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翼状片 | オンライン眼科
結膜とその疾患

翼状片

翼状片とは

瞼裂部の線維組織で異常増殖した球結膜が角膜に侵入し、輪部を基底部とする三角形の隆起病変を形成する。これを翼状片といい、病変は鼻側の瞼裂斑部に発生することが多い。

翼状片の悪化因子として紫外線、加齢(ただし、発症は20~40歳の間)、男性(約2倍)、屋外従事者、タバコの煙への曝露、風、ほこりなどが考えられているが、真の原因は不明とされている。

翼状片の各部位の名称

角膜側から

  • cap(先端の白色組織)
  • head(角膜上で特に突出した部分)
  • neck(角膜上の隆起した増殖組織)
  • body(強膜上の増殖組織)

に分けられる。

翼状片の分類(江口の分類)

Grade1 角膜内に侵入する翼状片の先端の位置が角膜の中心より1/3半径以下しか侵入していないもの
Grade2 瞳孔領に達していないが、角膜半径の1/3以上輪部より侵入するもの
Grade3 瞳孔領に達したもの
Grade4 瞳孔領を覆うもの
Grade5 角膜を鼻側から耳側にかけて横断するもの

翼状片の診断

細隙灯顕微鏡により診断は容易

翼状片の治療

充血や異物感の軽減のため低濃度ステロイドやNSAIDsの投与がされることもある。しかし、進行防止効果はないため、乱視や視力低下などが強い、あるいは整容的に希望があれば手術加療を行う。

角膜内侵入が3㎜を超えると不整乱視のために視機能に影響が出てくるため、通常2㎜程度を超えたら切除を行う。整容的な理由で手術希望がある場合には、再発の可能性や術後充血が残る可能性を説明する必要がある。

また、

  • 患者が若い
  • 肥厚が強い
  • 充血が強い
  • 進行が早い
  • 再発例である

ほど再発しやすいとされている。翼状片の単純切除(強膜露出)の場合、再発率は30~70%と高いため、現在は行われていない。また、再発病変は角膜から内直筋に至るまで活動性の高い増殖組織が強固に癒着するために、初回手術よりも難易度が上がる。

この再発率を下げるために、結膜再建(有茎結膜弁や遊離結膜弁)と増殖組織の抑制を組み合わせる必要がある。

modified mini-flap法

平野耕治先生が行っているやり方である。再発率が低いらしい。

  1.  アドレナリン入り2%リドカイン塩酸塩約1mlで結膜下に浸潤麻酔を行う。その後、翼状片頭部でも先端に近い部位で長さ1-2mmの切開を入れる。
  2. マイクロ剪刀で鈍的に結膜とその下の組織を剥離する。
  3. 正常な結膜はできるだけ残すよう、先端部分に近い翼状片頭部で結膜を切断する。
  4. 減張のため輪部に沿って上下に2-3㎜結膜切開を拡大し、わたぬき(結膜下増殖組織の切除)を行う。
  5. 角膜上に残った翼状片を鈍的に剥離する。
  6. 0.02%or0.04%(肉片が厚いなら0.04%)に希釈したMMCをMQAに染み込ませ、切除断端の結膜下に4分間置いて待つ。
  7. MQAを取り除き、生理食塩水約300mlで洗浄する。その後、8-0吸収糸を用いて強膜通糸はせず、結膜を寄せる程度に縫合する。
  8. 抗菌剤の眼軟膏を点入して終了する。

結膜下組織の増殖抑制法

増殖組織抑制のために有茎結膜弁と遊離結膜弁移植を行うことに加えて、手術時にマイトマイシンCの塗布や放射線照射、術後にベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン®0.1%)やトラニラスト(リザベン®)点眼を組み合わせる。これら再発予防により、再発率は1.5~5%まで下がる。

それでもなお再発する場合には、内直筋周囲を含んだ広範囲の病巣切除が必要となり、羊膜移植・マイトマイシンC塗布・自己輪部移植が必要となることがある。

1.contact inhibition

正常組織を切除部に置くことで細胞増殖を防ぐことをcontact inhibitionという。一般的には切除部を正常の自己結膜組織で覆う結膜弁移植(有茎結膜弁移植あるいは遊離結膜弁移植)が行われる。遊離結膜弁は患眼の上鼻側より持ってくることが多く、瘢痕の少ない治癒が得られるのが特徴である。

球結膜に隣接する輪部組織を薄く切除して移植することで、輪部バリア機能の改善も図る自己輪部移植を行うこともある。その他にも、口唇粘膜などの粘膜移植、羊膜移植などを行うこともある。

2.放射線照射

ストロンチウム90の局所照射が通常行われ、術後48時間以内に1800~2200radの照射をすることが必要とされる。放射線により強膜上の血管増殖が抑制されるが、副作用として、強膜潰瘍や白内障がある。

3.マイトマイシンC

マイトマイシンCを術後に点眼して再発抑制を図る。強膜露出法と併用して再発率を0~11%と低く抑えることができるが、高濃度点眼使用や長時間使用すると強膜融解や、続発緑内障などの合併症を生じうる。この合併症を予防するために術中のみ使用する方法も行われている。

術後点眼の処方例

術後の炎症及び結膜下増殖組織の抑制のため下記点眼を用いることがある。

  • クラビット点眼液(1.5%)1日4回
  • リンデロン点眼液(0.1%)1日4回
  • リザベン点眼液(0.5%)1日4回

参考文献

  1. 細隙灯顕微鏡用語活用アトラス事典
  2. 今日の眼疾患治療指針第3版
  3. 眼科学第2版
  4. 日本の眼科 93:11号(2022)

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