緑内障

緑内障の進行判定をどう組み立てるか――視野・OCTの経時評価と眼圧測定の注意点

緑内障の進行は、単回の検査だけでは判断しにくい。視野検査とOCTの結果を時間軸で比較し、検査の信頼性や眼圧測定に影響する因子も合わせて評価する必要がある。

本記事では、進行判定の基本から末期例の検査戦略、眼圧値の解釈に関わるPAPや湿度の知見までを整理する。

視野検査の信頼性は、数値だけで決めない

視野検査では、固視不良率(fixation losses; FL)、偽陽性率(false positives; FP)、偽陰性率(false negatives; FN)を確認する。一般にFL 20%超、FP 15%超は信頼性低下を疑う目安とされる。ただし、これらは検査結果を確認する手掛かりであり、数値だけで検査全体を無効と判定するものではない。信頼性の評価には、緑内障の病期や検査中の様子も関係する³)。

特にFPが高いと、患者が刺激を実際より多く感じたように応答し、視野感度が高めに表示されることがある。そのため、欠損が改善したように見えたり、進行の判定が不正確になったりする。一方、FNは視野障害が進んだ症例でも高くなることがある。FN高値だけを理由に検査を不採用とせず、視野欠損の程度、応答のばらつき、検査中の固視などを合わせて解釈したい³)。

初期は検査を重ね、変化の再現性を確かめる

視野検査の結果に悪化がみられても、単回の変化だけで治療方針を変えるのではなく、確認検査(confirmation test)で再現性を確かめる。検査には日ごとのばらつきがあるため、偶然の変動と本当の進行を見分けるには、複数回の結果を比較する必要がある。

EGS第5版では、診断後の最初の2年間に視野検査を頻回に行う考え方が示されており、「最初の2年間で6回以上(6 in 2)」がよく参照される。早期に測定を重ねることで、進行速度の速い症例を見つけやすくなる²)。

検査頻度は、病期や進行リスク、治療変更、検査への慣れなどを踏まえて個別に決める。診断確定から2年目までは年2~3回、安定期は年1~2回、進行リスクの高い症例では年3~4回が目安とされている。実際には、患者ごとのリスクや検査結果に応じた調整が必要である。

白内障によるMD低下を「緑内障の進行」と誤認しない

MD(mean deviation)は、視野全体の感度が年齢相応の基準からどの程度低下しているかを示す指標である。白内障が進むと光が網膜に届きにくくなり、視野全体の感度が下がるため、MDが悪化することがある。この変化は緑内障が進行したように見える場合があり、視野欠損の局在や水晶体の状態、他の検査所見と照らし合わせて判断する。白内障手術の前後で視野検査の結果が変わり得ることも報告されている⁸)。

病期が進むと、MDは床効果の影響を受ける。視野感度がすでに大きく低下していると、さらに障害が進んでも数値上の変化が小さくなり、進行を捉えにくくなる現象である。MDが概ね−20 dBを下回る症例では、中心10度を詳しく調べる10-2視野検査への切り替えや併用を検討し、読書などに関わる中心視野を評価する。中心黄斑部の障害は標準的な24-2検査で見逃されたり、過小評価されたりすることがある⁹)。

OCTでは「ベースラインとの差」と「変化の速度」を見る

OCTによる進行判定には、イベント解析とトレンド解析がある。イベント解析は、基準となる初回測定(ベースライン)から、網膜神経線維層などの厚みが一定以上減ったかを確認する方法である。トレンド解析は、複数回の測定値から厚みの変化を傾きとして計算し、菲薄化の速度をみる方法である。前者は「前回と比べて変化したか」、後者は「どのくらいの速さで変化しているか」を捉えるのに向いている¹,⁴)。

ただし、OCTの値には測定ごとのばらつきがあり、加齢に伴っても低下する。単回の数値やわずかな変化だけで進行と判断せず、画像品質、セグメンテーション、測定位置、緑内障に合う変化パターンを確認する。トレンド解析では測定回数が少ないと傾きの推定が不安定になりやすく、継続的なデータの蓄積が欠かせない⁴,⁶)。

