眼科で行う治療

ボツリヌス治療

ボツリヌス治療についての記事

ボツリヌス治療の概要

2015年6月にボツリヌス毒素が12歳以上の全ての斜視に対して保険適用となった。外眼筋にA型ボツリヌス毒素(BTX-A)を注射すると筋の収縮力を弱め、斜視手術における筋の弱化・後転術に似た効果を得ることができる。

BTX-Aは運動神経末端でACh放出を阻害し、神経筋伝達を阻害することで、筋が麻痺し弱化する。効果は数日後から明らかになり3~4カ月間持続する。なお、後天性の斜視に対しては、反復注射や手術なくして治癒に至る例が50〜60%あると報告されている。

ボツリヌス治療良い適用

  • 後天内斜視:内直筋へ注射
  • 甲状腺眼症:ステロイドパルス治療中であってもBTX-Aは可能だが、不活動期の甲状腺眼症に対しては注射単独の効果は弱く、反復注射が必要になることが多い。
  • 麻痺性斜視(外転神経麻痺)の急性期:1回の注射で済むことが多く、複視の早期改善が期待できる。
  • 手術のシミュレーション:術後に背理性複視
  • 大角度の斜視に対する後転術との併用:大斜視角の共同性斜視や甲状腺眼症、麻痺性斜視などと併用する。

逆に、間欠性外斜視は元に戻ってしまうためBTX-Aは適さない。

手術療法は最低6カ月間の症状の固定を待つ必要があるため、BTX-Aは急性期に介入可能である。

ボツリヌス治療のメリット・デメリット

なお、筋線維の細い外眼筋では注射によって銅部位の萎縮や線維化が生じるという報告もあり、投与を繰り返すと眼位に残存効果が認められるようになる。

ボツリヌス治療の手技

BTX-Aは生理食塩液で溶解する。液量が多いほど遠くまで広がり眼瞼下垂や上下斜視の副作用が出やすくなる。0.05mlで投与したい単位数となるように50単位製剤を溶解する。経結膜的に行う際は筋電図を用いる。筋電図の波形と音で反応を確認し、薬液を注入する。斜視手術と併用する際は手術前に直視下で注射を行う。

内斜視には内直筋、外斜視には外直筋、上下斜視には下直筋、外方回旋斜視には下斜筋への注射を行う。上直筋への注射は眼瞼下垂が必発であるため避けた方が良い。上斜筋への注射も解剖学上困難である。投与量は斜視角に応じて決定し、初回は1.25〜5.0単位とされているが、一筋あたりの投与量が多く合併症の発現率も高くなる。

BTX-A療法の注意点として、効果には個人差があり、十分な矯正が得られない症例もある。その場合、2回目は初回から1か月後に追加可能である(3回目以降は3か月以上間隔をあける必要がある)

合併症として一過性の眼瞼下垂上斜視が挙げられ、薬効が強く発現した結果、眼球運動障害や過矯正が起こることもある。

参考文献

  1. あたらしい眼科Vol37,8,2020
  2. Histopathological changes of fibrosis in human extra-ocular muscle caused by botulinum toxin A
  3. 斜視に対するA型ボツリヌス毒素療法の治療成績

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