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網膜動脈閉塞症(RAO) | オンライン眼科
網膜とその疾患

網膜動脈閉塞症(RAO)

網膜動脈閉塞症(RAO)とは

網膜動脈閉塞症は、網膜動脈の閉塞による網膜の虚血と壊死によって、重篤な視機能障害をきたす疾患である。網膜動脈、網膜中心動脈は網膜内層を栄養している。網膜中心動脈閉塞症(CRAO)の動物モデルでは、発症後97分を超えると検出可能な障害が認められるようになり、発症後4時間を超えると大規模な不可逆性の視神経および神経線維の障害になることが報告されている。

CRAOの閉塞部位は、網膜中心動脈の内腔が最も狭くなる部位で、それは視神経の硬膜鞘の貫通部位とされる。原因は高血圧、動脈硬化、糖尿病などの全身疾患を持つ高齢者に多い。内頚動脈のアテロームや心腔内血栓が塞栓子になるとされる。その他にも、血管炎、感染症、外傷なども原因となる。若年者で発症した場合は血液凝固系異常、心疾患、先天異常などがみられることが多い。

網膜動脈閉塞症は網膜動脈の閉塞部位によって網膜中心動脈閉塞症(CRAO)と網膜分枝動脈閉塞症(BRAO)、毛様網膜動脈閉塞症に分類される。

網膜動脈閉塞症(RAO)の疫学

  • 粗発生率:10万人年あたり5.84人/年
  • WHOの標準的な年齢構成集団に従って計算された年齢標準化発生率は10万人年あたり2.53人/年
    →他国は0.7-1.9の発症率と報告されており、日本の高齢化を反映した結果ではないかと予想される。
  • 動脈炎性CRAOはCRAOの約4.5%

網膜動脈閉塞症(RAO)の症状

CRAOが起こると突然の視力低下や視野狭窄を訴えうる。BRAOでは閉塞部位に対応する視野欠損が起こる。

網膜動脈閉塞症(RAO)の診断

眼底所見から診断は容易である。

所見

1.眼底

  • 初期には閉塞領域の網膜が白濁し、動脈が狭細化する。CRAOでは中心窩だけは色調が保たれるため桜実紅斑(Cherry red spot)となる。
  • 発症から数週間-数カ月でこれら所見は消失する。
  • BRAOや毛様網膜動脈閉塞症の白濁はやがて消失し、所見は分かりづらくなる。

Research Gate HPより引用

  • 網膜動脈の狭細化や20%で網膜動脈内に塞栓子を認めることがある。
  • 1-2カ月すると網膜の白濁やcherry red spotは消失し、閉塞部位は分かりづらくなる。

2.OCT所見

  • 発症後急性期では網膜内層の肥厚と高反射がみられ、網膜内層でOCTの測定光が減衰するため、網膜外層は低反射となるが構造は正常に保たれる。
  • 数カ月すると網膜内層は菲薄化する。

3.蛍光眼底造影検査(FA)

著しい網膜血管充盈遅延を認める。また、網膜内循環時間(動脈→静脈への蛍光色素移行までの時間)が長くなる。

4.網膜電図

陰性型(b波<a波)とされるが、程度によりその波形は異なる。脈絡膜循環障害を伴う場合はa波も減弱する。

5.全身検査

  • 頚動脈エコー:RAOの約70%で内頚動脈にプラークを認めた。
  • 頭部MRI、MRA
  • 心電図
  • 心臓超音波:CRAOの約50%、BRAOの約40%で塞栓源を伴う異常像が認められた。

※若年者では炎症反応、血液凝固系、関連する自己抗体なども測定する。

6.その他

発症から4-10週後に血管新生緑内障を引き起こすことがある。

網膜動脈閉塞症(RAO)の治療

CRAOは発症直後の治療が望ましい(発症後2時間以内)が、発症後1、2日以内であれば積極的に治療を行う。ただし、網膜循環が40分以上停止すると神経節細胞死が始まり、神経線維の萎縮・変性が進み、視機能障害を呈するとされる。

眼球マッサージ(両手の指で5-10分間圧迫と解除を繰り返す)、前房穿刺、星状神経節ブロック、高圧酸素療法、薬物治療などが行われている。BRAOでも視力障害があれば同様の治療を行う。

薬物治療も下記の4剤を用いることがある。

  1. 亜硝酸アミル(25ml/バイアル)1日1バイアル
  2. ダイアモックス1回500㎎1日1回静脈注射1日
  3. ウロキナーゼ静注用6万単位初期1日量6万単位~24万単位、以後は漸減し約7日間投与
  4. オパルモン錠(5μg)6錠分3食後

高圧酸素療法は発症後12時間以内など、より早期に行うことが効果的とされている。

また、血栓溶解療法は4.5時間以内の介入が有効である。血栓溶解療法で改善する症例は31.8%であり、発症後4.5時間以内だとその割合が50.0%であった。4.5時間以降だと有意な改善はなかった。

網膜動脈閉塞症(RAO)の予後

1.BRAO(自然経過)

発症後1週間以内の74%が視力0.5以上で、最終的に89%が視力0.5以上であった。一過性BRAOでは94%、毛様網膜動脈閉塞症では73%が視力0.5以上を示し、最終的にいずれも100%で視力0.5以上であった。

視力予後不良因子:HDL低値、頸動脈エコーでの頸動脈洞内中膜肥厚の増加、女性

2.CRAO(自然経過)

発症後1週間以内の10.8%が視力0.5以上で、74%が指数弁以下であった。一過性CRAOでは視力0.5以上が38%、毛様網膜動脈開存を伴うCRAOでは20%、その他の非動脈炎性CRAOおよび動脈炎性CRAOではいずれも0%であった。

指数弁以下が一過性CRAOでは38%、毛様網膜動脈開存を伴うCRAOでは60%、その他の非動脈炎性CRAOでは93.2%、動脈炎性CRAOでは75%であった。また、RAO発症後14日以内の脳卒中発症のリスク比は約50と高い。特に、CRAOは脳梗塞、内頚動脈病変、異常高血圧などの合併が多く、90%以上の患者で全身的な治療介入が必要である。そして、発症後2年間に30%以上の患者で重大イベント(心筋梗塞、脳梗塞、死亡)が生じるため、二次予防が重要となる。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針第3版
  2. 眼科学第2版
  3. あたらしい眼科 Vol.39, No.1, 2022
  4. 第126回日本眼科学会総会

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