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クラミジア結膜炎とは
Chlamydia trachomatis感染による結膜炎で、トラコーマと封入体結膜炎に大別される。性行為感染症(STD)の一種としても知られる。
1.トラコーマ
トラコーマは再感染が繰り返されて免疫学的機序が加わることで重症化するとされる。戦後大流行したが、衛生環境改善のため現在の日本ではほとんど見ない。発展途上国ではいまだに多くの患者がいる。
トラコーマの診断
トラコーマは約1週間の潜伏期間をおいて急性に発症する。眼瞼腫脹、結膜充血、浮腫、耳前リンパ節腫脹を伴う。眼脂は粘液膿性で、乳頭増殖と濾胞形成が始まり、濾胞は徐々に増大する。角膜上方に浸潤と血管侵入(パンヌス)が起こる。輪部濾胞が吸収されると陥凹(Herbert’s pit)を残す。炎症の消退後、結膜瘢痕、眼瞼内反、角膜混濁などを残し、視力が障害される。この臨床経過は下記のMacCallan分類としてまとめることができる。
臨床経過(MacCallan分類)
- 初期トラコーマ
- 確立したトラコーマ
- 濾胞増殖型
- 乳頭増殖型
- 瘢痕性トラコーマ
- 瘢痕治癒トラコーマ
2.封入体結膜炎
クラミジア感染により発症する結膜炎で、感染した結膜上皮細胞内に封入体(Prowazek小体)を形成する。病巣がパンヌスや瘢痕を形成しないことを特徴とするためトラコーマとは区別される。封入体結膜炎は新生児封入体結膜炎と成人型封入体結膜炎に分けられる。
A.新生児封入体結膜炎
新生児は母体が持つクラミジアに産道で曝露あるいは前期破水による上行性に子宮内へ感染することで、生後1週間前後(5〜12日)で新生児封入体結膜炎を発症する。
正常妊婦の3~5%にクラミジア保因者がみられ、その場合、児に発生する頻度は18〜50%とされる。眼瞼腫脹、瞼結膜の充血、混濁が起こり、ビロード状を呈する。眼脂は粘液膿性~膿性で量が多い。結膜下の腺様組織未熟なため濾胞形成はない。
しかし、新生児であっても発症から2か月以上経過し、慢性化したものでは濾胞形成がみられるとされる。しばしば偽膜性結膜炎となる。約半数は上咽頭のクラミジア感染を合併し、ときに肺炎に進展する。
B.成人型封入体結膜炎
成人は尿道炎や子宮頸管炎などの性器クラミジア感染症から手指を介して感染し、成人型封入体結膜炎を発症する。眼瞼腫脹、充血、粘液性の膿性眼脂、耳前リンパ節腫脹を伴う急性濾胞性結膜炎である。3~4週間で下眼瞼~結膜円蓋部の濾胞は大きく充実性となり、癒合して堤防(敷石)状を呈する。
咽頭クラミジア、性器クラミジアを併発している例が少なくない。流行性角結膜炎との鑑別はマイクロパンヌスの所見で、封入体結膜炎では病初期から認める。流行性角結膜炎の角膜上皮下混濁様の所見を認めることがあるため注意が必要。
クラミジア結膜炎の診断
- ギムザ染色orグラム染色で結膜上皮細胞に封入体+(Prowazek小体)を認める。
- 確定診断にはPCR法もしくはTMA法にてクラミジア遺伝子あるいはクラミジア抗原を検出する。
- 補助診断にIgAを検査することがある。ただし、初感染と再感染時に約2週間で上昇し、6カ月で消失することに留意する。
クラミジア結膜炎の治療
マクロライド系、テトラサイクリン系、フルオロキノロン系点眼薬を1時間ごと、軟膏なら1日5回で6~8週間投与する。
性器クラミジア、咽頭クラミジアがあるならアジスロマイシン内服も行う。また、セックスパートナーの治療も同時に必要となる。
処方例
クラミジアは淋菌に比べて発症が遅く、感染から約1週間程度で発症する。点眼のみで治療を行う場合、長期頻回投与が必要とされる。
0.3%オフロキサシン眼軟膏1日5回8週間がクラミジア結膜炎に唯一の保険適用。この他にも、エリスロマイシンラクトビオン酸塩・コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム眼軟膏1日5回8週間、あるいは0.3%トスフロキサシン点眼1日5-8回6-8週投与(小児にはあまり用いない)も有効である。
参考文献
- 細隙灯顕微鏡用語活用アトラス事典
- 眼科学第2版
- クオリファイ5全身疾患と眼(専門医のための眼科診療クオリファイ)
- あたらしい眼科2020 Vol37,No1
- 眼科と薬剤(2019年9月臨時増刊号)