目の病気

新生血管型加齢黄斑変性

新たなAMDの分類と用語

1.AMDの分類

新生血管があるにもかかわらず滲出性変化がない状態のAMDが存在することは広く知られており、海外でもneovascular AMDという用語を使用することが増えてきている。AMDを分類する用語として「萎縮型(atrophic)AMD」と「新生血管型(neovascular)AMD」を用いる。

2.黄斑新生血管

新生血管型AMDにみられる黄斑部の新生血管に対しては、以前は「脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)」という用語が広く使用されていたが、黄斑部の網膜血管由来の新生血管も含まれることから、2020年以降、国際的に「黄斑新生血管(macular neovascularization:MNV)」と呼ぶことが多くなった。

3.萎縮性変化 

萎縮型AMDだけでなく、新生血管型AMDにおいても萎縮性変化が生じることがある。 

萎縮型AMDにみられる網膜外層、網膜色素上皮(RPE)、および脈絡毛細血管板の境界明瞭な萎縮病巣は、以前から「地図状萎縮(geographic atrophy:GA)」と呼ばれている。一方で、MNVを伴う新生血管型AMDにも治療前後に同様の境界明瞭な萎縮病巣がみられることがあり、この萎縮病巣をGAと区別するために「黄斑萎縮(macular atrophy)」と呼ぶことが多くなってきた。

2018年に発表された国際的なガイドラインでは、「黄斑萎縮」はMNVの有無にかかわらずに、境界明瞭な萎縮病巣に対して使用できる用語とされている。GAや黄斑萎縮は、新生血管型AMDの末期にみられる線維性瘢痕や囊胞様黄斑変性に伴う網膜外層の萎縮性変化とは区別される。

4.病期分類

海外では1990年頃からAMDの病期を2段階に分類し、 ドルーゼンやRPE異常がみられるものを「early ARM(age‒related maculopathy)」、黄斑部にCNV(MNV)や中心窩を含むGAがみられるものを「late ARM」と呼ぶようになっていた。

Late ARMはAMDとも呼ばれていたが、1995年頃からはearly ARMを「early AMD」、 late ARMを「late AMD」と呼ぶことが増え始め、さらに2000年頃からは、Age‒Related Eye Disease study(AREDS)分類のカテゴリー2(多数の小型ドルーゼンまたは数個の中型ドルーゼンまたはRPEの色素異常)に相当するものを「early AMD」、カテゴリー3( 多数の中型ドルーゼンまたは1個以上の大型ドルーゼンまたは中心窩外のGA)に相当するものを「intermediate AMD」、カテゴリー4(中心窩を含むGAまたはMNV)に相当するものを「late AMD」と呼ぶようになってきた。

以前の日本の診断基準では、early AMDやintermediate AMDにみられる所見を「前駆病変」と呼び、late AMDを「加齢黄斑変性」と定義していた。本ガイドラインではBeckman分類および2019年に発表された米国眼科学会のガイドラインを参考に、AMDを早期AMD、中期AMD、後期AMD、末期AMDに分類した。

診断基準:初期病態と発症背景

1.ドルーゼン

ドルーゼンはRPE下の沈着物で、以前は境界明瞭なものを「硬性ドルーゼン」、境界不鮮明なものを「軟性ドルーゼン」と外観で分類していた。硬性ドルーゼンは小型のものが多く、軟性ドルーゼンは硬性ドルーゼンよりも大きいものが多いという特徴があり、ドルーゼンのサイズに関しては、63μm未満のものを「小型」、63μm以上で125μm未満のものを「中型」、125μm以上のものを「大型」ドルーゼンと分類するのが一般的である。

最近では、 長径63μm未満のものを硬性ドルーゼン、63μm以上のものを軟性ドルーゼンと呼ぶことが多い。なお、視神経乳頭に入る網膜静脈の直径はおよそ125μmであり、ドルーゼンのサイズの目安となる。 

ドルーゼンに類似したものとして網膜下ドルーゼン様沈着物(subretinal drusenoid deposit)がある。これはreticular pseudodrusenやpseudodrusenとも呼ばれており、新生血管型AMDや萎縮型AMDを発症するリスク因子として広く知られている。

