緑内障

落屑緑内障

落屑緑内障とは

落屑緑内障(XFG)は瞳孔縁、水晶体表面に特徴的な落屑物質がみられる落屑症候群(XFS)に伴う続発開放隅角緑内障である。XFSは高齢者に多く、70歳以上の約4%に認め、世界に6000万人患者がいるとされている。片眼性のXFSは15年後に52%で両眼性になる。一方で、XFGは全世界で500〜600万人いるとされている。

眼圧上昇は落屑物質が線維柱帯に沈着し房水流出抵抗が増大することが主な原因とされている。その他にも、線維柱帯細胞でも落屑物質が産生され、色素顆粒が線維柱帯細胞に貪食され、弾性線維の生合成阻害による細胞外マトリックスの異常沈着などが関与する。

項目 真性落屑(true exfoliation) 偽落屑(pseudoexfoliation)
病理 水晶体前囊の層状剥離 異常な線維状物質の沈着
臨床所見 透明な膜が前房に浮遊、楕円形状 水晶体前囊のフケ状の白色沈着
緑内障との関連 通常なし 続発緑内障および開放隅角緑内障を発症しうる
チン小帯の脆弱性 通常なし 頻繁にみられる

落屑緑内障の診断

細隙灯顕微鏡により瞳孔縁あるいは水晶体表面に付着する落屑物質を確認することで診断可能とされる。

West coast glaucoma HPより引用

落屑物質は

  • central disc :水晶体表面にある、瞳孔付近の落屑物質
  • peripheral band:水晶体表面にある、周辺部の落屑物質
  • intermediate zone:central discとperipheral band間の落屑物質を認めない領域

時にcetral discは欠くが、peripheral bandは全例にあり散瞳して初めて確認されることもある。

隅角検査では、高度の色素沈着Schwalbe線を越える波状の色素沈着(Sampaolesi線)が特徴的である。

また、落屑症候群はZinn小帯が脆弱であったり、散瞳が不良であったりすることが多い。Zinn小帯の脆弱性のため、水晶体が前方偏位し、閉塞隅角緑内障をきたす場合もあり、さらに散瞳によって色素が散布され、眼圧が急激に上昇する場合がある。

落屑緑内障の治療

1.薬物治療

基本は原発開放隅角緑内障に準じ、視機能、視野障害の程度により眼圧下降を図る。その眼圧下降のために点眼液を使用する。

2.外科的治療

アルゴンレーザー線維柱帯形成術(ALT)やNd-YAGレーザーを用いた選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)が比較的奏効するとされているが、長期的効果はあまり期待できない。そのため、十分な眼圧下降のため線維柱帯切除術あるいは線維柱帯切開術を選択する。

白内障手術では散瞳不良、Zinn小帯の脆弱化または断裂、高度の核硬化などを伴うことが多く、手術の難易度は高くなる。

また、XFGに対する線維柱帯切除術の長期成績は、POAGよりも悪いという報告が多い。線維柱帯切除術で眼圧管理ができない場合には、チューブシャント手術を選択する。上眼瞼の凹みなどのPAPの症状が強い場合には、線維柱帯切除術の成績が悪いことが報告されており、すでに角膜内皮細胞密度が減少しているような場合には、チューブシャント手術(毛様溝固定)を考慮するのも良い選択肢となる。

そして、流出路再建術では白内障同時手術を併施して、眼圧が安定しているようにみえても視野障害が進行する症例がある可能性がある。そのため、XFGに対する流出路再建術では、術後も眼圧変動が完全には抑制できず、視野障害が進行する可能性があることを念頭に管理していく必要がある。

落屑緑内障の予後

POAGに比べ眼圧レベルも高く、進行傾向が強く予後不良例が少なくない。眼圧の変動が大きな例は特に注意し、早期から積極的な治療介入が必要である。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針第3版
  2. 眼科学第2版
  3. Phacoemulsification, intraocular lens implantation, and trabeculotomy to treat pseudoexfoliation syndrome
  4. Long-term Outcomes of Mitomycin-C Trabeculectomy in Exfoliative Glaucoma Versus Primary Open-Angle Glaucoma
  5. Effects of pre-surgical administration of prostaglandin analogs on the outcome of trabeculectomy

関連記事

緑内障緑内障に関する記事をまとめています。...
オンライン眼科のサポート