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横井則彦先生による『ドライアイ病態生理の考え方』
- 涙液は油層、液層(水分、MUC5AC)、表層上皮細胞のMUC16(膜型ムチン)からなる。
- 涙液減少型ドライアイでは炎症性メディエーターが涙液中に蓄積
- 日本は可視化しうるBreak upを中心に置き、定義、診断、治療でそれを重視する一方で、アメリカはむしろ浸透圧上昇、炎症をそれぞれ診断、治療で重視する。
- シェーグレン症候群は結膜と涙腺と同様のIFN-γが関係する慢性炎症が生じている。涙腺の炎症により、涙腺が破壊され、涙液分泌が減少する。一方、結膜の炎症により、結膜上皮の分化障害をきたし、扁平上皮化生がおこることで、杯細胞が減少(分泌型ムチンの減少)したり、瞬目麻酔摩擦が増強するため、表層上皮障害が起こる。
- Random Break(油分または液層の分泌型ムチン)はフルオレセインの上方移動が止まった後に出現する。それ以外のBUPはそれまでに出現する。
- 開瞼後すぐ→Area Break(液層の水分)
- 開瞼後→Spot Break(上位層の膜型ムチン)
- 開瞼後少ししてからフルオが上方移動中に→Line Break(液層の水分)、Dimple Break(上皮層の膜型ムチン)
- 涙液減少型ドライアイ→Area Break(重症)、Line Break(軽症~中等症)
- 水濡れ低下型(BUT短縮型)ドライアイ→Spot Break、Dimple Break
- 蒸発亢進型→Random Break
- MUC16(膜型ムチン)のSheddingで上皮表面の水濡れ低下が起こる
- Lid wiperはMarx’s line(皮膚粘膜接合部)から瞼板下溝(異物溝)までを指す。Lid wiperにはGoblet cellが多く、分泌型ムチンを分泌し、涙液層の安定化、摩擦の軽減という働きがある。
- 瞬目時の摩擦亢進には大きく2つある。Lid wiperと球結膜や角膜との摩擦亢進による、lid wiper epitheliopathyが生じる。もう1つは、本来なら摩擦を生じないKessing spaceにおける、眼球結膜と眼瞼結膜の摩擦である。これは上方の眼球結膜の上方弛緩による摩擦亢進の原因になっている(上輪部角結膜炎)。
高静花先生による診療ガイドラインに基づくドライアイ診断
- ドライアイでは結膜上皮障害>角膜上皮障害
- 結膜上皮障害が角膜上皮障害に先行する。
- TFODは診断、TFOTは治療
- 重症→Area Break、Spot Break、Random Break
- 軽症→Line break、Dimple Break
- Dimple Breakはフルオの上方移動中に角膜中央あるいはその上方で見られる。Dimple (えくぼ)、縦型、横型がある。
- Area Break、Spot Breakでは自覚症状が強い
- 白内障術前患者の70%にドライアイ(無治療)があり、術前はRandom Breakだったが術後にDimple Break、Spot Breakが増加する。水濡れ低下性低下。
山田昌和先生による診療ガイドラインに基づくドライアイ治療
- 推奨レベル:1~2はやることを推奨、どちらかというと3-4はやらないことを推奨
- 3~4はNSAIDs、シクロスポリン、血清点眼
- NSAIDsは自他覚症状改善なし
- シクロスポリンはFDAが最初に認可したドライアイ治療で、欧米、韓国などで主要な治療薬として用いられている。アメリカでは2016年にLiftegrastが認可された。日本のガイドラインで推奨されないのは、保険適応がなく、使用できる製剤がないため。ただ、メタアナリシスでBUT、生体染色スコア、自覚症状を改善している。よって、保険適応されたりすれば推奨度は変わる可能性がある。
- 自己血清点眼は硬化を証明する質の高いエビデンスがない。
- ω3脂肪酸内服は推奨度は2だが、エビデンスはDと低い。文献検索期間外に質の高いRCTで効果が全くないとされたため。自覚症状、BUT、生体染色スコア、シルマーでプラセボと有意差なし。
- 人工涙液、ヒアルロン酸、ステロイド、ジクアホソル、レバミピド、涙点プラグが推奨される。
- ドライアイは3つに分ける。涙液減少、蒸発亢進、水濡れ性低下。それぞれ涙液減少型ドライアイ、MGD・瞬目異常、short BUT。
- TFOT
- 液層に対して→人工涙液、涙点プラグ、ヒアルロン酸、ジクアホソルの4つ
- 持続時間:人工涙液、ヒアルロン酸でも数分以内で涙液量は5分以内に元に戻る。ただ、人工涙液は涙液層を安定させる作用はなく、ヒアルロン酸は数時間ある。
- ジクアホソルはClチャネルを介し、結膜上皮の水分分泌を促し、ヒトで30分間涙液量を増加させる。
- 恒常的に涙液量を増やすには涙点プラグ・涙点閉鎖術を行う
- 分泌型ムチンと膜型ムチン→ジクアホソルとレバミピドの2つが挙げられている。分泌型ムチンは液層の一部、膜型ムチンは上皮の水濡れ低下に関与する。
- 分泌型ムチンはMUC5AC、MUC7で、杯細胞から分泌され、涙液をゲル化して涙液層を安定化させ、眼表面の摩擦を軽減する。
- 膜型ムチンはMUC1、MUC4、MUC16で、角結膜上皮細胞の細胞表面構造として存在し、細胞表面の水濡れ性に寄与する。
- ジクアホソルとレバミピドはムチン分泌増加、また膜型ムチンの発現も増強する。
- SCL装用者にレバミピド、ジクアホソルを点眼すると角膜上膜型ムチンが増加した。
- ステロイドも膜型ムチンを増強する(培養細胞)。
- 眼表面炎症
- ステロイドとレバミピドの2つが効果あり。