以前にディープラーニングの記事をいくつか出しました。
という方はこちらの記事をご覧いただき、思い出してくださいね(笑)最新技術がどう目の病気と絡んでくるかについてお分かりになるかと思います。
さて、今回の記事はその続きです。今回のテーマは『最新技術と目の病気~ドライアイ編~』です。では、早速見ていきましょう。
ドライアイとは
ドライアイは涙の量が不足したり、涙の質が悪くなると涙の層にムラができてしまいます。ときに、目の表面に傷(点状角膜表層炎)を伴うことがあります。現在、日本には約800~2,200万人ものドライアイの患者さんがいると言われています。さらに、オフィスワーカーでは3人に1人がドライアイという報告もあります。
このように、ドライアイは花粉症と同じように”よくある病気”になっています。さらに、スマホやパソコンなどの普及により、その患者さんは増加傾向にあります。それに伴い、ドライアイの診断基準は2016年に改訂され、自覚症状とBUTが5秒以下という所見で診断確定できるようになりました。
ドライアイの診断基準
1と2 の両者を有するものをドライアイとする
1.眼不快感,視機能異常などの自覚症状
2.涙液層破壊時間(BUT)が 5 秒以下
この診断基準の改訂によって、ドライアイの診断確定は容易になり、AIなどの最新技術の研究がしやすくなりました。そこで、この記事ではドライアイと最新技術についての論文を紹介していきたいと思います。
診断率は8割超え⁉︎
今回紹介する論文は2018年に元智大学のTai-Yuan Suらが発表した論文で、タイトルは『Tear Film Break-Up Time Measurement Using Deep Convolutional Neural Networks for Screening Dry Eye Disease』です。CNNという機械学習を用いて、ドライアイの診断に必要なBUTを測定しています。
実際の結果を引用すると
CNN-BUT was significantly lower in dry eye patients (p <;0.05). The correlation between CNN-BUT and FTBUT was also significant (r =0.9; p <;0.05). Using 5 s as the cutoff value, the CNN-BUT offered acceptable sensitivity and specificity to screen dry eye patients (0.83 and 0.95, respectively).
となり、日常診療と同じ、5秒をカットオフ値にすると感度83%、特異度95%となりました。かなりの確率でドライアイを診断することができるようです。しかし、この研究は対象となった患者さんの数が極めて少なく、全80名の参加者のうち、50名を機械学習のために使いました。
実際には残りの30名(うちドライアイ患者は24名)で実験して、上記の結果が得られています。今後データが蓄積されてくれば、この診断率は変化してくると思います。とはいえ、このように高率で診断できることは非常に有用だと思います。
おわりに
この診断率を高いあるいは低いと思われる方、様々だと思います。
そんな眼科医は少なくないでしょう。僕はそうは思いません。というのも、冒頭で述べたように、ドライアイの患者さんは研究によっては2200万人程度、オフィスワーカーに至っては3人に1人がドライアイだと言われています。
これらすべての患者さんが眼科に来てしまっては、例え数分で終わる診察であっても塵も積って山となってしまいます。もちろん、重症のドライアイの方もいらっしゃいますが、そういったばかりではありません。単に、
そういう方にとって非常に有用な技術だと思います。アプリでこの技術が応用されれば面白いかもしれませんね。スマホで診断して、薬をAmazonで処方が家に届く時代もそう遠くないかもしれませんね。それでは記事はこのくらいにして、また次の記事でお会いしましょう!
参考文献
IEEE Sensors Journal ( Volume: 18 , Issue: 16 , Aug.15, 15 2018 )