レーザー周辺虹彩切開術(LI)
LIとは
適応症例は下記の通りであり、その目的は前後房間の圧較差をなくすことである。
- 原発閉塞隅角症(PAC)あるいはその疑い
- 続発閉塞隅角緑内障
- 色素緑内障
LIの実際の方法
LI前処置
レーザー照射1時間前にアプラクロニジンを点眼し、その後2%ピロカルピンを5分ごとに4回点眼する。レーザー照射部位は下記の部位を選んでいる。
- 虹彩小窩のある虹彩厚が薄い部位
- 老人環など角膜混濁が存在しない部位
- 10-11時あるいは1-2時の部位(12時の部位は照射中にレンズに気泡が入ることが多いので避ける)
LI手順
アルゴンレーザー(Abrahamレンズ、Wiseレンズなど)で第1,2段階、YAGレーザーで第3段階を行うことが多い。
- 第1段階:虹彩を菲薄化させる。(レーザー設定例:200μm0.2sec200mWを5-6発)ただし、照射範囲を拡大しすぎない。
- 第2段階:全体的に虹彩が菲薄下領域の1点を穿孔させる。(レーザー設定例:50μm0.02sec1000mWを20-30発)症者数をできるだけ少なくし、将来的に水疱性角膜症にならないよう注意する。
- 第3段階:虹彩穿孔部位をめがけて、YAGレーザーを照射する。(レーザー設定例:3-10mJを2-3発)
LI後
LI後はアプラクロニジン、ステロイド剤(消炎)、トロピカミド配合薬(虹彩癒着予防)を点眼し、ステロイド点眼のみ数日間使用する。ただし、APAC症例にはトロピカミド配合薬は投与しない。
※APAC症例は角膜上皮浮腫を伴うため、処置前に眼圧下降を図る必要がある。眼圧下降できれば浮腫は軽減し、透見性が上昇する。この際、瞳孔が正円であれば良いが、瞳孔不整であると周辺虹彩前癒着(PAS)が部分的に始まっている可能性がある。また、透見性が上昇しても、スペキュラマイクロスコープで角膜内皮細胞が減少していたり、滴状角膜があればLIは施行せず、周辺虹彩切除術等を考慮する。もちろん、透見性が不良であれば、無理にLIすることも避けた方が良い。
原発閉塞隅角症疑いに予防的LIは有効か?
2019年のZAPトライアルでは、50-70歳において無治療の原発閉塞隅角症疑いが原発閉塞隅角症に進展する可能性は年間でLI群で0.4%、無治療群で0.8%であった。このことから、原発閉塞隅角症に対してLIは推奨はできないとされた。
レーザー隅角形成術(LGP)
LGPとは
適応症例は下記の通りである。
- プラトー虹彩
- レーザー線維柱帯形成術を施行する前処置としてのPACを伴うPOAG症例
- 隅角癒着解離術後の再癒着防止目的
LGPの実際の方法
LGP前後
LGP前後の処置はLPIと同様である。
LGP手順
成書によって条件は異なるが、アルゴンレーザー(設定:500μm0.2sec200mW)にて、半周25発を目安に、全周で50発施行する。熱凝固により処置後に凝固斑は拡大するので、1-2個分間隔を空けて虹彩周辺部に照射する。
参考文献
- あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020
- Laser peripheral iridotomy for the prevention of angle closure: a single-centre, randomised controlled trial