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Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD) | オンライン眼科
角膜とその疾患

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)とは

FCDは両眼性滴状角膜(guttata)という特徴的な所見を持つ。常染色体優性遺伝であるが、孤発例も認められる。2012年にフックス角膜内皮ジストロフィー患者の79%がTCF4に50回以上の三塩基繰り返し配列の伸長を有することが明らかになった。

欧米の白人では40歳以上の4%が罹患する。40~70代の女性に多く(男女比1:3)発症するが、10歳未満からすでに滴状角膜が発症するFCD家系もある。有病率は7.33%とされている。角膜内皮移植の主要な原因疾患である。異常遺伝子の角膜内皮細胞が酸化ストレスや小胞体ストレスなどの障害が加わった際、その創傷治癒が正常に機能しないことが原因と考えられている。

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)の症状

多くの症例で浅前房を呈し、時に眼圧上昇を伴う。明け方に浮腫が強く、視力低下や眼痛、羞明を訴える。しかし、夕方には改善する。ただし、通常、50歳以下で自覚症状をきたすことは少ない。

Stockerによる重症度分類

病期を1期(内皮限局性変化)、2期(実質浮腫・上皮浮腫)、3期(上皮下瘢痕)に分けられる。1期の割合が多い。

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)1期(内皮限局性変化)

両眼の角膜瞳孔領を中心に角膜内皮細胞の滴状角膜(guttata)と称される変化で、内皮細胞の重層化、偽足状突起などの変化とともにDescemet膜上に新しい基底膜が形成されDescemet膜の厚みも不整となる。細隙灯顕微鏡で内皮細胞面の凹凸不整が観察できる。これに滴状角膜を伴うとbeaten metal appearanceという。

また、内皮細胞による虹彩色素の貪食による色素沈着を認める。スペキュラーマイクロスコープでは滴状角膜があれば黒く抜ける。臨床的にはこの1期が多く、積極的な治療法もない。白内障手術など内眼手術で内皮細胞障害増悪することによって合併症が出ないよう適切な診断が重要となる。

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)2期(実質浮腫・上皮浮腫)

角膜内皮細胞の機能不全によって角膜実質と上皮の浮腫が生じ、Descemet膜が灰白色に混濁し、皺壁を認めるようになる。細隙灯顕微鏡で実質の浮腫による、角膜厚の増加透明性の低下を認める。角膜浮腫により前房が浅く見えることがあり、中年以降の女性に多いことから緑内障と診断されていないか注意して診察をする。

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)3期(上皮下瘢痕)

角膜上皮下に瘢痕が形成され透明性低下が生じるが、上皮浮腫は軽減する。角膜知覚は低下する。

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)の検査所見

滴状角膜は細隙灯顕微鏡で角膜中央部に集中した、角膜内皮層の多数の微細、透明な光輝点として観察できる。スペキュラーマイクロスコピー検査では、孤発性ないし融合して拡大したダークエリアとして観察される。

Eye Rounds HPより引用

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)の診断

上記臨床所見により判断する。

Fuchs角膜内皮ジストロフィ(FCD)の治療

  1. 滴状角膜で角膜浮腫なし(Stocker分類StageⅠ)→治療は不要
  2. 滴状角膜で角膜浮腫あり(Stocker分類StageⅡ、Ⅲ)→治療は全層角膜移植あるいは角膜内皮移植である。特に、実質が瘢痕化していないStageⅡは角膜内皮移植(DSAEK,DMEK)の良い適応となる。移植後の成績は良好である。移植後再発はしうるが、再発が多いという報告はない。
  3. 上皮の水疱形成があり眼痛もある場合、治療用コンタクトレンズが有効である。
  4. 上皮浮腫には5%高張食塩眼軟膏を就寝前に塗布すると軽減される。

その他にも、直径4mm程度でguttaeをデスメ膜ごと取り除くDescemet stripping only(DSO)が試みられたり、ROCK阻害剤の点眼薬併用の臨床研究や意見が行われています。

日本では、角膜移植の原因疾患としてフックス角膜内皮ジストロフィーは2001年に1.9%であったが、2021年には10.9%まで増えている。

参考文献

  1. 細隙灯顕微鏡用語活用アトラス事典
  2. Medscape
  3. クオリファイ12角膜内皮障害(専門医のための眼科診療クオリファイ)
  4. 今日の治療指針第3版
  5. 眼科学第2版
  6. 第126回日本眼科学会総会
  7. Global Prevalence of Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy (FECD) in Adult Population: A Systematic Review and Meta-Analysis
  8. Trinucleotide Repeat Expansion in the Transcription Factor 4 (TCF4) Gene Leads to Widespread mRNA Splicing Changes in Fuchs’ Endothelial Corneal Dystrophy
  9. Descemet’s stripping without endothelial keratoplasty.

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