・眼精疲労を治す方法ってあるの?
と疑問をお持ちの方の悩みを解決できる記事になっています。
はじめに
「ここ最近、残業が続いて目が疲れてきたな」という悩みを持つ方が増えてきており、その原因の一つに VDT作業(ディスプレイを持つパソコン、スマホなどによる作業)が挙げられています。
厚労省の調べによれば1日あたりVDT(visual display terminal)に割く時間は年々増加傾向であり、下記の表は少し古い調査にはなりますが、およそ半数は4時間以上、25%は6時間以上をVDTに時間を費やしています。
現在はパソコン、スマホが仕事の主流となりつつありますから、さらに眼精疲労を訴える患者さんは増えるでしょう。そこで、この記事では眼精疲労についてまとめています。
眼精疲労とは
日本眼科学会によれば、眼精疲労とは「視作業(眼を使う仕事)を続けることにより、眼痛・眼のかすみ・まぶしさ・充血などの目の症状や、頭痛・肩こり・吐き気などの全身症状が出現し、休息や睡眠をとっても十分に回復しえない状態」を眼精疲労と言います。
つまり、パソコンやスマホを長時間続けていると、目の疲れ・目が見えづらいなどの症状を訴え、さらには頭痛や肩こりなどの目以外の症状も現れ、睡眠をとっても十分に良くならない状態を眼精疲労と言います。
眼精疲労の原因
眼精疲労にならないためにはその原因を知る必要があります。最初の章で説明した通り、眼精疲労は目を長時間使う時に起こります。
また、そもそも物が見えづらい時、例えば白内障などの病気がある時、私たちは物を見るため余計に目を酷使してしまいます。そのため、白内障等があると眼精疲労が起きやすいということが言えます。
これら以外にも、全身疾患に伴うもの・心因性のもの・環境によるものなど、眼精疲労の原因は様々あるとされています。
1.屈折異常、不適正眼鏡使用
近視、遠視、乱視などの屈折異常が原因で眼精疲労を生じることが最も多いとされています。さらに、左右の屈折が異なる不同視は、眼精疲労の原因となりえます。
未矯正の状態で目を細めたり、不適正な屈折矯正では調節緊張や調節けいれん、逆に調節不全や調節麻痺を生じる恐れもあります。これらの調節異常は眼精疲労の大きな原因で、さらに、不適正な屈折矯正は眼位異常を生じることもあります。
2.眼位異常
斜視、斜位ともに眼位異常は大きな原因となります。正位を維持するために頭痛や肩こり、時に嘔気を生じることがあります。
3.その他の眼科的疾患
角結膜疾患、白内障、緑内障など、視力低下や視野異常をきたすものは眼精疲労の原因となりえます。特に、ドライアイは眼精疲労の主原因とされています。
4.眼科手術後眼精疲労
術前に片目のみを診察し、眼位や眼球運動、立体視を考慮しない、もしくは患者の生活環境を考慮せず眼内レンズ選択すると生じやすいとされています。
5.全身疾患・薬物
ドライアイをきたしうる疾患(シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進症など)や、向精神薬・抗ヒスタミン薬など調節機能を減弱させうる薬物の内服がないかを確認しましょう。
6.環境要因
VDT(もしくはIT)の作業時間増加は眼精疲労を加速させます。また、シックハウス症候群も眼精疲労を悪化させる要因となりえます。
眼精疲労の主な症状
眼精疲労の症状は患者さんによって異なり、僕も外来をしていると「目が疲れる」といったものから、「肩がこる、めまいがする」など、様々な症状を訴えて来院されます。どれも眼精疲労の症状として間違いありません。その他にも下記のような症状があります。
眼症状
- 目が疲れる、ぼやける、かすむ
- 目(の奥)が痛い、充血する
- 目が重い、しょぼしょぼする
- まぶたがピクピクする
- まぶしい(羞明)
- 涙が出る
全身症状
- 肩こり、倦怠感
- 頭痛
- めまい、吐き気(嘔気)
これらの症状が当てはまる方はもしかしたら眼精疲労かもしれません。しかし、安易に自分で眼精疲労と診断するのは危険です。また、これら症状を複数合併することもあります。下表のようなデータも厚労省から発表されています。もし改善しないようであれば必ず眼科医に相談しましょう。
眼精疲労の検査
原因の検索を行うため、下記検査が実施されることがある。
- 遠近視力検査
- 調節検査
- 眼位検査
- 立体視検査
- ドライアイの諸検査
- 多角的屈折検査
- 細隙灯顕微鏡検査
- 眼底検査
眼精疲労の治療
眼精疲労の症状が軽度なら特に治療は必要ありません。しかし、眼精疲労で以下の症状が出ている方は治療が必要です。
- 日常生活に何らかの支障をきたす(仕事に集中できないetc)
- 身体的あるいは精神的な影響が出る
こういったとき
「眼精疲労を治すには目の周りのマッサージ!」
「眼精疲労には温かいタオルをあてる!」
もちろん一時的には良いと思います。しかし、まずは原因を特定して、その原因を除去しましょう。ただ単に眼鏡が合わなくなってきているのかもしれません。不同視があるなら眼鏡よりもコンタクトレンズの方が不等像視に対して効果的とされています。
眼位異常は10Δ程度で軽度であればプリズム眼鏡を使用し、それ以上の眼位異常であれば手術が必要になることもあります。白内障などの病気により視力が低下し、それがきっかけで眼精疲労になったのであれば白内障等の治療をすることが望ましいでしょう。スマホやパソコンを使用する機会の多い人は、適度な休息を取りながら行うことが非常に大切です。
残念ながら眼精疲労に特効薬はありませんが、ビタミン剤の配合された点眼薬が有効である場合もあります。また、市販ではアイマッサージャーなどの眼精疲労緩和グッズも売っていますし、マッサージや目を温めるのも一時的には有効でしょう。ご自身の症状に合わせてこれらを組み合わせて使うのも良いと思います。
おわりに
パソコンとスマホが必要不可欠な現代社会において、眼精疲労は切っても切れない仲です。この記事を読んでいただき、「自分の症状も眼精疲労による症状かもしれない」と思われたかともいることでしょう。
目を温めて、マッサージをするだけでよくなる場合もありますが、眼精疲労の症状が改善しない場合は必ず近くの眼科を受診することをお勧めします。この記事が皆さんの目の健康を促す一助になれば幸いです。それではまた次の記事でお会いしましょう!