目に関するブログ

最新技術と目の病気〜糖尿病網膜症編〜

おはようございます、doctorKです。昨日から最新技術と目の病気についての記事を書いています(昨日の記事は『最新技術と目の病気〜加齢黄斑変性症編〜』をご覧ください。)が、今日もその続きです。

「ディープラーニングという技術は糖尿病網膜症という糖尿病の合併症の早期発見にも有用かもしれない」そんな論文を今日はご紹介します。

僕のブログではこのように日常生活で役に立つ、目に関する情報を専門書や論文を交えて分かりやすく説明しています。

論文を読む前の基本事項~AUCと感度・特異度~

今回、この論文を読むために「AUC(area under the curve)」「感度と特異度」という統計用語が分かっていた方が良いでしょう。まずはAUCです。

詳しく書くと(よく分からない人は下の赤字だけ覚えてください)、まずROC曲線という曲線を描きます。描き方はFalse Positive Rate(偽陽性率)を横軸にTrue Positive Rate(真陽性率)を縦軸に置いてプロットします。

そして、そのROC曲線とx軸y軸で囲まれた部分をAUCといいます。このAUCは0〜1の値を取りますが、このAUCの値が1に近ければ近いほど性能が高い検査と言えます。

次に、感度と特異度ですが、細かく書くと新たな記事がもう1つ必要なくらいになるので要点をまとめます。感度が高いと除外診断(rule out)に有用であり、特異度が高いと確定診断に有用であるとされています。除外診断は「その病気ではなさそう」、確定診断はその逆で「その病気だろう」という予想が立てられます。

感度と特異度はどちらも0〜100%までの値で表現され、100%に近いほど検査としてより有用となります。

論文の内容

AUCが分かった?ところで、早速論文を見ていきましょう。今日紹介する論文は香港中華大学のDaniel Shu Wei Tingらが2017年に発表した論文で、タイトルは『Development and Validation of a Deep Learning System for Diabetic Retinopathy and Related Eye Diseases Using Retinal Images From Multiethnic Populations With Diabetes(糖尿病を罹患した多民族の住民から得られた網膜画像を使って、糖尿病網膜症と関連する眼疾患に対するディープラーニングの進展と検証)』です。

ディープラーニングは人間がこれまでに培ってきたデータをコンピュータに学習させる方法ですが、494661枚の網膜画像(画像の内訳は糖尿病網膜症、緑内障疑い、AMD)を利用してディープラーニングしていきました。その結果は

The AUC of the DLS for referable diabetic retinopathy was 0.936 (95% CI, 0.925-0.943), sensitivity was 90.5% (95% CI, 87.3%-93.0%), and specificity was 91.6% (95% CI, 91.0%-92.2%). For vision-threatening diabetic retinopathy, AUC was 0.958 (95% CI, 0.956-0.961), sensitivity was 100% (95% CI, 94.1%-100.0%), and specificity was 91.1% (95% CI, 90.7%-91.4%). For possible glaucoma, AUC was 0.942 (95% CI, 0.929-0.954), sensitivity was 96.4% (95% CI, 81.7%-99.9%), and specificity was 87.2% (95% CI, 86.8%-87.5%). For AMD, AUC was 0.931 (95% CI, 0.928-0.935), sensitivity was 93.2% (95% CI, 91.1%-99.8%), and specificity was 88.7% (95% CI, 88.3%-89.0%).

結果をまとめると下記のようになります。

  • 中等度以上の糖尿病網膜症のAUCは0.936で、感度は90.5%、特異度は91.6%
  • 失明リスクのある糖尿病網膜症のAUCは0.958で、感度感度は100%、特異度は91.1%
  • 緑内障の疑いのAUCは0.942で、感度は96.4%、特異度は87.2%
  • AMDのAUCは0.931で、感度は93.2%、特異度は88.7%

どのAUCも0.93を超えており非常に有用な検査だと言えるでしょう。糖尿病網膜症は定期的な受診が必要ですが、この検査が検診の代わりになれば患者さんへの負担も少なくなるかもしれません。

このように現在は最新技術を診断に役立てる取り組みが多数されており、加齢黄斑変性症もその1つです。『最新技術と目の病気〜加齢黄斑変性症編〜』で詳細を書いていますので、ぜひこちらの記事も併せてご覧ください。

それではまた次回の記事でお会いしましょう!

参考文献

Jama 318 (22), 2211-2223, 2017

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