2.パキコロイド 

欧米ではドルーゼンがAMDの重要な発症背景であると考えられているが、日本人の新生血管型AMDではドルーゼンがみられる症例は欧米より少なく、約3割と報告されている。日本をはじめとして、アジア人ではドルーゼンがみられないにもかかわらずAMDを発症する症例が多く、このようなアジア人にしばしばみられるAMDの発症背景を説明できる概念として「パキコロイド疾患(pachychoroid disease)」という考え方が確立しつつある

パキコロイド、すなわち「厚い脈絡膜」を定量的に定義することは難しいが、年齢や屈折度数を考慮して脈絡膜が厚いと考えられる場合にパキコロイドと呼ぶことが多い。このようにパキコロイドという用語は、脈絡膜が厚い「所見」を表現するための言葉であったが、最近は、脈絡膜が厚いことよりも、脈絡膜大血管の拡張(pachyvessel)や脈絡膜血管の透過性亢進などの脈絡膜血管変化がパキコロイド疾患の本質であると考えられるようになり、パキコロイドという言葉は、これらの「病態」を総称する用語としても使われるようになっている。 

パキコロイド疾患の代表が、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)である。2009年にCSC患者の脈絡膜が厚いことが報告され、2013年にはパキコロイドにRPE異常を伴う病態に対して、「パキコロイド色素上皮症(PPE)」という疾患概念が提唱された。PPEは不全型CSCと考えられているが、既往も含めて漿液性網膜剝離を伴わないものを指す。CSCやPPEを背景としてMNVを生じることがあり、このMNVが生じたものをパキコロイド新生血管症(PNV)と呼ぶ。

日本ではこれまでに新生血管型AMDと診断されていた症例の半数近くがPNVであると報告されており、PNVは新生血管型AMDに含まれるものとされる。パキコロイドを背景にしてGAが生じることも報告されており、ドルーゼンを背景にしているGAとの違いに関する研究が進みつつある。

3.RPE異常

黄斑部に存在するRPEの色素異常(色素脱失、色素沈着、色素むら)と、MNVを伴わない漿液性網膜色素上皮剝離(RPE detachment:PED)がRPE異常とされる。以前の診断基準では1乳頭径未満の漿液性PEDは「AMD前駆病変」、1乳頭径以上のものは「滲出型AMD」の特徴所見としていたが、近年はMNVの検出精度が向上していることから、ガイドラインでは新生血管型AMDの診断にはMNVの確認を重要項目とし、漿液性PEDのサイズによる基準は削除された。

4.遺伝子多型

AMDの発症に遺伝的な背景が大きく関与していることはよく知られている。特に、ARMS2/HTRA1とCFHの関与が大きく、ほかにもC2/CFBやC3、CFIといった補体系の遺伝子、APOEやCETP、LIPCなどの脂質代謝に関わる遺伝子、VEGFA、TGFBR1、TIMP3、TNFRSF10Aなどが有名である。日本人でもこれらの遺伝子がAMDの発症に関与していることが確認されており、CFH遺伝子についてはドルーゼンだけでなく、パキコロイドやCSC、PNVの発症にも関与することが報告されている。

また、AMD患者の遺伝子型を調べることで、僚眼の発症などの予後が予測できることも分かってきており、今後は各患者の遺伝子情報を用いて個別化医療を行うことが重要になっていくと考えられる。

 

診断基準:病型分類

1.新生血管型AMD

中心窩を中心とした直径6,000μmの黄斑部に、ドルーゼンやパキコロイド、RPE異常に伴って生じたMNVが存在するものを新生血管型AMDと定義する。新生血管型AMDの確定診断にはMNVの存在を確認することが望ましいが、出血性変化や線維性瘢痕などの存在を根拠にして十分な確度をもってMNVの存在を疑うことができれば新生血管型AMDと診断できる。

除外規定として、若年発症の特発性、またMNVが発生する可能性がある他の疾患、すなわち、強度近視、網膜色素線条などの変性疾患、炎症性疾患、感染性疾患、眼内腫瘍、外傷などによる病変を除外する。

