ぶどう膜炎
続発緑内障
High rate of conversion from ocular hypertension to glaucoma in subjects with uveitis
Tiffany Ma¹, Joanne L Sims¹, Sonya Bennett¹, Shenton Chew¹, Rachael L Niederer¹,²
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ニュージーランド・オークランドのぶどう膜炎クリニックを受診したぶどう膜炎性緑内障(uveitic glaucoma: UG)患者を対象としたレトロスペクティブ観察研究
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対象:UG 139例 188眼 追跡期間:平均9.9年
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疾患:特発性ぶどう膜炎(29.3%)、サルコイドーシス(13.3%)、帯状疱疹(6.9%)、HLA-B27ぶどう膜炎(6.9%)、結核(5.9%)、ポスナー・シュロスマン症候群またはサイトメガロウイルスぶどう膜炎(5.3%)
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結果
✅ 診断時の眼圧中央値は35 mmHgであった
✅ 追跡期間中に144眼(77.0%)が視野異常を来し、そのうち41眼(22%)が緑内障により中心視野を失った
✅ **50眼(27%)**がトラベクレクトミー、**18眼(10%)**がチューブ・シャント手術 -
結論
UGの進行は急速であり、手術を要する可能性が高く、中心視野喪失のリスクが高い
ぶどう膜炎採血
- 血液一般検査(赤血球数、白血球数、血小板数など)
- 肝機能・腎機能
- 血糖値(糖尿病虹彩炎)
- CRP、赤沈(内因性眼内炎)
- 抗核抗体、リウマチ因子、IgG、IgM、IgA(免疫疾患の素因)
- 感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、梅毒)
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ACE、可溶性IL-2レセプター(サルコイドーシス)
急性網膜壊死
◆ 周辺部の白色病変に気がつき,早期診断と治療で
失明パターンを回避できる
☞ ぶどう膜炎 ± 高眼圧では周辺部まで眼底を観察しよう
眼トキソプラズマ症
◆ 白色滲出病変を診た時に、蛍光眼底造影検査で
black centerを確認すれば眼トキソプラズマ症の診断ができる。PCRstrip検査も診断に有用。
☞ 駆虫薬を投与しないで、ステロイドのみの治療を行うと
急性網膜壊死様の病変となる
結核性ぶどう膜炎
◆ BRVOのような眼底出血と白色病変を診た時に、ツ反や
T-SPOTを確認すれば、結核性ぶどう膜炎を疑える
☞ 結核の眼外病変も確認しよう
真菌性眼内炎
◆ 白色病変、硝子体混濁+高齢者、免疫抑制患者、
IVH、ドレーンのキーワードがあったら
β-D-グルカン(末梢血、眼内液)で確認すれば
早期に真菌性眼内炎を疑える
☞ その後、PCR検査や鏡検、培養、病理検査も行っていく
翼状片
術後管理:感染・炎症・再発の管理
- 術後の遷延する炎症¹や不十分なステロイド点眼²は再発の危険因子
- 再発のほとんどが術後1年以内³,⁴
- Kheirkhah A, et al. Cornea 2008
- Yaisawang S, et al. J Med Assoc Thai 2003
- Hirst LW, et al. Ophthalmol 1994
- 増田ら. 目眼雑誌 2013
眼窩疾患
悪性腫瘍
- LDH
- ALP
- sIL-2R
- β2-MG
*疾患特異性は低く悪性腫瘍やリンパ腫、炎症性疾患で↑
*sIL-2Rやβ2-MG ↑ ⇒ リンパ腫、炎症性疾患?
