細菌性結膜炎とは
細菌性結膜炎は細菌感染が原因で生じる結膜炎で、小児と高齢者の発症が多いとされる。
細菌性結膜炎の原因
- 新生児・乳児:先天性鼻涙管閉塞による涙嚢炎から結膜炎を併発することが多く、連鎖球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が検出される。
- 乳幼児:インフルエンザ杆菌、肺炎球菌、モラクセラ菌など鼻咽頭に常在する菌が多い。
- 学童~成人:ブドウ球菌が多い。
- 高齢者:ブドウ球菌に加え、肺炎球菌、インフルエンザ杆菌による結膜炎が多い。
1.ブドウ球菌性結膜炎
結膜炎を起こすのは黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が知られている。黄色ブドウ球菌は強毒菌であるため、多種多様な化膿性炎症を起こし、毒素による中毒症を起こすこともある。
2.コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)性結膜炎
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(以下CNS)は結膜や皮膚、鼻腔などにいる常在菌である。
3.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による結膜炎
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)は皮膚や眼表面にいる常在菌である。高齢者や易感染性患者などにみられていたが、健常人でも起こる市中型MRSAが広がってきている。
4.肺炎球菌性結膜炎
乳幼児から学度期に多い。冬期に多い。肺炎球菌が持つ莢膜の特異的可溶性物質により、80以上に型分けされ、Ⅲ型が最も毒力が強い。肺炎球菌は口腔や鼻咽頭に常在する。眼脂は粘液膿性である。
5.レンサ球菌性結膜炎
臨床的にはA群β溶血性レンサ球菌とB群β溶血性レンサ球菌が重要で、S.pyogenesは病原性が強い。
6.腸球菌性結膜炎
腸球菌は弱毒菌だが、日和見感染症や白内障手術後眼内炎の原因として重要である。
7.インフルエンザ菌性結膜炎
冬季に多い。上気道炎を伴って、両眼性にみられる場合が多い。吸血の充血に加えて、小溢血斑(pink eye)を認めることがある。
8.淋菌性結膜炎
9.モラクセラ結膜炎
モラクセラ菌やカタラーリス菌などによって生じる結膜炎である。
a. モラクセラ菌性結膜炎
結膜炎や眼瞼炎などを引き起こすが、特に外眼角の眼瞼皮膚の炎症を伴った眼角眼瞼結膜炎がよく知られている。しかし、類似した所見をブドウ球菌で認め、近年はブドウ球菌の方が増加傾向である。
b. カタラーリス菌性結膜炎
通常は病原性がない。
細菌性結膜炎の症状
1.自覚症状
充血、眼脂(目やに)、流涙、異物感など
・眼脂:膿性眼脂と粘液膿性または粘液性眼脂に大別される。前者は淋菌、ブドウ球菌、モラクセラ菌、後者はブドウ球菌、肺炎球菌、連鎖球菌などが原因として挙げられる。基本は両眼性で、片眼性でも数日でもう片眼に発症することが多い。
2.他覚所見
結膜充血、結膜浮腫、結膜腫脹が主体で、眼瞼炎を伴うこともある。
細菌性結膜炎の診断
上記症状に加え、原因菌確定のため塗抹検査や細菌培養検査を行う。
細菌性結膜炎の治療
- 乳幼児や易感染性患者は結膜炎+眼瞼腫脹or発熱あるなら抗菌薬内服を行う。
- 小児にはインフルエンザ杆菌、連鎖球菌、肺炎球菌、モラクセラ菌を想定して、セフェム系・マクロライド系点眼薬orトスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液を選択する。
- 成人にはブドウ球菌を想定してフルオロキノロン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬を選択する。ただし、ブドウ球菌の中にはペニシリナーゼ産生株が存在するため、ペニシリンに耐性を示すことが多い。
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による結膜炎は、多くの薬剤に耐性を示すが、ニューキノロン系、テトラサイクリン系が有効であることが多い。バンコマイシン眼軟膏はMRSA感染を培養で確認してから使用する。ミノマイシン®(0.5%)やハベカシン®(アルベカシン)(0.5%)は感受性を有することが多いが、注射薬から調整し点眼薬として使用する。
※淋菌性結膜炎、MRSAでは内服などによる全身投与が必要な場合がある。
※肺炎球菌はアミノグリコシド系抗菌薬に耐性がある。また、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)が出てきているため、その場合にはセフェム系抗菌薬やフルオロキノロン系抗菌薬を用いる。
※レンサ球菌はアミノグリコシド系抗菌薬は効かない。
※バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)も報告されている。
※インフルエンザ菌はβラクタム系抗菌薬に耐性菌が出てきている。
※カタラーリス菌はβラクタマーゼ産生株が多いため、フルオロキノロン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬が推奨されている。
処方例
- 通常の細菌性結膜炎:ガチフロ1日4回
- 淋菌性結膜炎:ベストロン®1時間ごと、セフトリアキソンナトリウム1日1回1g点滴静注
- MRSA結膜炎:ミノマイシン®錠(50㎎)2錠分2、バンコマイシン眼軟膏1%1日4回点入を2週間続行し、結膜培養のMRSA陰性化を最低3回確認する。クロラムフェニコール点眼を使うこともある。
参考文献
- 細隙灯顕微鏡用語活用アトラス事典
- 今日の眼疾患治療指針第3版
- 眼科学第2版
- 眼科と薬剤(2019年9月臨時増刊号)