おはようございます、doctorKです。
各種メディアでAIやディープラーニングが仕事を奪ってしまうのではないかと懸念されています。僕はむしろAIなどが新たな雇用を生み出してくれると思っています。
そんなAIやディープラーニングは医療への応用も期待されています。そこで、今回から何回かに渡りAIやディープラーニングなど最新技術を扱った論文を紹介します。
加齢黄斑変性症とは
さて、今日のテーマはお酒と目の病気、特に加齢黄斑変性症に焦点を当てたテーマとなっています。
皆さんは加齢黄斑変性症についてご存知でしょうか。
知らない方はこの記事を読んでほしいのですが、時間がない方に簡単に説明します。
加齢黄斑変性症は加齢に伴い、網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、視力低下などを訴える病気です。50歳以上の人の約1%にみられ、高齢になるほど多くみられる病気です。主要先進国において失明原因の第1位で、日本でも第4位(70歳以上の高齢者で限定すると第1位)とされています。進行すると硝子体注射など(目玉に注射をする注射)の治療を定期的に行う必要がある病気です。
論文の内容
今日紹介する論文は2017年にワシントン大学医学部のCecilia S. Lee MDらが発表した論文で、タイトルは『Deep Learning Is Effective for Classifying Normal versus Age-Related Macular Degeneration OCT Images(ディープラーニングは光干渉断層計(OCT)によって正常と加齢黄斑変性症(AMD)の分類に有効である)』です。
OCTについて知らない人のために少しだけ説明しますね。まずOCTは簡単に言えば、ある特殊な光(近赤外光)を利用して網膜の断面像を得ることのできる検査で、AMDなどの網膜に異常がある病気の診断確定に重要です。このOCTという機械を使わないと診断確定が難しい病気もあるため、現在では多くの病院に完備されています。
これを踏まえた上で、この論文を見ていきましょう。
早速ですが、結果です。
Of a recent extraction of 2.6 million OCT images linked to clinical data points from the EMR, 52 690 normal macular OCT images and 48 312 AMD macular OCT images were selected. A deep neural network was trained to categorize images as either normal or AMD. At the image level, we achieved an area under the ROC curve of 92.78% with an accuracy of 87.63%. At the macula level, we achieved an area under the ROC curve of 93.83% with an accuracy of 88.98%. At a patient level, we achieved an area under the ROC curve of 97.45% with an accuracy of 93.45%. Peak sensitivity and specificity with optimal cutoffs were 92.64% and 93.69%, respectively.
この論文はかなりの画像を処理していて、260万のOCT画像をディープラーニングを用いて分析し、OCT画像が正常なのか、AMDなのかを分類しています。試行錯誤の末の結果は9割を超える正確性があることが分かりました。
残念ながら100%には届きませんでしたが、ディープラーニングはかなり高い正確性でした。今後はデータがさらに蓄積され、より精度が上がることでしょう。そうすれば今後は検診などで加齢黄斑変性症かどうか判別がつくようになり、適切な医療を提供できる助けとなるのではないかと思います。
そう遠くない未来にAIやディープラーニングといった技術は私たち医師の大きな手助けとなってくれることでしょう。それではまた次の記事でお会いしましょう!
参考文献
Ophthalmology Retina 1 (4), 322-327, 2017