はじめに
近視は世界的に患者数が増加している問題であり、その予防と治療は公衆衛生における重要な課題となっています。アトロピン点眼液やオルソケラトロジーなどが注目されていますが、有効な食材などは見つかっていません。動物モデルでは、ω-3多価不飽和脂肪酸が脈絡膜の血流を調整することで近視を抑制する可能性が示唆されていますが、ヒトにおける臨床的なエビデンスは限られています。
研究に着目した理由
ω-3多価不飽和脂肪酸の摂取が近視予防に役立つかどうかを調べるための臨床研究は多く行われていません。動物モデルでの研究結果をヒトに適用するためには、因果関係を示す強力なエビデンスが求められています。そこで、遺伝的な要因を用いたメンデルランダム化(MR)分析を利用して、ω-3多価不飽和脂肪酸が近視に与える影響を調査することが本研究の目的です。
研究の見解
本研究では、MR分析を通じて、ω-3多価不飽和脂肪酸およびDHAが近視リスクを低減する可能性が示されました。特に、ω-3多価不飽和脂肪酸やDHAの血中濃度が高いほど、屈折異常のリスクが低くなるという結果が得られ、これが脈絡膜の血流を介して視力を保護するメカニズムである可能性があります。眼軸長に対しても同様の傾向が見られましたが、統計的には境界線上の結果でした。これらの結果は、ω-3多価不飽和脂肪酸が近視の進行を抑制する役割を果たす可能性を示唆しています。
臨床への応用
本研究の結果により、ω-3多価不飽和脂肪酸およびDHAが近視予防において有望な栄養素であることが示されました。今後の臨床試験では、ω-3多価不飽和脂肪酸の適切な摂取量と期間を決定し、視力保護効果を確認することが必要です。近視リスクの高い子どもたちや成人に対して、ω-3多価不飽和脂肪酸の摂取を推奨することで、近視の進行を予防する新しい戦略として応用される可能性があります。
参考文献
Omega-3 Polyunsaturated Fatty Acids as a Protective Factor for Myopia