もくじ
1.RVOはBRVOとCRVOに大別される
網膜静脈閉塞症(RVO)は、高血圧や動脈硬化などを背景に発症する代表的な網膜血管疾患です。
閉塞部位により、
・網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)
・網膜中心静脈閉塞症(CRVO)
に分けられます。
視力低下の主因は黄斑浮腫で、近年は抗VEGF薬によって治療成績が大きく改善しました。
一方で、
・再燃を繰り返す
・長期に注射が必要になる
・治療抵抗例がある
といった問題は残っており、個々の症例に応じた治療が必要です。
2.BRVOの病態:動静脈交差部がポイント
BRVOでは、動静脈交差部で動脈と静脈が血管外膜を共有しています。
動脈硬化によって細動脈が硬くなると、交差部で静脈が圧迫されます。
その結果、
・静脈狭窄
・乱流
・静脈内皮障害
・血栓形成
が起こり、静脈閉塞につながります。
3.CRVOは篩状板付近での圧迫や血栓形成が関与
CRVOでは、
・篩状板付近での中心静脈圧迫
・中心動脈硬化による圧迫
・静脈内での直接的な血栓形成
などが主因になります。
BRVO、CRVOともに最終的には静脈内圧が上昇し、
・血漿成分の漏出
・網膜浮腫
・出血
を起こします
4.黄斑浮腫の中心にVEGFがある
静脈閉塞によって網膜が虚血になると、VEGFの産生が亢進します。
VEGFは、
・血管透過性亢進
・血液網膜関門の破綻
・黄斑浮腫
・血管新生
に関与します。
特にCRVOでは、虚血が強い症例で
・虹彩新生血管
・隅角新生血管
・血管新生緑内障
などにつながるため注意が必要です。
5.第一選択は抗VEGF薬
RVOに伴う黄斑浮腫では、現在の治療の中心は抗VEGF薬硝子体内注射です。
日本では本文中、
・ラニビズマブ
・アフリベルセプト
・ラニビズマブBS
・ファリシマブ
の4剤が使用可能とされています。
従来、黄斑浮腫は静脈内圧上昇による血漿漏出が中心と考えられていましたが、現在ではVEGFが重要なドライバーであることが明確になったため、抗VEGF薬が治療の中心になっています。
6.投与は1回導入後PRNが一般的
本文ではRVOに対して、
初回1回投与後、再燃時に追加するPRN法
が一般的とされています。
つまり、AMDのように必ず複数回の導入投与を行うというより、まず治療して、その後OCTや視力で再燃をみながら追加します。
7.抗VEGFはできるだけ早期に開始する
抗VEGF薬では、治療開始が遅れるほど結果が悪くなる可能性があります。
長期間VEGFに曝露されると、
・血管リモデリング
・微小血管瘤形成
・慢性黄斑浮腫
・薬剤抵抗性
につながる可能性があります。
そのため、治療適応がある黄斑浮腫では、必要以上に経過観察を続けず早期介入を検討します。
8.OCT外網膜構造が視力予後の重要な指標
RVOの予後評価では、単純に中心窩厚だけを見るのではなく、網膜外層の構造を見ることが重要です。
本文では、
OCTで網膜外層構造が保たれていれば、巨大な中心窩嚢胞があっても視力が良好な場合がある
とされています。
一方、外層障害がある症例では、浮腫が改善しても視力予後が不良になり得ます。
つまり、
浮腫の量だけでは視力予後を判断できない
ということです。
9.OCTAで黄斑部毛細血管脱落を評価
OCTAでは、黄斑部の毛細血管脱落を評価できます。
毛細血管障害が軽い症例ほど再燃しやすいという報告もあり、OCTAは単なる虚血評価だけでなく、
・再燃リスク
・治療継続性
・予後
を考える材料になる可能性があります[1,2]。
10.ステロイド局所注射は第二選択
ステロイド局所注射は、
・抗VEGF薬より視力改善効果や浮腫改善効果が劣る
・眼圧上昇などの副作用がある
ため、第一選択にはなりません。
ただし、
・抗VEGF適応困難例
・抗VEGF治療抵抗例
では有力な選択肢になります。
11.慢性・再燃例では炎症性サイトカインも関与
慢性期や繰り返し再燃するRVOでは、VEGFだけでなく炎症性サイトカイン上昇が関与している可能性があります[3]。
そのため、抗VEGF単独で効果不十分な症例では、
ステロイド局所注射を追加・切り替える
ことに合理性があります。
本文では、抗VEGF薬との併用によって黄斑浮腫再燃頻度が抑制されるとの報告もあります[4]。
12.レーザー治療は第一選択ではない
大規模試験の結果、レーザー治療は単独でも併用でも現在の第一選択にはなりません。
ただし、
1年以上黄斑浮腫が遷延しているBRVOで、非虚血型の毛細血管瘤が目立つ場合
には検討されます。
具体的には、
・蛍光眼底造影で毛細血管瘤を確認
・無血管領域ではなく、漏出源となる病変に直接レーザー照射
を行います。
13.血管新生緑内障を伴えば抗VEGF+レーザー
CRVOなどで血管新生緑内障を合併した場合には、
抗VEGF薬を速やかに投与し、網膜光凝固を行う
ことが重要です。
抗VEGFだけで一時的に新生血管が退縮しても、虚血そのものは残るため、レーザーによってVEGF産生源となる虚血網膜への対応を行います。
14.硝子体手術の位置づけ
既存治療でも黄斑浮腫が改善しない場合には、硝子体手術が検討されます。
目的としては、
・VEGFを含むサイトカインの除去
・後部硝子体剥離形成
・牽引解除
などが考えられます。
また、
硝子体出血が自然吸収されない場合や再出血を繰り返す場合
も手術適応になります。
参考文献
- Tsuboi K, Ishida Y, Kamei M. Gap in capillary perfusion on optical coherence tomography angiography associated with persistent macular edema in branch retinal vein occlusion. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2017;58:2038-2043.
- Hasegawa T, Takahashi Y, Maruko I, et al. Macular vessel reduction as predictor for recurrence of macular edema requiring repeat intravitreal ranibizumab injection in eyes with branch retinal vein occlusion. Br J Ophthalmol. 2019;103:1367-1372.
- Noma H, Yasuda K, Shimura M. Change of cytokines after intravitreal ranibizumab in patients with recurrent branch retinal vein occlusion and macular edema. Eur J Ophthalmol. 2021;31:204-210.
- Arai Y, Takahashi H, Inoda S, et al. Effectiveness and cytokine profile of combined anti-vascular endothelial growth factor and corticosteroid therapy for chronic retinal vein occlusion. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2025;263:1427-1434.
- Murata T, Kondo M, Inoue M, et al. The randomized ZIPANGU trial of ranibizumab and adjunct laser for macular edema following branch retinal vein occlusion in treatment-naïve patients. Sci Rep. 2021;11:551.
- 野間英孝「網膜静脈閉塞症の病態と治療」『日本の眼科』97巻9号, 2026.