炎症性・自己免疫性疾患
- MPO/PR3-ANCA
- ACE
- SS-A/B
- IgG4
- TSAb(甲状腺刺激抗体)
- TRAb(TSHレセプター抗体)
- TPOAb(TPO抗体)
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TgAb(サイログロブリン抗体)
特発性眼窩炎症
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軽症例であればNSAID内服+ステロイド点眼で1週間ほど様子見。
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感染の可能性も考えるのであれば抗生剤内服も併用
⇒ 第三世代セフェムの内服は× -
基本はステロイド治療(経口 or ステロイドパルス療法)。
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ステロイド治療を行う場合は特に他疾患の除外が重要。
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涙腺型はIgG4関連疾患や悪性リンパ腫との鑑別が重要⇒ 生検も検討
IgG4関連眼疾患
診断基準
- 画像所見で涙腺腫大、三叉神経腫大、外眼筋腫大など
眼腫瘍組織に腫瘍・腫大・肥厚性病変(+) - 病理組織学的に著明なリンパ球&形質細胞の浸潤がみられたときに線維化。
lgG4(+)/lgG(+)形質細胞比 ≧ 40%または lgG4陽性形質細胞 > 50/HPF* -
高IgG4血症(135 mg/dl 以上)
✅ 確定診断群(definite):1)+2)+3)を満たすもの
✅ 準確診群(probable):1)+2)を満たすもの
✅ 疑診群(possible):1)+3)を満たす
眼窩底骨折
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眼窩骨折を疑う症状があれば、thin sliceで眼窩部3方向を撮像し、軟部条件で前額断を含む眼窩部3方向で骨折の有無を確認する
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眼球運動時痛や複視が少しでもある場合は手術の可能性を考慮し、早期に専門施設へ紹介する
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開放型の場合は 受傷後4週間以内、
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閉鎖型の場合は 受傷後1週間以内、
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筋絞扼閉鎖型の場合は 受傷後24時間以内に整復術を行い、
術後は眼球運動リハビリを継続し、術後の眼球運動障害の改善を図る
内斜視
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乳児内斜視の運動能力は、超早期手術により健常児の発達に追いついた
Drover JR, et al. J AAPOS, 2008 -
複数の運動能力テストすべてで、正常立体視がある被検者が最も良好な結果
O’Connor AR, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci, 2010 -
斜視手術後に運転能力が改善した
Derhy D, et al. Transl Vis Sci Technol, 2020
乳児内斜視の手術時期と予後(Review論文より)
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運動面(整容面)においては
超早期手術は、早期手術・晩期手術と同等 -
感覚面においては超早期手術が有利
(立体視獲得の可能性が高くなる) -
超早期手術によりDVDは不顕性化する
追加手術の減少につながる
Bhate M, et al. Indian J Ophthalmol. 2022
乳児内斜視:手術前
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生後8ヶ月以内の手術を目指すために
生後5ヶ月ごろまでの受診が必要 -
良好な術後眼位を得るために
術前の眼位測定の重要性
アトロピン点眼による調節麻痺下屈折検査
1.50D以上の遠視や乱視は完全矯正
交代プリズム遮閉試験にて手術までに最低3回は測定
乳児内斜視:手術後
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良好な術後眼位と両眼視機能を維持するために
アトロピン点眼による調節麻痺下屈折検査
1.50D以上の遠視や乱視は完全矯正
乳児内斜視術後の60%に調節性内斜視が合併
Birch EE et al. JAAPOS, 2002
なぜ 1.50D?
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理論から:
AC/A比の平均値は4 ± 2
たとえば、AC/A比=6 で +1.50D の遠視がある場合
→ 明視するために調節し、遠見でも 9Δ 内斜視となる。
両眼視が可能な斜視角は 8Δ まで → 1.50D以上ある遠視や乱視は完全矯正する。 -
臨床研究から:
良好な眼位と両眼視を得るために、内斜視で +1.50D以上の遠視がある場合は矯正が必要。
Brennan R, et al. J Pediatr Ophthalmol Strabismus, 2020
- 超早期手術を行なってもDVD自体は生じうる
運動面でも感覚面でも脆弱性がある可能性 →
🔴 術後も厳密な屈折管理を含めた長期的な経過観察が重要
完全調節性内斜視なら立体視の発達は良好か
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眼位未矯正期間が 4ヶ月以上 になると立体視に影響する
Fawcett S, et al. J AAPOS, 2000
→ 発症早期(間欠性のうちに)から眼鏡を装用できるとよい。
部分調節性内斜視の立体視予後
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2歳未満で発症の部分調節性内斜視の術後立体視は不良
Yagasaki T, et al. Clin Ophthalmol, 2024
Table 2: Comparison of Stereopsis Outcomes Among Three Groups Based on Age at Onset (%)