2.MNVの分類

MNVの分類としては、フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)の所見に基づくものと、病理組織に基づく解剖学的なものが以前から使用されてきた。FAでは、造影早期に境界明瞭な過蛍光所見として描出され、その後、旺盛な蛍光漏出を来すものをclassic型、造影早期には不鮮明で徐々に境界不明瞭な過蛍光所見を来すものをoccult型と分類し、病理組織では、RPE下に存在するものをtype1(1型)、RPEを越えて網膜下まで伸展したものをtype 2( 2型)と分類していた。

最近ではoccult CNVとtype 1 CNVをtype 1 MNV(1型MNV)、classic CNVとtype2CNVをtype2MNV(2型MNV)、網膜血管から生じたMNVを3型MNVとし、混在する場合はmixed type 1 and type 2 MNV(1+2型MNV)と呼ぶようになっている。

1型MNVにはその端部にポリープ状病巣がみられることがあり、このようなポリープ状病巣がみられる新生血管型AMDは、従来からポリープ状脈絡膜血管症(PCV)と呼ばれている。3型MNVを伴う新生血管型AMDは網膜血管腫状増殖(RAP)とも呼ばれる。 

ドルーゼンを特徴とする新生血管型AMDでは1型、2型、3型すべてのMNVを生じることがあるのに対して、 パキコロイド疾患であるPNVは主に1型MNVの形態をとる。

2.萎縮型AMD 

萎縮型AMDはGAを認めることで診断される。

GAとは、①直径250μm以上、②円形、卵円形、房状または地図状の形態、③境界鮮明、④ RPEの低色素または脱色素変化、⑤脈絡膜中大血管が明瞭に透見可能のすべての特徴を満たすものである。

診断基準:病期分類

早期AMD、中期AMD、後期AMD、末期AMDに分類される。

1.早期AMD 

黄斑部に中型(軟性)ドルーゼン(長径63μm以上125 μm未満)を1個以上認めるものとした。小型(硬性)ドルーゼン(長径63μm未満)は、本ガイドラインでは早期AMDの条件に含めず、生理的範囲内の加齢変化とした。ただし、小型(硬性)ドルーゼンを多数(20個以上)や広範囲に認める場合、中型ドルーゼンの発生リスクやAMDの発症リスクが高いことが疫学データで示されている。

2.中期AMD

黄斑部に大型(軟性)ドルーゼン(長径125μm以上)が1個以上みられるか、RPE異常がみられるものを中期AMDに分類した。網膜下ドルーゼン様沈着物も後期AMD、特に3型MNVと萎縮型AMDへの進行のリスク因子として広く知られているため、網膜下ドルーゼン様沈着物がみられるものも中期AMDに分類した。

3.後期AMD

PNVを含めてMNVを有するものは、すべて後期AMDに分類した。漿液性PEDについては、MNVの存在が確認できれば新生血管型AMDと診断して後期AMDに分類するが、MNVの存在が確認できない場合にはRPE異常と判断して中期AMDに分類する。

4.末期AMD 

線維性瘢痕や囊胞様黄斑変性に伴う網膜外層の萎縮性変化によって高度の視力低下がみられるものは、新たに末期AMDに分類した。

新生血管型AMDの診断と活動性評価 

新生血管型AMDの診断および活動性の評価には、視力や検眼鏡所見、眼底写真、FA、インドシアニングリーン蛍光眼底造影(ICGA)、OCT、光干渉断層血管撮影(OCTA)、眼底自発蛍光(FAF)を用いる。なお、FA/ICGAにはアナフィラキシーショックなどのリスクがあるため、その他の検査所見からMNVの存在が明らかである場合には、新生血管型AMDと診断してもよい。

1.MNVの診断

1)1型MNV

1型MNVは検眼鏡で比較的平坦なRPEの隆起として観察されるが、OCTやOCTA、FA/ICGAを用いたほうがその存在を確実に判断できる。1型MNVが存在することで生じる丈の低いRPEの隆起とBruch膜の2層がみられるOCT所見をdouble layer signと呼び、1型MNVの検出に有用である。OCTAでは、RPEから脈絡毛細血管板までの層を含むen face像でMNVを観察しやすく、Bスキャン像ではRPE下にMNVの血流シグナルが確認できる。

