目の病気

眼内レンズ度数計算

眼内レンズ度数計算とは

白内障手術で移植する眼内レンズ度数を計算する。

眼軸長測定機器に眼内レンズ度数の計算式が内蔵されており、術後目標屈折に応じた眼内レンズ度数が表示されるため、計算式を目にする機会は少ない。

計算式には大きく分けて理論式と回帰式の2種類がある。

理論式について

理論式は現在第4世代まである。内訳は下記に示す。

  • 第1世代理論式:Fyodorov(最初のの計算式、模型眼での幾何光学による式), Binkhorst, Colenbranderの式
  • 第2世代理論式:眼軸長から前房深度を計算する。Hoffer式、BinkhorstⅡ式がある。
  • 第3世代理論式:前房深度を角膜径とK値から計算する。Holladay1式、SRK-T式がある。
  • 第4世代理論式:術後前房深度を眼軸長、K値、その他の因子(年齢、角膜径、水晶体厚、術前前房深度、術前屈折度数)から算出する。Holladay2式がある。

回帰式について

Sanders、Retzlaff、Kraffらは眼軸長と角膜曲率半径、移植した眼内レンズパワーから術後の屈折度数を得る回帰式SRK式を作った。この式により平均的な眼軸長での精度が向上した。SRK式にはA定数という固定値を用いるが、これにより前房深度などによる誤差の要因が補正された。

しかし、SRK式は非線形系である眼内レンズ度数を一次方程式で計算するため、短・長眼軸の精度が低くなる

SRKⅡ式は眼軸長に応じて定数が補正されるので、SRK式と比較して短・長眼軸での精度が向上した。

計算式の使い分け

第3世代以降の計算式はすでに装置に搭載されていることが多い。眼軸長により精度が異なるため、眼軸長である程度使い分けると良い。

標準的な眼軸長ではどの計算式も精度にそれほど差はでないが、眼軸長に応じて下記のように精度が異なる。

  • 短眼軸眼(22.0㎜以下):HofferQ式とHolladay2式の精度が高い。特に、20㎜以下の場合にはHolladay2式が最も優れているとされる。
  • 中程度長眼軸眼(24.5㎜~26.0㎜):Holladay1式の精度が高い。
  • 長眼軸眼(26.0㎜以上):SRK-T式、Holladay1・2式の精度が高い。

検査結果の誤差の原因

あくまで計算式であるため下記が原因で誤差を生じうる。

  • 測定誤差(眼軸長、角膜曲率半径)
  • 不適当な式を使用
  • データの誤入力
  • 屈折矯正手術の既往(LASIKなど)

長眼軸・短眼軸への適応

  • 従来式は長眼軸眼・短眼軸眼での予測精度が劣るが、新時代の式では、眼軸長の影響を受けにくく、高い精度が示されている。
  • 長眼軸眼:Kane式の有用性が報告されている。
  • 短眼軸眼:有意な優位性を示す計算式はまだない。理由としては、IOL度数が大きく、術後IOL位置予測が困難であるためとされる。

LASIK術後眼への適応

LASIK術後眼では角膜形状が変化するため、通常のIOL計算式を使うと屈折誤差が生じやすい。EVO 2.0、Pearl DGS、Hoffer QST など新時代の計算式がLASIK用に修正され、良好な成績を示すようになっている。Haigis-L、Shammas PL(従来式)と比較すると、Barrett True K NH、EVO 2.0、Pearl DGS など新時代の計算式の方が予測精度が高いと報告されている。SS-OCT光源搭載のIOLMaster700を用いた大規模検証では、術後屈折誤差±1D以内の症例が90%に達するという高精度が示され、正常眼に匹敵する水準に近づいている。

近視LASIK術後眼

  • 通常のIOL度数計算式を使うと遠視化する傾向。
  • 推奨される方法:ASCRS web-calculator(Barrett True K No History式、Haigis-L式など)、あるいはWeb上で複数の計算式を走らせ、その平均値を利用する。

遠視LASIK術後眼

  • 通常の計算式を使うと近視化してしまう。
  • ASCRSが提供する遠視LASIK専用式を利用する必要がある。

放射状角膜切開術(radial keratotomy:RK)眼への適応

  • 日内変動が大きく、朝は遠視化・夜は近視化しやすい。
  • 角膜屈折力測定の時間・再現性が重要であり、複数回・別日に測定して安定していることを確認する必要がある。
  • ASCRSのRK専用IOL計算式を利用する。
  • ただし、切開線の交差により角膜屈折力が大きく変化するため、手術計画に十分な配慮が必要で、患者には予測誤差のリスクを丁寧に説明すべき。

円錐角膜眼への適応

  • 角膜形状異常による眼軸長・角膜屈折力の測定誤差、IOL位置予測誤差により、従来のIOL計算では術後屈折誤差が大きく、遠視化しやすい。
  • 新しい計算式:Kane Keratoconus FormulaとBarrett True-K Formula for Keratoconus
  • これら計算式は従来法より良好な予測精度が報告されている。ただし、術後屈折誤差が1D以内の割合が70%前後である

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針 第3版
  2. Efficacy of segmented axial length and artificial intelligence approaches to intraocular lens power calculation in short eyes
  3. Comparison of Legacy and New No-History IOL Power Calculation Formulas in Postmyopic Laser Vision Correction Eyes
  4. Accuracy of Intraocular Lens Power Formulas Modified for Patients with Keratoconus
  5. Accuracy of intraocular lens calculations in eyes with keratoconus
  6. Accuracy of Artificial Intelligence Formulas and Axial Length Adjustments for Highly Myopic Eyes

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