人工涙液やヒアルロン酸点眼)に比べて自覚症状、上皮障害を有意に改善させるとされる。ただし、苦味の頻度が高く、涙嚢炎の発症には注意する必要がある。
杯細胞増加を介した分泌型ムチン(MUC5AC)の増加、角膜上皮の分化促進作用を介して涙液安定性を改善し、角膜上皮障害の軽減が期待できるとされ、自覚症状の有意な改善が期待できる。また、瞬目摩擦の軽減も期待されていて、「異物感」「痛み」という摩擦に関連した症状の改善が期待できる。
5.抗炎症治療薬
欧米ではよく用いられるが、日本では一般的ではない。
欧米では涙液分泌減少などにより涙液層が菲薄化すると涙液の浸透圧濃度が上昇し、その後に炎症反応が誘導されて、涙液層の不安定化や上皮障害が生じると考えられている。そのため、低力価のフルメトロンを1日2~4回を1ヶ月程度続けると、自覚症状や涙液安定性を改善する例もあるが、眼圧上昇や角膜感染症には注意を要する。
さらに、シクロスポリン(Restasis®)やインテグリン拮抗薬(Xiidra®)が欧米等では承認されているが、日本では保険適用外なので使われる頻度は他の薬剤に比べて少ない。
6.涙点プラグ
1〜5までの目薬から3種類程度の目薬を使っても、症状が改善しない場合は涙点プラグを用いることがある。特に、Area Breakを示す重症の涙液減少型ドライアイが適応とされている。また、中等度の涙液減少でも、糸状角膜炎や上輪部角結膜炎を伴い、点眼治療で改善しない場合に適応と考える。
その他にも、点眼治療でコントロールが難しい症例、spot breakを示すドライアイにも用いることがある。ガイドラインによれば、従来の点眼治療(人工涙液やヒアルロン酸点眼)に比べて自覚症状、上皮障害を有意に改善させるとされる。また、シェーグレン症候群でも涙液安定性、角結膜上皮障害、自覚症状を改善するため推奨されている。
ただし、コンタクトレンズによるドライアイ治療には、感染のリスクがあるため推奨されていない。
涙点サイズが拡大し、プラグが入らない場合は涙点閉鎖術を行う。
涙点プラグの合併症
挿入時の迷入、脱落、肉芽形成、白塊形成、脱落後の涙点拡大などかある。特に、パンクタルプラグやスーパーフレックスプラグは頭部が大きく、エッジが急峻であるため、涙小管を刺激して肉芽を形成しやすい。
上記点眼以外にも、重症例に対しては自己血清点眼を用いて、角膜保護、創傷治癒促進を図ることがあります。
おわりに
スマホやパソコンが普及したためにドライアイの患者さんは今後も増えていくことでしょう。
しかし、「スマホのせいだから仕方がない」と早合点は禁物です。ドライアイには大まかに紹介しただけでも11種類の原因があります。
ドライアイの原因を一般の方が判断するのは危険ですから、ドライアイの症状で心当たりがある項目があればぜひ一度近くの眼科を受診することをお勧めします。
眼科を受診していただければ適切な対応をご説明いたします。
「ドライアイかも?」と思ったら眼科を受診ください。
参考文献
- 眼科学第2版
- Santen HP
- 日本眼科学会(目の病気ドライアイ)HP
- あたらしい眼科Vol37,No.6,2020
- 眼科と薬剤(2019年9月臨時増刊号)