はじめに
加齢黄斑変性症(AMD)は、日本における成人失明原因の上位であり、非新生血管性AMDと新生血管性AMDの2つの主要なタイプがあります。
非新生血管性AMDはゆっくりと進行し、視力に徐々に影響を与える一方、新生血管性AMDは急速に進行し、深刻な視力低下を引き起こすことがあります。
また、抗凝固療法は、特に心房細動などの患者において、血栓形成を防ぐために広く使用されています。DOACs(直接経口抗凝固薬)およびワルファリンは、これらの患者に対して使用される主要な抗凝固薬です。
しかし、抗凝固療法がAMD患者にどのように影響を与えるかについては、まだ十分に理解されていません。
研究に着目した理由
この研究は、非新生血管性AMD患者がDOACsまたはワルファリンを使用した場合における新生血管性疾患への移行リスクを評価することを目的としています。
具体的には、DOACsを使用した患者とワルファリンを使用した患者を比較し、新生血管性AMD、黄斑出血(MH)、硝子体出血(VH)、および眼科的介入(抗VEGF療法または硝子体手術)が必要となるリスクを評価しました。
これにより、AMD患者に対する最適な抗凝固療法の選択に関する重要な情報を提供することを目指しています。
研究に対する見解
この研究は、ワルファリン治療を受けている非新生血管性AMD患者が、新生血管性疾患への移行リスクがDOACs治療を受けている患者に比べて高いことを示しています。
具体的には、ワルファリン治療を受けている患者は、6か月および1年後において新生血管性AMDを発症するリスクがそれぞれ1.24倍および1.26倍高いことが示されました。
また、ワルファリン治療を受けている患者は、抗VEGF療法および硝子体手術が必要となるリスクも高いことが分かりました。さらに、AMDおよび心房細動を有する患者においても、ワルファリン治療が眼科的合併症のリスクを増加させることが確認されました。
これらの結果は、ワルファリンがDOACsに比べてAMD患者にとってリスクの高い治療法であることを示唆しています。
しかし、全身的な出血性イベントの発生率には有意な差が見られなかったため、ワルファリンの使用が全身的なリスクを増加させるわけではないことが分かりました。
臨床への応用
非新生血管性AMD患者においては、DOACsの使用が推奨されるかもしれません。しかし、眼以外ヘの影響も考慮する必要はあります。
また、AMD患者が抗凝固療法を受ける場合、定期的な眼科検診を強化し、早期に眼科的合併症を発見・治療することが重要です。
いずれの抗凝固薬でもリスクは上がるため、これら患者に対しては、より注意深い経過観察は必要だと考えられます。