鼻性視神経症とは
鼻性視神経症は副鼻腔疾患に合併した視神経疾患の総称で、後部副鼻腔(後篩骨洞や蝶形骨洞は解剖学的に視神経に近い)の炎症波及によるもの、副鼻腔嚢胞や副鼻腔腫瘍(悪性が多い)による機械的な圧迫によるものが含まれる。
副鼻腔炎から波及した視神経症では、真菌によるもの(アスペルギルス(最多)とムコール)が重要である。この真菌による副鼻腔炎(副鼻腔真菌症)は、非浸潤型と浸潤型があり、後者の浸潤型は眼窩壁や頭蓋底の骨を破壊して発育し、悪性腫瘍に類似する。浸潤型は生命予後不良で、死亡率は94%という報告もある。主に上顎洞で、次いで蝶形骨洞が多いとされる。
また、副鼻腔手術後10~20年後に副鼻腔嚢胞(上顎洞が最も多い)が形成され、それが原因で鼻性視神経症となることも多い。ゆえに、視神経症を疑ったら、副鼻腔手術歴(80-90%)を問診する必要がある。他にも、原発性(10-20%)、外傷性(数%)と続く。
鼻性視神経症の症状
片眼性、徐々に進行する視力低下、中心暗点を主訴とする。無痛性の症例が多いが、真菌による浸潤や蝶形骨洞周囲の病変では強い痛みを有し、数日で光覚を消失することもある。眼窩先端部に病変が及んでいれば、眼球運動制限を伴う。
鼻性視神経症の診断
片眼性の視神経疾患のため病眼でRAPDは陽性、中心フリッカー値低下を示す。視神経は正常または萎縮しているが、ときに腫脹を認めることもある。確定診断には画像診断、特に眼窩部のCT(必ず冠状断も)・MRIで病変を確認する必要がある。MRIも有用だが、骨を描出する点ではCTが優れる。
鼻性視神経症の治療
原因となる副鼻腔疾患に対して根治治療(副鼻腔手術や眼窩減圧手術)を行う。副鼻腔嚢胞に対しては、緊急で耳鼻科医に副鼻腔開放術を依頼する。真菌性浸潤性視神経症の治療は確立されていないが、抗真菌薬の全身投与を行うことが多い。術後のステロイドパルス療法は視力予後に有意差はないとの報告がある。
鼻性視神経症の予後
副鼻腔炎例では視力障害が生じてから2日以内または光覚消失から24時間以内、嚢胞例では視力障害が生じてから2週間以内に手術を行えば視力が改善する可能性が高い。2カ月以内でも改善の余地はある。
参考文献
- 今日の眼疾患治療指針第3版
- 眼科学第2版
- 第126回日本眼科学会総会
- 眼科 2021年12月臨時増刊号 63巻13号 特集 覚えておきたい神経眼科疾患
- Impact of treatment time on the survival of patients suffering from invasive fungal rhinosinusitis
- Prognostic Factors for Postoperative Visual Acuity in Patients with Rhinogenic Optic Neuropathy