淋菌性結膜炎とは
淋菌性結膜炎は淋菌が原因の結膜炎で、新生児または成人に好発する。新生児の淋菌性結膜炎は産道感染が原因で生後7日以内に発症する。一方、成人の淋菌性結膜炎の潜伏期は48時間で、性的接触あるいは手指などを介して感染する。また、淋菌は感染症法にて5類感染症であり、定点報告対象である。
淋菌性結膜炎の所見
1.自覚症状および細隙灯顕微鏡所見
淋菌性結膜炎は大量のクリーム状の膿性眼脂を特徴とするため、膿漏眼または化膿性結膜炎と呼ばれる。瞼結膜の充血および腫脹、眼痛、流涙が高度となり、下眼瞼結膜がビロード状乳頭増殖様の所見を呈することがある。潜伏期間は半日から2日程度である。また、適切な治療を行わないと、短期間で角膜潰瘍および穿孔をきたすことがある。
2.グラム染色
淋菌はグラム染色でグラム陰性双球菌として観察される。
3.その他の全身症状
男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎、膣炎、尿道炎を引き起こす。感染した女性の1/3が無症状であり、クラミジアとの混合感染例も少なくない。
淋菌性結膜炎の診断
特徴的な臨床像およびグラム染色像から診断されることが多い。また、眼脂のPCR法も有用である。
淋菌性結膜炎の治療
パートナーの感染の有無も重要であるため、性交歴の聴取は重要となる。
治療は局所および全身投与の併用を行う。ペニシリン以外に、キノロンおよびテトラサイクリンにおいても約7割が耐性化している。そのため、セフトリアキソンとスペクチノマイシンの2剤が推奨されている。しかし、セフトリアキソンの抵抗性株出現の報告もあり、今後の動向に注意する必要がある。
また、眼局所治療として、セフメノキシム(ベストロン®)点眼のほか、アミノグリコシド、マクロライドなども有効とされる。これらと同時に菌体や結膜壊死物質の除去のため生食による頻回の洗眼も有用とされている。
処方例
1)成人局所投与
治療はフルオロキノロン系は無効なので、セフトリアキソン点眼を0.5%-1.0%に自家調整か、0.5%セフメノキシム点眼を30-1時間毎に用いる。充血や眼脂は治療開始後2-3日で著明に改善するが、症状を見ながら、1-2週間程度投与する。
2)成人全身投与
治療はスペクチノマイシン2gを筋注単回投与、セフトリアキソン1g点滴静注単回投与を行う。
3)新生児
セフトリアキソン1回25-50mg/kg/日、点滴静注または筋注単回投与を行う。点眼液は不要とされる。注意点は、薬剤成分が肺・腎で結晶化するため、Caを含有する注射剤または輸液と同時に投与しないことである。
参考文献
- 細隙灯顕微鏡用語活用アトラス事典
- 眼科学第2版
- あたらしい眼科37(4):453-454,2020
- 眼科と薬剤(2019年9月臨時増刊号)
- 眼科抗菌薬適正使用マニュアル