はじめに
近視は、特に若年層において世界的に増加している視覚障害の一つであり、特に高度近視は白内障や緑内障、網膜剥離のリスクを高めることが知られています。
オルソケラトロジー(OK)レンズは、夜間に装着することで角膜の形状を変え、日中の視力を矯正する治療法として広く利用されています。
しかし、近視の進行を完全に抑制するには限界があり、特に進行が速い場合には追加の対策が求められます。そこで、低濃度のアトロピン点眼液が近視進行抑制に有効であることが報告されており、OKレンズとの併用が注目されています。
本研究の着目ポイント
今回の研究では、OKレンズ単独使用と0.05%アトロピン点眼液との併用が、進行の速い近視児における近視進行抑制効果に与える影響を検討しました。
観察期間中に眼軸長(AL)が6ヶ月間で0.15 mm以上、または12ヶ月間で0.3 mm以上伸びた参加者を対象に、OKレンズ単独使用群とOKレンズとアトロピン併用群に分けてその効果を比較しました。
これにより、併用療法の有効性とそのメカニズムを明らかにし、より効果的な近視管理方法を提案することを目的としています。
研究結果とその見解
研究結果によると、OKレンズと0.05%アトロピン点眼液を併用した群(OKA群)は、OKレンズ単独使用群(OK群)に比べて有意に少ない眼軸長の伸長を示しました(0.14 ± 0.13 mm vs 0.27 ± 0.12 mm, p < 0.001)。
特に、OKA群においては、年の後半の眼軸長伸長が前半よりも有意に遅かったことが確認されました(0.12 ± 0.11 mm vs 0.02 ± 0.14 mm, p = 0.01)。
一方、OK群では、年の前半と後半で有意な差は見られませんでした(0.12 ± 0.07 mm vs 0.15 ± 0.08 mm, p = 0.71)。
これらの結果から、アトロピン点眼液の併用が1年間の眼軸長伸長に対して有意な抑制効果を持つことが示唆されます。
この研究は、OKレンズと0.05%アトロピン点眼液の併用が、近視進行の速い子供に対する効果的な管理方法となる可能性を示しています。
併用療法により、眼軸長の伸長をより効果的に抑制できることが示されており、これにより高度近視のリスクを減少させることが期待されます。
臨床現場において、この併用療法は特に近視進行の速い患者に対して推奨されるべきであり、定期的な眼科検査とともに効果的な近視管理を実現するための重要な方法となるでしょう。