はじめに
近視矯正のためのICL(Implantable Collamer Lens)手術は、視力矯正手段として近年注目を集めており、特にV4c ICL(ホールICLなど)はその安全性と有効性が報告されています。
しかし、長期にわたる視力の安定性や安全性に関するデータは限られており、10年以上のフォローアップを伴う研究は稀です。この研究は、V4c ICLの10年間にわたる臨床的なアウトカムを評価し、視力の安定性や術後の眼内の変化に焦点を当てています。
研究に着目する理由
V4cのICLは、多くの研究で短期的な安全性と有効性が示されていますが、長期的な視力結果や眼内変化に関するデータは不十分です。
特に、角膜内皮細胞密度(ECD)やボルト(レンズと虹彩の間の距離)の変化を追跡することは、長期的な手術の安全性を評価する上で非常に重要です。
この研究では、10年にわたるV4c ICLの影響を評価し、術後のリスクを軽減するための指針を提供することを目的としています。
研究に対する見解
この研究の結果、V4c ICLは10年間にわたり安定した視力矯正効果を示し、術後の視力低下はわずか2%に留まりました。
さらに、59%の症例で視力が向上し、安全性指数と有効性指数のいずれも高い水準を維持しました。角膜内皮細胞密度(ECD)やボルトは時間とともに減少しましたが、その減少率は徐々に緩やかになっており、特に術前のECDが低い患者には注意が必要です。
術後10年の追跡期間中、白内障や緑内障、ICLの除去が必要な合併症は一例も報告されませんでした。
臨床への応用
臨床的には、V4c ICL手術は長期的な視力矯正において有望な手段であり、10年間にわたる有効性と安全性が確認されました。
ただし、角膜内皮細胞密度が低い患者においては、術後のフォローアップが特に重要です。定期的なECDの評価を行うことで、手術後のリスクを早期に検出し、適切な対処に役立つでしょう。