1型MNVはFA早期では不鮮明で、後期に緩慢な蛍光漏出を来す。ICGAでは早期にOCTAのen face像と同様のMNVがみられ、後期には過蛍光領域として観察できる。初期の1型MNVはFA/ICGAやOCTで判別が困難な場合があり、OCTAのほうがMNVの検出力が高いことがある。

ポリープ状病巣が確認されればPCVと診断する。ポリープ状病巣は、検眼鏡や眼底写真では橙赤色隆起病巣として観察できることがあるが、OCTやICGAを用いたほうが容易に検出できる。ポリープ状病巣は、OCTでは中~高輝度の内部反射を伴うRPEの急峻な隆起所見として観察でき、ICGAでは1型MNV(以前は異常血管網)の周辺に瘤状に拡張した円形の境界明瞭な血管病変として観察される。漿液性PEDのくびれ(ノッチ)の部位には、1型MNVやポリープ状病巣がみられる場合が多いPCVは出血を来しやすく、大量の網膜下出血やRPE下出血(出血性PED)を伴う場合は、ポリープ状病巣の検出が困難な場合もある。

2)2型MNV

2型MNVはフィブリンの析出を伴うことが多く、フィブリンは眼底所見では網膜下の灰白色隆起物として観察できる。隆起物を縁取って網膜下出血がみられる場合もある。2型MNVも、1型MNVと同様にOCTやOCTA、FA/ICGAを用いたほうがその存在を判断しやすい。OCTではRPEを越えて網膜下~網膜内に伸展した中~高輝度の構造物として観察できるが、活動性が低下してRPEに囲い込まれるようになると、RPE上に存在する2型MNVを確認することが難しくなる。

網膜下のフィブリンとの鑑別も通常のOCTでは難しいが、OCTAのBスキャン像で血流シグナルの有無を確認することで鑑別できる。2型MNVの二次元的な形状は、OCTAにおける網膜外層のen face像で観察できる。FAでは造影早期から境界明瞭なMNVが描出され、後期には旺盛な蛍光漏出を示す。ICGAでは早期でOCTAのen face像と同様のMNVが観察でき、後期には過蛍光領域として描出される。

3.3型MNV

3型MNVを検眼鏡や眼底写真で観察することは難しく、 両眼に軟性ドルーゼンが多発している患者で網膜内出血がみられた場合には、OCTもしくはOCTA、FA/ICGAを用いてその存在を確認する。OCTでは発症早期から囊胞様黄斑浮腫がみられ、病期が進むとPEDを併発する。3型MNVが存在するPEDの部位では、RPEが断裂したbump signを示す。OCTAのBスキャン像では、網膜表層の血管と吻合した網膜内新生血管が網膜下、もしくはRPEを貫通してRPE下へ伸展する像を捉えることができる。FAとICGAでは網膜血管に吻合するMNVがみられ、FA後期には旺盛な蛍光漏出、ICGA後期にはhot spotとして観察できる。

2.初期病態の所見の診断

1)ドルーゼン 

ドルーゼンや、ドルーゼンが癒合したドルーゼン様PEDは眼底所見によって検出できるが、OCT所見を参考にすると類似所見との鑑別が容易になる。特に漿液性PEDとの鑑別にはその内容物の輝度に着目し、中輝度であればドルーゼンやドルーゼン様PED、低輝度であれば漿液性PEDと判断する。また、ドルーゼンはRPE下に存在しているのに対して、網膜下ドルーゼン様沈着物はRPE上に存在していることに着目すると、両者の鑑別が容易になる。

2)パキコロイド

脈絡膜の肥厚に伴って眼底紋理が減弱するため、検眼鏡や眼底写真では脈絡膜の血管走行を観察しづらいことが多い。OCTでは黄斑部の脈絡膜Haller層の大血管が拡張しており、その上方の脈絡毛細血管板とSattler層が菲薄化していることが観察できる。OCTのen face 像やICGAでは脈絡膜大血管の拡張が観察できる。ICGA中期から後期には脈絡膜血管透過性亢進も観察できることが多い。パキドルーゼンと呼ばれる大型ドルーゼンが観察できることも多いが、その病的な意義はあまり大きくないと考えられている。

