僕のブログでは『ドライアイとタバコとの意外な関係』など、タバコが目に与える影響を紹介してきました。今回はタバコと緑内障の関係について説明しています。
今日紹介する論文は2008年にオタゴ大学のEdwards Richardらが発表した論文で、タイトルは『Cigarette Smoking and Primary Open Angle Glaucoma: A Systematic Review』です。
この論文は緑内障の中でも原発開放隅角緑内障とタバコの関係を見ていますが、11個の論文をメタ分析(複数の分析をさらにまとめた信頼度が極めて高い分析)していますのでかなり信頼度は高いです。
原発開放隅角緑内障(POAG)とは
研究を見ていく前に、簡単に原発開放隅角緑内障(POAG)について触れておきたいと思います。POAGは
- 隅角検査で正常隅角
- 眼圧≧22mmHg
- 視神経乳頭の緑内障性変化とそれに相当する視野欠損あり
これらを満たすものです。また、POAGの頻度は多治見スタディによれば0.3%、久米島スタディでは0.7%とされています。家族歴もしばしばみられ、遺伝的な影響もあると考えられています。詳しくは『原発開放隅角緑内障』をご覧ください。
論文の内容
それでは論文の内容に入りましょう。結果は、
There was a significant positive association between smoking and POAG in only 2 of the case-control studies (adjusted odds ratio 2.9 and 10.8). There was no evidence of a dose-response relationship with smoking or of reversibility of effect in the studies where this was assessed.
11個の論文から2つだけしかPOAGとタバコとの相関を示せているものはありませんでした。つまり、タバコは開放隅角緑内障を悪くするとは言えないことになります。
しかし、「いつもタバコは目に悪いんだ!」と非難しているのは「バイアスがかかっているからじゃないか?」と思われると嫌なので、きちんとこういう論文も紹介していきます。
とはいえ、タバコは白内障やドライアイなどの症状を悪化させると言われています。『ドライアイとタバコとの意外な関係』は『タバコと白内障の意外な関係』ではその影響を具体的に説明しています。これらの記事も併せてご覧ください。
論文の結論
- タバコと開放隅角緑内障の因果関係は示せない
- とはいえ、タバコは他の眼科疾患の悪化・原因となる
参考文献
Journal of Glaucoma: October-November 2008 – Volume 17 – Issue 7 – p 558-566