全層角膜移植術(PKP)
全層角膜移植術(PKP)とは
水疱性角膜症が適応の中心とされる。しかし、角膜内皮細胞も切除するため、現在は内皮細胞を可能な限り残す目的で層状角膜移植術を行う。また、角膜の形状維持および前房を開放することで生じるリスクを減少させる目的で、全層角膜移植術が適応だった水疱性角膜症症例等に角膜内皮細胞移植術が臨床的に導入されてきている
全層角膜移植術の合併症
拒絶反応、感染症および角膜内皮細胞の減少によるグラフトの機能不全(水疱性角膜症)がある。術後の感染症は縫合糸に沿ってみられることが多い。また、単純ヘルペス角膜炎既往角膜では単純ヘルペスの再活性化が生じうる。生じた場合はグラフト内への角膜知覚神経の再生がない期間(術後1~2年程度)、病変はホスト側に生じる。

層状角膜移植術
層状角膜移植術とは
層状角膜移植術は①光学的角膜移植術と②治療的角膜移植術とに大別される。
- 光学的角膜移植術:角膜実質までの角膜病変(混濁)を対象とする
- 治療的角膜移植術:角膜潰瘍・穿孔などの活動性病変に対して眼球の形状維持を目的とする
深層層状角膜移植術(deep anterior lamellar keratoplasty;DALK)
深層層状角膜移植術(deep anterior lamellar keratoplasty;DALK)とは
角膜内皮細胞の温存および角膜の形状保持に重要な役割を果たしているDescemet膜の連続性の保持を目的として、内皮細胞の障害がない場合は実質深層またはデスメ膜のみを残す角膜移植術を深層層状角膜移植術という。DALKのメリットは2つある。
- 角膜内皮細胞の温存
- Descemet膜の連続性保持による眼球形状が維持され、術後乱視の軽減ならびに外傷に対する強度の保持できる
術後の合併症として、グラフトとホストDescemet膜との接着不良による二重前房がある。治療的層状角膜移植はモーレン角膜潰瘍、感染症またはシェーグレン症候群、関節リウマチによる角膜穿孔などに対して行われる。しかし、傍瞳孔領なら全層角膜移植術が選択される場合もあるが、モーレン角膜潰瘍、関節リウマチ、感染症による場合はグラフトが融解し、再移植となる恐れもある。
前部層状角膜移植(anterior lamellar keratoplasty :ALK)
混濁が角膜実質浅層にある場合には行われる角膜移植術を前部層状角膜移植ということがある。角膜内皮移植術(Descemet stripping automated endothelial keratoplasty : DSAEK)も層状角膜移植の範疇だが、移植組織が角膜内皮細胞主体のため別に扱われる。ALKはDALKほど視力回復は望めないこともあるが、術中のホスト角膜の穿孔、グラフト・ホストの接着不良のリスクは低い。
参考文献
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