白内障手術で入れた眼内レンズは、手術から何年も経ってから位置がずれることがあります。「眼内レンズ偏位・脱臼」と呼ばれ、見え方の変化につながります。
ただし、10年経つと必ずずれるわけではありません。この記事では、眼内レンズがずれる原因や症状、治療、国内の研究でわかったことについて解説します。
もくじ
眼内レンズがずれる「偏位・脱臼」とは
眼内レンズは、白内障手術で取り除いた水晶体の代わりに入れる人工のレンズです。まず、レンズを支える仕組みと、ずれが起こる理由について解説します。
通常、眼内レンズは水晶体を包む袋「水晶体嚢」の中に入れます。この袋や、袋を支える細い線維「チン小帯」が損傷すると、レンズの位置が不安定になることがあります。
本来の位置からずれた状態が偏位で、大きく外れた状態が脱臼です。手術後しばらく安定していても、時間が経ってから起こる場合があります。
眼内レンズがずれたときの症状
主な症状は見え方の変化です。ずれの程度によって困り方が異なるため、気づきやすい症状について解説します。
- ぼやけて見える
- 物が二重に見える
- レンズの縁が見えるように感じる
こうした症状だけで、眼内レンズのずれと判断することはできません。見え方が変わった場合は眼科に相談し、レンズの位置や目の中の状態を確認しましょう。
眼内レンズがずれる原因と注意したい背景
レンズの支えが弱くなる背景には、病気やけが、過去の手術などがあります。関連する主な要因について解説します。
- 目の外傷
- 網膜や硝子体の手術歴
- 落屑症候群
- ぶどう膜炎
- 一部の結合組織の病気
落屑症候群は、眼内レンズを支える水晶体嚢の安定性に影響することがあります。これらに当てはまるから必ず脱臼するわけではありませんが、受診時には過去の病気や手術について伝えてください。
国内712眼の研究では修復手術まで平均約11年
国内の多施設研究では、遅れて起きた眼内レンズ脱臼に対して手術を受けた712例712眼が調べられました。研究の結果と、その読み取り方について解説します。
眼内レンズを入れた手術から、脱臼を修復する手術までの期間は、平均131.5ヶ月、約11年でした。
ここで大切なのは、この数字が「脱臼を修復する手術を受けた方」の平均であることです。白内障手術を受けたすべての方が、約11年後に脱臼するという意味ではありません。また、症状が出た時期ではなく、修復手術までの期間を示しています。
この研究は、手術から長期間経過した後にもレンズの位置が問題になる場合があることを伝える資料として参考になります。
眼内レンズがずれたときの治療
治療は、ずれの程度や見え方への影響に応じて判断します。経過観察と手術について解説します。
ずれが軽く、視力への影響が小さい場合は、治療をせず経過をみることもあります。症状や視力への影響がある場合には、レンズを安定した位置に固定し直す手術や、新しいレンズへ交換する手術を検討します。
どの方法を選ぶかは、レンズの種類や状態、目の構造によって異なります。必要に応じて硝子体手術も組み合わせます。
よくある質問
眼内レンズのずれについて、手術後の方が気になりやすい疑問をまとめました。経過年数と治療の考え方について解説します。
白内障手術から10年以上経っていても起こりますか?
起こることがあります。ただし「10年が交換時期」という意味ではありません。国内研究の約11年という数値は、脱臼の修復手術を受けた方における平均期間です。
少しずれただけでも手術が必要ですか?
必ずしも必要ではありません。ずれが軽く視力への影響が小さければ経過観察を選ぶこともあり、眼科で状態を確認して判断します。
見え方が変わったら、何を伝えればよいですか?
いつから、どのように変わったかを整理して伝えるとよいでしょう。白内障手術を受けた時期や、ほかの目の手術歴がわかれば、あわせて伝えてください。
白内障手術から時間が経っていても、見え方の変化を以前の手術とは無関係と決めつけず、眼科に相談しましょう。
参考文献
『Characteristics of Patients with Late-onset Intraocular Lens Dislocation: A Prospective Multicenter Clinical Cohort Study in Japan』(American Journal of Ophthalmology、2025年)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39892802/
『Intraocular Lens Dislocation』(American Society of Retina Specialists)
https://www.asrs.org/patients/retinal-diseases/27/intraocular-lens-dislocation