Age at Onset | Number | Fine Stereopsis (≤60”) | Coarse Stereopsis (>60” to ≤3000”) | Absence of Stereopsis |
---|---|---|---|---|
≤6 months | 15 | 0 (0.0) | 2 (13) | 13 (87) |
>6 months, ≤2 years | 26 | 0 (0.0) | 8 (31) | 18 (69) |
>2 years | 25 | 7 (28) | 11 (44) | 7 (28) |
調節性内斜視
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間欠性内斜視のうちから完全屈折矯正眼鏡常用
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早期発症型部分調節性内斜視と乳児内斜視の病態はオーバーラップ
→ 立体視獲得のためどちらも生後6〜8ヶ月以内の治療を目指す -
早期眼科受診が重要
(小児科クリニックへのSVS普及が功を奏するか)
乳児外斜視
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恒常性外斜視の場合は2歳までの早期手術を推奨。
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術後の戻りが問題。
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乳児外斜視の眼窩角は正常児に比べ大きい。
Tsukui M, et al. Jpn J Ophthalmol, 2022 -
眼窩角が大きい症例では、外直筋後転術よりも内直筋短縮術の方が効果的。
Yagasaki T, et al. Clin Ophthalmol, 2022 -
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恒常性であれば早期手術
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術後の戻りに対する工夫
→ 眼窩角の測定、術式選択 -
屈折矯正
(右上)Craniosynostosis with exotropia(頭蓋縫合早期癒合症+外斜視)
(下部画像説明)-
正常児の眼窩角:0歳 105.5度、1歳 97.7度
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生後6ヶ月時:123度
Yagasaki T, et al. Clin Ophthalmol, 2018
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先天上斜筋麻痺の両眼視機能
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4歳未満で発症した症例は、それ以降に発症した症例よりも両眼視機能が不良。
Tarczy-Hornoch K, et al. J AAPOS, 2004 -
クラスI〜IIIの腱異常では斜視手術後に良好な立体視を獲得したが、クラスIVの腱異常では立体視の改善が限定的。
Sato M, et al. Am J Ophthalmol, 2008
Helveston EM, et al. Ophthalmology, 1992 -
頭位異常が顕著である場合、良好な立体視の獲得、骨格面への影響を考慮すると、できるだけ早期の手術が推奨される。
後天共同性内斜視とデジタルデバイスについて
About acquired comitant esotropia and digital devices
近年、急性後天共同性内斜視(Acute Acquired Comitant Esotropia:AACE)の
発症とデジタルデバイス(以下DD)との関連を疑う報告が多数なされている。
In recent years, many reports have been published that suspect a relationship between the onset of AACE and digital devices.
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7〜16歳で、スマートフォンを4時間/日以上使用して内斜視を発症した12例を報告
Lee, Park, et al. BMC Ophthalmol 2016 -
ICT機器(スマートフォンやタブレット)の過剰使用が斜視の発症や増悪をきたす可能性がある
吉田, 仁科ら 眼臨紀 2018 -
AACEの患者が年々増加しており、スマートフォンの過剰使用の関与が疑われる
Okita Y et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2023
急性後天共同性内斜視とは
About acute acquired comitant esotropia
内斜視のうち・・・
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生後6か月以降に発症(後天性)
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注視方向で眼位ずれの程度が変わらない、外転制限がない(共同性)
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発症(複視を主訴とすることが多い)が急性であるもの
→ 急性後天共同性内斜視(Acute Acquired Comitant Esotropia ; AACE)
患者にデジタルデバイス(DD)の使用方法について指導
★利用時間を減らす
★30センチ以上視聴距離を離す
★30分使用したら5分休憩を挿む
(英訳:Patients were instructed on how to use the digital device (DD))
★Reduce usage time
★Keep a viewing distance of at least 30 cm
★Take a 5 minute break after 30 minutes of use
保存的な治療に関する報告
報告①:
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デジタル機器過剰使用歴のあるAACE患者にトロピカミド点眼を使用
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14人中13人が3か月後に複視が消失(うち9例はプリズム眼鏡使用)