緑内障疑い例を追跡した前向き研究では、その後に視野障害を認めた眼の全周RNFL菲薄化速度は平均−2.02 μm/年で、視野障害を認めなかった眼の−0.82 μm/年より速かった。これは菲薄化速度がリスク評価に役立つ可能性を示すが、−2 μm/年を個々の患者にそのまま適用できる治療閾値とみなすものではない。視野、視神経乳頭所見、リスク因子と合わせて判断する⁷)。

PAPがある症例では、眼瞼の影響も考慮する

プロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)は、眼瞼や眼窩周囲の外観変化を指す。整容面だけでなく、眼圧測定に与える影響も評価する方法として、Shimane University Prostaglandin-Associated Periorbitopathy(SU-PAP)分類が提案されている。

同分類のGrade 3では、Goldmann圧平眼圧計(GAT)とリバウンド眼圧計(RBT)の差(GAT−RBT)が平均5.8 ± 3.2 mmHgで、Grade 0~2の1.3~1.9 mmHgより大きかった。研究ではトラボプロストやビマトプロスト使用例でPAPの程度が高く、オミデネパグ イソプロピル使用例では低かった。PAPを認める症例でGAT眼圧の上昇がみられた場合は、真の眼圧上昇に加えて、眼瞼圧迫による測定値の過大評価も考慮する⁵)。

湿度と眼圧の関連は、長期評価の補助情報にする

時系列解析では、緑内障群において、測定当日だけでなく過去1~2週間の湿度曝露と眼圧との関連が報告されている。提示資料では、相対湿度61~89%では眼圧低下との関連がみられた一方、極めて高湿度の97~98%では眼圧上昇との関連が示された。湿度と眼圧の関係は単純ではなく、観察された関連から湿度が眼圧を直接変化させると結論づけることはできない。長期的な眼圧推移を評価する際に、季節や環境条件が影響した可能性を検討するための補助情報として扱う¹⁰)。

進行判定は複数の情報を合わせて行う

視野検査とOCTは、それぞれ機能と構造の変化を捉える検査である。結果が食い違う場合も、直ちにどちらかを誤りと決めつけず、検査の信頼性、測定間隔、白内障、PAPなどを確認する。単回の変化ではなく、再現性のある経時変化か、患者の臨床像と整合するかを見ながら進行を判断したい。

参考文献

  1. Tatham AJ, Medeiros FA. Detecting structural progression in glaucoma using optical coherence tomography. Ophthalmology. 2017;124:S57–S65.
  2. European Glaucoma Society. Terminology and guidelines for glaucoma, 5th edition. Br J Ophthalmol. 2021;105(Suppl 1):1–169. 本文
  3. Yohannan J, Wang J, Brown J, et al. Evidence-based criteria for assessment of visual field reliability. Ophthalmology. 2017;124:1612–1620. PubMed
  4. Hood DC, Melchior B, Tsamis E, et al. Did the OCT show progression since the last visit? J Glaucoma. 2021;30:e134–e145.
  5. Tanito M, Ishida A, Ichioka S, et al. Proposal of a simple grading system integrating cosmetic and tonometric aspects of prostaglandin-associated periorbitopathy. Medicine (Baltimore). 2021;100:e26874. PubMed
  6. Kanamori A, Escano MF, Eno A, et al. Evaluation of the effect of aging on retinal nerve fiber layer thickness measured by optical coherence tomography. Ophthalmologica. 2003;217:273–278.
  7. Miki A, Medeiros FA, Weinreb RN, et al. Rates of retinal nerve fiber layer thinning in glaucoma suspect eyes. Ophthalmology. 2014;121:1350–1358. PubMed
  8. Smith SD, Katz J, Quigley HA. Effect of cataract extraction on the results of automated perimetry in glaucoma. Arch Ophthalmol. 1997;115:1515–1519.
  9. Hood DC, Raza AS, de Moraes CGV, et al. Glaucomatous damage of the macula. Prog Retin Eye Res. 2013;32:1–21. PubMed
  10. Yoshida Y, Fujino Y, Michihata N, et al. Effects of relative humidity on intraocular pressure using a time-series analysis. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2026. PubMed
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