3)RPE異常

RPEの色素異常は、検眼鏡や眼底写真で色素脱失、色素沈着、色素むらとして観察される。FAFではRPE障害の程度や状態によって低蛍光や過蛍光を示す。FAでは色素脱失の部位はwindow defectによる過蛍光、色素沈着の部位は蛍光ブロックによる低蛍光、色素むらの部位は低蛍光と過蛍光の混在となる。MNVを伴わない漿液性PEDは検眼鏡や眼底写真で黄褐色の縁取りを持つ境界明瞭な類円形のドーム状隆起として観察される。FAではPEDに一致した蛍光色素の貯留となる。

活動性評価

活動性評価MNVからの滲出性変化がみられるものを「活動性あり」、滲出性変化がみられないものを「活動性なし」と判断する。眼底検査に加えて、以前はFAを用いてMNVからの蛍光漏出の程度で活動性を評価していたが、最近は非侵襲的にOCTで判定することが多くなっている。

滲出性変化としては、網膜浮腫・網膜内囊胞〔網膜内液(intraretinal fluid:IRF)〕、漿液性網膜剝離〔網膜下液(subretinal fluid:SRF)〕、漿液性 PED〔RPE下液(subRPE fluid)〕、網膜内出血、網膜下出血、RPE下出血(出血性PED)、フィブリン、硬性白斑などがある。Fluidの検出にはOCTが有用である。

網膜内出血や網膜下出血、RPE下出血(出血性PED)は検眼鏡や眼底写真で観察できるが、部位の確認にはOCTを用いる。網膜下出血は、OCTでは網膜下高輝度物質(subretinal hyperreflective material:SHRM)として観察される。出血が大量のときは黄斑下血腫となり、硝子体出血にまで至ることもある。フィブリンもOCTでSHRMとして観察され、網膜下や網膜内の硬性白斑はhyperreflective foci として観察される。

漿液性PEDは、検眼鏡や眼底写真で黄褐色の縁取りを持つ境界明瞭な類円形のドーム状隆起として観察できるため、検出は比較的容易である。漿液性PEDと出血性PEDの鑑別は、その内容物が透明な滲出液であれば漿液性PED、赤色の出血またはその出血が器質化した白色物が確認できれば出血性PEDと判断する。

PEDの自然経過または治療後にRPE裂孔が生じることもある。このRPE裂孔は検眼鏡や眼底写真でも検出できるが、FAFではRPEの欠損部位が低蛍光になるため検出が容易になる。

末期AMDにみられる線維性瘢痕の存在は、眼底所見、OCTから確認できる。囊胞様黄斑変性に伴う囊胞腔は、検眼鏡や眼底写真によって観察できることもあるが、OCTで確認するほうが容易である。FAでは、蛍光色素が囊胞内に貯留するだけで著明な蛍光漏出は認めない。また網膜外層の萎縮や線維性瘢痕を伴っていることが多く、囊胞様黄斑浮腫とは区別する。囊胞様黄斑変性に伴う囊胞腔は、疾患活動性の評価には用いない。囊胞腔は治療によって消退しないことも多く、消退したとしても視力回復は難しい。

生活指導

1.禁煙

喫煙習慣は修正可能な危険因子であり、喫煙患者に対しては積極的に禁煙指導を行うことが勧められる。日本人の疫学研究であるFunagata study、Hisayama study、Nagahama studyのいずれにおいても、喫煙とAMDの関連が報告されている。特に9年間の追跡調査を行ったHisayama studyでは喫煙習慣により後期AMDの発症が4倍に増加すると報告された。

2.食生活の改善

長鎖オメガ3多価不飽和脂肪酸、ミネラル(亜鉛、銅など)、ビタミンC、ビタミンE、抗酸化カロテノイド(βカロテン、ルテイン、ゼアキサンチンなど)を多く含み、飽和脂肪酸もしくは一価不飽和脂肪酸が少ない食事の摂取により、AMD未発症から発症のリスク、もしくは中期AMDから後期AMDへの進行リスクが減少すると報告されている。

