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眼窩先端部症候群、上眼窩裂症候群、海綿静脈洞症候群とは
眼窩内と頭蓋内は、眼窩先端部から視束管、上眼窩裂、下眼窩裂を介して交通している。視神経と眼動脈は視束管を通って頭蓋内へ交通している。動眼神経、滑車神経、三叉神経第1枝、外転神経、眼交感神経、上眼動脈は上眼窩裂を通り海綿静脈洞へ交通している。三叉神経第2枝と下眼静脈は下眼窩裂を通り翼口蓋窩へ交通している。
眼窩先端部近傍の障害によって、
- 全眼球運動障害
- 三叉神経第1枝領域の知覚麻痺 or 刺激症状(眼窩深部痛や頭痛)
- 視神経障害
①+②を認めるものを上眼窩裂症候群(海綿静脈洞症候群)、①+②+③を認めるものを眼窩先端部症候群という。
眼窩先端部症候群、上眼窩裂症候群、海綿静脈洞症候群の原因
- 眼窩先端部近傍 or 海綿静脈洞における炎症(最多)(Tolosa-Hunt症候群、眼窩炎性偽腫瘍、Wegener肉芽腫、サルコイドーシス、結核、肥厚性髄膜炎、頭蓋底髄膜炎、副鼻腔炎、副鼻腔真菌症など)
- 腫瘍(副鼻腔腫瘍、眼窩腫瘍、頭蓋底腫瘍、悪性リンパ腫、転移性腫瘍など)
- 血管性(内頸動脈瘤、内頸動脈海綿静脈洞瘻)
- 外傷
etc
眼窩先端部症候群、上眼窩裂症候群、海綿静脈洞症候群の症状
- 複視(全眼球運動障害)
- 瞳孔不同(動眼神経麻痺)
- 眼瞼下垂
- 眼痛、頭痛(三叉神経第1枝領域の知覚障害 or 麻痺)
- 視力低下、視野障害(視神経麻痺)
- 充血、眼球突出(海綿静脈洞への静脈還流障害)
眼窩先端部症候群、上眼窩裂症候群、海綿静脈洞症候群の診断
- 詳細な問診(原因に関与する内容)
- 角膜知覚や前頭部知覚検査(三叉神経障害の診断)
- 視力検査、視野検査、中心フリッカー値、RAPD
- 血液検査(末梢血、CRP、自己抗体、β-Dグルカン、ACEなど)
- CT
- MRI(眼窩内は脂肪抑制ないしSTIR):患側の眼窩先端部付近にT1で低信号、造影で増強効果を認める。
- MRA
- 海綿静脈洞や頭蓋底に病変があれば髄液検査も行う。
CTで骨破壊像、T2強調画像の低信号およびT1強調画像Gd造影効果を示す場合は真菌感染症を考慮する。
眼窩先端部症候群、上眼窩裂症候群、海綿静脈洞症候群の治療
- 原因に応じた治療
- 眼窩炎性偽腫瘍やTolosa-Hunt症候群ではステロイド療法が有効とされる。真菌感染や悪性リンパ腫などでは、一時的にはステロイドで沈静化するが減量過程において必ず再燃し、結果的により悪化させて予後を悪くすることもある。
参考文献
- 今日の眼疾患治療指針第3版
- 眼科 2021年12月臨時増刊号 63巻13号 特集 覚えておきたい神経眼科疾患
- Hypertrophic pachymeningitis: significance of myeloperoxidase anti-neutrophil cytoplasmic antibody
- A nationwide survey of hypertrophic pachymeningitis in Japan
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