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急性散在性脳脊髄炎(ADEM)とは
ウイルス感染やワクチン接種後(1-3週間後)に急性発症する、自己免疫機序が関与する中枢神経系の炎症性脱髄疾患である。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の疫学
季節性があり冬と春に好発する。小児ADEMの発症率は10万人あたり0.4人で、男子に多い。平均発症年齢は5.5歳と報告されている。両眼性に多い。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の症状
感冒様症状(発熱(68%)、頭痛(27%)、悪心、嘔吐(30%))で発症することが多い。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の検査所見
血液検査
白血球増多、血沈亢進、CRPの上昇はあっても軽度である。小児のADEMの約60%で抗MOG抗体陽性で、臨床的に再発が多い。
髄液所見
単核球優位の細胞増多や蛋白増加がしばしば見られる。ミエリン塩基性蛋白(MBP)の増加が見られることが多い。
画像所見
T1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号となる。典型例では、T2強調画像とFLAIR画像で皮質下から深部白質にかけて境界不明瞭な高信号域が多発する。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の治療と予後
標準化された治療法は存在しないが、急性期には一般的にステロイド大量投与が行われている。具体的には、ステロイドパルス療法の後、後療法として経口でプレドニゾロン(1mg/lg/day)を投与し、4-6週かけて漸減する。ステロイド無効例では免疫グロブリン大量静注、血漿交換療法、シクロホスファミドが有効であるという報告もある。
ADEMは一般的に予後良好で、発症1-6カ月で完全回復するが、軽微な神経学的後遺症を残すこともある。重症型もあり、その場合は5%が死亡するとされている。
参考文献
- 眼科 2021年12月臨時増刊号 63巻13号 特集 覚えておきたい神経眼科疾患
- Acute disseminated encephalomyelitis, multiphasic disseminated encephalomyelitis and multiple sclerosis in children
- A nationwide survey of pediatric acquired demyelinating syndromes in Japan
- Acute disseminated encephalomyelitis: clinical and pathogenesis features
- Acute disseminated encephalomyelitis: an update
- Childhood acute disseminated encephalomyelitis: the role of brain and spinal cord MRI
- Plasmapheresis in fulminant acute disseminated encephalomyelitis
- Effectiveness of intravenous immunoglobulin treatment in adult patients with steroid-resistant monophasic or recurrent acute disseminated encephalomyelitis
- Prognostic relevance of MOG antibodies in children with an acquired demyelinating syndrome
- Acute disseminated encephalomyelitis: a follow-up study of 40 adult patients
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