長鎖オメガ3多価不飽和脂肪酸は魚に豊富に含まれる。また果物や野菜(特に緑黄色野菜)は、抗酸化ビタミンであるビタミンCや抗酸化カロテノイドなどの抗酸化物質を多く含有する。飽和脂肪酸もしくは一価不飽和脂肪酸の摂取を控え、魚や果物、野菜を多く摂取する食生活は、すべての段階のAMD患者に対し推奨してもよいと考えられる。ただし、日本人対象にしたAMDの栄養疫学研究が少ないため、欧米で報告された結果が日本人に対して当てはまらない可能性もある。

3.サプリメント

米国で行われたAREDSでは、AREDS分類のintermediate AMD(多発の中型ドルーゼンまたは1個以上の大型ドルーゼン、または中心窩外のGAのある眼)もしくはすでに僚眼にlate AMDを発症している眼において、抗酸化ビタミン、βカロテン、亜鉛のサプリメントの摂取によりlate AMDへの進行が抑制できたと報告された。喫煙者におけるβカロテンの摂取は肺癌のリスクを上昇させることから、その後行われたAREDS2ではβカロテンをルテイン/ゼアキサンチンへ変更、亜鉛過剰症への懸念から酸化亜鉛の含有量を80mgから25mgへ変更し、その予防効果に差がないことが示された。

サプリメントの内服によるearly AMDからintermediate AMDへの進行抑制効果は示されていない。また、ビタミンや亜鉛の過剰摂取には副作用もあるため、他のサプリメントと同時に服用する際は注意が必要である。 サプリメントに関するこれらの研究は海外におけるものであり、日本人で検証されているわけではない。ただし日本人の小規模研究において、新生血管型AMDへの進行リスクは、サプリメント摂取者よりサプリメント非摂取者のほうが高いと報告されている。

治療

1)抗VEGF薬硝子体内注射

①薬剤の種類

新生血管型AMDに対する治療の第一選択は抗VEGF薬硝子体内注射である。現在本邦で新生血管型AMDに使用できる抗VEGF薬は、ラニビズマブ(ルセンティス®、ラニビズマブBS®)、アフリベルセプト(アイリーア®)、ブロルシズマブ(ベオビュ®)、VEGFとアンギオポエチン-2に対する抗体製剤であるファリシマブ(バビースモ®)がある。

代表的な臨床試験(MARINA study、ANCHOR study、VIEW 1/2 study、HAWK study、HARRIER study、TENAYA/LUCERNE study)において、いずれの薬剤も視力の改善が示された。抗VEGF薬に起因する眼内炎症はすべての薬剤でみられるが、ブロルシズマブ投与後には網膜血管炎および網膜血管閉塞を含む眼内炎症が多いという報告があるため、使用する際には眼内炎症の早期発見を心がけて対応すべきである。

また、各薬剤におけるどの臨床試験でも、新生血管型AMDのサブタイプによらず抗VEGF薬の硝子体内注射の視力改善への有効性が示されているね。日本人を含むアジア人多いPCVを対象とした臨床試験も実施されており、アフリベルセプトやブロルシズマブが良好な治療成績を示す報告がみられている。

②投与方法

抗VEGF薬治療の導入期は、1か月ごとに1回、通常連続3回の投与を行う。維持期はその後の視力の安定化を図る期間である。維持期の投与は、主に固定投与法が用いられるが、疾患活動性が見られた場合に投与するPRN法(必要時投与法)や、treat-and-extend法が用いられることもある。

維持期の投与方法は、臨床試験では主に投与間隔を固定する固定投与法が用いられてきた。実臨床では、毎月経過観察を行い、疾患活動性がみられれば投与を行う必要時投与法(pro re nata: PRN)が用いられるようになった。

しかし、ラニビズマブ導入期後のPRN治療は、ラニビズマブの毎月投与と比較し2年で視力が低下することがCATT studyやHARBOR studyで示された。実臨床における長期的なPRN治療でも、改善した視力を維持できずに悪化することが報告されている。

