眼球運動障害

外転神経麻痺

外転神経麻痺とは

外転神経は外直筋を支配しているため、外転神経が麻痺すると外直筋の張力が低下する。外直筋が低下すると、麻痺眼の外転不良に伴い、麻痺性(非共同性)内斜視を生じる。麻痺性内斜視は同側性の複視を自覚し、この複視は患側の外転で増悪する。

外転神経核は橋にあり、その後蝶形骨斜台、海綿静脈洞、上眼窩裂を通り、眼窩内の外直筋へ向かう。これらどの部位であっても障害が生じるが、特に脳腫瘍(斜台部の脊索腫や海綿静脈洞部の三叉神経鞘腫や髄膜腫)による圧迫、頭蓋内圧亢進に伴う脳下垂の頻度が多いのが特徴的とされている。その他にも高血圧や糖尿病などの末梢循環障害や頭蓋内圧亢進でも外転神経麻痺を生じることがある。

小児の眼運動神経麻痺

1999年の報告では、18歳以下の小児において動眼神経、滑車神経、外転神経麻痺の発生率は10万人あたり7.6人で、そのうち最も頻度が多いのは滑車神経麻痺(36%)であり、外転神経麻痺(33%)、動眼神経麻痺(22%)、複数の脳神経麻痺(9%)であった[]。小児における原因疾患としては先天性以外では外傷性(42.0%)、腫瘍性(20.5%)が多い[]。

外転神経麻痺の診断

患側の外転運動が不良であることを確認し、また、同側性の複視を自覚し、この複視は患側の外転で増悪することを確認する。さらに、原因精査のため頭部画像診断を行う。

外転神経麻痺の治療

原因疾患を治療するが、末梢循環障害が原因であれば自然軽快も多い。ビタミン剤や循環改善薬投与などで約6カ月前後を目安に経過観察を行う。また、斜視が軽度であれば、複視の症状改善のためプリズム眼鏡を処方することもある。

複視が長期化する、あるいは複視の症状が強い場合には外眼筋手術(内直筋後転術など)を考慮する。この外眼筋手術は外転神経麻痺を解除することはできないため、目的は第一眼位での眼位改善と複視の消失である。よって、側方視での術後の複視が残存は必発であることを事前に説明する必要がある。また、内斜偏位が強い場合は、麻痺眼の上下直筋を外直筋方向に移動する筋移動術を行うこともある。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針第3版
  2. J M Holmes et al.:Pediatric third, fourth, and sixth nerve palsies: a population-based study:Am J Ophthalmol.127(4):388-92. 1999
  3. S R Kodsi et al.:Acquired oculomotor, trochlear, and abducent cranial nerve palsies in pediatric patients:Am J Ophthalmol.114(5):568-74.1992
  4. あたらしい眼科 Vol38,No.9,1014-1015,2021
  5. 眼科 2021年12月臨時増刊号 63巻13号 特集 覚えておきたい神経眼科疾患

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