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治療介入が早い方が斜視角減少が期待しやすい
R. Hayashi et al. BMC Ophthalmol 2022
報告②:
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25PD以下のAACE患者にプリズムを処方し段階的に度数を下げることで
36人中14人(38.9%)がプリズムから離脱できた -
プリズムから離脱できる患者には治療介入が早く、もとの斜視角が小さい傾向
Y. Wu et al. BMC Ophthalmol 2022
AACEに対するBTXの有用性(Efficacy of BTX on AACE)
報告①:
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後天内斜視に対してBTX投与し6か月時点で斜位を維持できている症例は24/47(51.1%)
三村ら 日眼会誌 2020
報告②:
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BTX投与後、6か月以上経過を終えた症例のうち、治癒または改善が得られた症例は67/100(67%)
宇井ら 臨眼紀 2024
報告③:
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25PD以下の後天内斜視42名にBTX投与し、治療成功率は6か月後90.5%、1年後76.2%
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治療前の斜視角が小さいことが成功に関連する因子であった
M. S. Kang et al. Sci Rep 2025
AACEの手術成績に関する報告
報告①:
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術中調節を行って、1年後治療成功群に分類された症例は、従来の内斜視で用いるテーブルと比較して40.6%手術量が増強されていた
Lee HJ et al. Jpn J Ophthalmol. 2019
報告②:
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低矯正を防ぐため Prim adaptation test(PAT)が有効である
Pichler et al. Acta Ophthalmol. 2022
報告③:
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40PD以上のAACEでは従来の内斜視手術より外直筋前転量を増やすことで良好な手術成績が得られる
Zhou Y W et al. Ophthalmology. 2023
斜視手術 vs BTXに関する報告
Reports on strabismus surgery vs BTX
【報告①】
手術群27名 vs BTX群33名
術後1か月、3か月時点ではmotor success rateに有意差なし
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術後6か月時点では100% vs 69.7%とより手術群で成功率が高かった
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BTX群では1D以上の不同視がある場合に成功率が低くなった
X. Liu et al. Eye Vis (Lond) 2025
【報告②】
手術群97名 vs BTX群74名
術後12か月時点では成功率に有意差なし
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術後24か月時点で手術群で成功率が高かった:86.4% vs 52%
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治療介入が遅いことは6か月時点の成功率の低さと関連(治療内容に関わらず)
C. S. Y. Cheung et al. Am J Ophthalmol 2024
【報告③】
手術群32名 vs BTX群44名(すべて小児)
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36か月時点の成功率は56% vs 72%でありBTXは手術群に比して非劣勢であった
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発症から治療までの期間が長いことは、不成功のリスクファクターであった
M. T. B. Nguyen et al. Am J Ophthalmol 2025
要点まとめ:
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手術群は6〜24か月で一貫して高い成功率を示す
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BTX群は治療タイミングや不同視により成功率が影響されやすい
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小児ではBTXが手術に対して非劣勢となる可能性あり
眼瞼腫瘍
脂腺癌はアディポフィリンなどの免疫染色が有用
HE染色のみでは(18.5%)が脂腺癌以外の診断となった。
Yunoki et al., Ocular Oncol Pathol. 2024
眼瞼悪性腫瘍の手術
安全域をとって十分な切除がのぞましい
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基底細胞癌:2〜3 mm
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脂腺癌・扁平上皮癌:3〜5 mm
切除範囲 眼瞼の1/3未満 眼瞼の1/3〜1/2未満 眼瞼の1/2以上 前葉(皮膚、眼輪筋) 単純縫縮 単純縫縮+外眥切開 皮弁作成 後葉(瞼板、結膜) 単純縫縮 単純縫縮+外眥切開 遊離瞼板、対側瞼板、口蓋粘膜など
脂腺癌の転移と画像検査
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脂腺癌は頸部リンパ節転移が9〜13%程度で起こる
Goto H et al. Jpn J Ophthalmol. 2020
福井ら. 日眼会誌 2020 -
リンパ節転移は半数は初診時、残り半数は術後フォロー中に起こる
Lu T et al., Br J Ophthalmol 2025 -
肝臓や肺への転移も稀に起こる
→ 造影頸部CT、PET/CTを推奨