一方、導入期後に疾患活動性に応じて投与間隔を調整するtreat-and-extend投与法では、ラニビズマブの毎月投与と同程度の視力改善と維持の効果があることがTREX-AMD studyで報告されてきた。日本人の新生血管型AMDに対して、2週および4週ごとの調整のtreat-and-extend投与法によるアフリベルセプトの治療成績を比較したALTAIR studyでは、どちらの群においても、視力および網膜厚改善への効果が96週でも認められたと報告されている。

システマティックレビューおよびメタ解析の結果でも、treat-and-extend投与法は、固定投与法と比較し2年間同等の視力改善が得られること、PRN投与法より投与回数は多いが有意に良好な視力成績であることが示されている。ただしtreat-and-extend投与法をいつまで継続するかについては一定の見解はない。

③ 治療中の疾患活動性の評価

新生血管型AMDにおける疾患活動性とは、MNVから滲出性変化(fluidやフィブリン、出血など)が生じることである。活動性の評価は非侵襲的に施行できるOCTを用いて、MNV周囲のfluidの貯留、すなわちIRF、SRF、sub-RPE fluidとして捉えることができる。また、網膜下のフィブリンや出血を含む滲出はSHRMとして捉えられる。MNVの疾患活動性が高い症例、特にPCVのポリープ状病変や3型MNVの網膜内新生血管は必ずしも中心窩にとどまってはならないため、黄斑、もしくは病変全体をスキャンしfluidおよびSHRMなどを正確に評価することが勧められる。

④ 抗VEGF薬の切り替え

抗VEGF薬治療中、効果が乏しい場合(治療抵抗例)や効果が減弱した場合(耐性の獲得)は、他の薬剤への切り替えが有効となる場合がある。治療負担を考慮して、薬剤の切り替えを検討することもある。

⑤ 末期AMDの治療

AMDが進行すると線維性瘢痕、萎縮様黄斑変性、萎縮性変化を伴うことがある。著しく視力が低下した症例や、疾患活動性の乏しい線維性瘢痕や萎縮に伴う萎縮様黄斑変性は積極的な治療適応とはならず、経過観察を考慮する。

光線力学療法(PDT)

現在、新生血管型AMDに対してPDTを行う際は、安全性および視力改善の点から抗VEGF薬を併用することが推奨されている。抗VEGF薬併用PDTは、現在もPCVに対する治療選択肢の一つである。PNVに対し脈絡膜血管透過性亢進部位を標的としたPDTが試みられているが、長期的な効果や適応に関してはさらなる議論が必要である。抗VEGF薬に抵抗する新生血管型AMDには、PDT併用を考慮してよい。長期的にはPDTは黄斑萎縮を増悪させる可能性があるため、治療前に脈絡膜が薄い、もしくはすでに黄斑萎縮がある症例は避けることが望ましい。特に3型MNVに対するPDTは、現在では推奨されない。

その他の治療

①レーザー光凝固

2型MNVもしくはPCVに対し、2型MNV全体、PCVの場合はポリープ状病変および異常血管網を含むMNV全病変をレーザー光凝固することで滲出性変化が抑制されると報告されている。しかし、レーザー光凝固は網膜外層およびRPEを不可逆的に障害するため、中心窩に近いMNVの治療には適さない。

②血腫移動術

新生血管型AMDは、大量の黄斑下出血を生じて急激な視力低下を来すことがある。黄斑下出血により網膜外層が損傷されることで、視力低下は不可逆的となる。ただし発症早期であれば、黄斑下血腫の移動にて視力の改善が得られることがある。黄斑下血腫の移動には硝子体内気体注入術、もしくは硝子体切除術が行われる。その際、抗VEGF薬硝子体内注射や組織プラスミノーゲン活性化因子(tissue plasminogen activator:tPA)(適応外使用)を併用することもあるが、適応に対してはさらなる議論が必要である。

③トリアムシノロンアセトニドTenon嚢下注射

新生血管型AMD治療に伴う眼内炎症に対し、トリアムシノロンアセトニドTenon嚢下注射を施行する場合がある。

参考文献

新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン


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