視神経低形成とは
視神経乳頭部先天異常の中では頻度が高く、網膜神経節細胞や神経線維の発生異常に起因するといわれている。網膜神経節の発生異常に起因するものと、中枢の発生異常に伴う逆行性変性によるものがあり、後者は両眼性とされる。
視神経低形成の原因
- 若年妊婦
- 初産
- 早産とその合併症
- 母体が妊娠中にフェニトイン、キニーネ、LSDなどの薬物内服
- 妊娠中の喫煙およびアルコール摂取
- 母体の糖尿病合併例
また、白皮症、無虹彩症、Duane症候群、septo-optic dysplasia(透明中隔欠損、脳梁欠損、第3脳室形成不全を伴う)などさまざまな疾患に合併しうる。
視神経無形成
視神経無形成の原因は不明で、全身異常を伴う例は少なく、多くは片眼性である。発生初期の異常によるため、視神経乳頭、網膜神経節細胞および網膜血管を認めない。ERGやVEPとも不良で、光覚(ー)である。
視神経低形成の症状
視力良好もあれば光覚弁がない症例もあり、その症状はさまざまである。
視神経低形成の合併症・併発症
全身の合併症としては、中枢神経系異常と内分泌異常の頻度が高い。視神経低形成に透明中隔欠損、脳梁欠損、下垂体機能不全を合併するとDe Morsier症候群、または中隔視神経異形成と診断される。
視神経低形成の診断
眼底検査にて乳頭径が小さく(乳頭黄斑部間距離/乳頭径比(DM/DD比)≧3.2)、通常その周囲と正常乳頭と同じ大きさの色素輪(double ring sign)を認める。
Eye wiki HPより引用
中枢神経系の評価のため頭部MRIを撮影すると、約15%に下垂体漏斗異常を認める。これは下垂体後葉ホルモン欠如を示すため、内分泌系疾患の精査が必要である。
また、上部、鼻部の視神経の一部に低形成を示すことが報告され、それぞれの部位に応じた網膜視神経線維欠損をきたし、下方視野や耳側視野欠損をきたす。上部の視神経低形成は上方分節状視神経乳頭低形成(SSOH)といい、日本でも有病率は約0.3%とされ、正常眼圧緑内障の約10%と決して少なくないとされる。
上方分節状視神経乳頭低形成(SSOH)
・Humphrey視野検査における緑内障との鑑別ポイントは、視野欠損が水平経線に到達するかどうか。到達するものは緑内障、しないものはSSOHを疑う。
・多治見スタディにおける40歳以上の日本人の有病率は0.3%
・SSOHは先天異常であり、その乳頭形状や視野障害は通常進行しないと言われているが、2012年の山崎らの報告では、両眼性のSSOHの片眼に正常眼圧緑内障(NTG)を合併し視野障害が進行した症例を報告している。また、2015年にLeeらはSSOHの約20%に開放隅角緑内障の合併を認めたと報告している。以上から、定期的な眼圧や視野検査などを行い、緑内障の合併がないか観察することが重要である。
視神経低形成の治療と予後
小児で見つかった場合には、眼鏡等で適切な屈折矯正を行い、残存した視機能を改善するよう試みる。予後は緑内障を合併していなければ進行しないため、眼圧下降目的の安易な治療は避ける。
参考文献
- 眼科学第2版
- 今日の眼疾患治療指針第3版
- あたらしい眼科2021年7月号
- あたらしい眼科Vol.38, No.9, 2021
- 眼科 2021年12月臨時増刊号 63巻13号 特集 覚えておきたい神経眼科疾患