中毒性眼疾患

眼科の教科書に載っている、眼に影響が出る薬一覧

眼科

1.β遮断薬点眼液

角膜上皮の創傷治癒遅延、膜安定化作用による角膜知覚低下、涙液減少により点状表層角膜症(SPK)。その他にも、眼瞼炎、接触性皮膚炎などがみられる。

点眼薬であるが、重篤な副作用が生じうる。具体的には、徐脈、不整脈、心不全の増悪などの心血管系に対する抑制作用や、気道・気管支狭窄による喘息・慢性閉塞性呼吸器疾患の増悪がある。

2.非ステロイド系抗炎症薬

点状表層角膜症(SPK)

3.プロスタグランジン製剤

点状表層角膜症(SPK)

4.フェニレフリン

即時型結膜炎

5.アトロピン

眼科では

  • 小児の屈折検査に先立って、調節麻痺を目的に使用する
  • ぶどう膜炎などに対して消炎を期待して使用する

ことがある。作用時間は数日に及ぶ。

眼科的副作用(主作用でもある)

  • 羞明
  • 近見障害
  • 小視症
  • 結膜充血、結膜炎
  • 眼瞼炎

全身の副作用

  • 顔面発赤
  • 口喝
  • 悪心・嘔吐
  • 発熱
  • 発汗減少
  • 頻脈
  • 皮膚乾燥感
  • 興奮、幻覚、錯乱、せん妄、昏睡

禁忌

  • 閉塞隅角緑内障患者(散瞳による眼圧上昇、緑内障発作になりうるため)

眼科点眼薬にはベンザルコニウム塩化物、パラベン類、クロロブタノールなど防腐剤が含まれている。防腐剤は時折毒性を示し、角膜上皮障害をきたすことがある。

点状表層角膜症(SPK)この記事では点状表層角膜症(SPK)について解説しています。点状表層角膜症(SPK)について知りたい方は必見です。...

抗菌薬

1.リネゾリド(ザイボックス®)

視神経症は5-11カ月間、600㎎/日を超える用量で投与する場合に発症する。治療はリネゾリド中止によって徐々に軽快する。ステロイド使用は無効あるいは症状が悪化することもあるので注意する。

2.メトロニダゾール(フラジール®)

視神経症(発症は1週間から1年)

血液内科

1.ブスルファン(マブリン®)

白内障

呼吸器内科

1.イソニアジド

ビタミンB6欠乏を引き起こすことによる視神経萎縮が生じることがある。200-900㎎/日の使用で起こりうる。エタンブトールよりは良好な経過だが、肝障害腎障害があると発症リスクが高いので注意する。

2.エタンブトール

エタンブトール視神経症この記事ではエタンブトール視神経症について解説しています。エタンブトール視神経症について知りたい方はこの記事をご覧ください。...

3.リファブチン

リファブチンによるぶどう膜炎この記事ではリファブチンによるぶどう膜炎について解説しています。リファブチンによるぶどう膜炎について知りたい方は必見です。...

循環器科

1.アミオダロン

(前嚢下)白内障、中等量以上の投与症例では、約半数で瞳孔中央の前嚢下に微細な白~黄色沈着を生じる。渦巻、線状の角膜混濁(ほぼ全例だが、自覚症状を生じる例はほとんどなく、中止により角膜内の沈着物は徐々に減少する)・視神経炎(頻度不明)。男性は女性に比べて3倍発症のリスクがあり、投与期間に依存する。視神経症発症までの期間は平均9カ月であった。薬剤中止後も数カ月は視神経乳頭腫脹など所見が残存することもある。

2.ジギタリス

錐体に存在するNa⁺-K⁺ ATPaseは、杆体細胞のそれに比べてジギタリス感受性が高く、網膜視細胞における細胞外K⁺イオンの取り込みへの影響で錐体機能不全症候群をきたす。

眼症状は95%にあるとされる。症状としては、色視症(物が黄色、緑色に見える)、赤緑や青黄色覚異常、霧視、羞明、中心暗点など錐体機能不全の症状を認める。

また、網膜の異常所見は一般的には見られないが、錐体系ERG(フリッカーERGやフラッシュERG)の異常を認める。その他にも、黄斑浮腫を認める。また、症状の発現は濃度依存性で、ジギタリス中毒の際に生じることが多い。

ジギタリスの中止で、数日から数週で症状は消失することがほとんどだが、症状が残ることもあるとされる。

3.β遮断薬

涙液減少により二次的に角膜上皮障害をきたす。

消化器科

1.インターフェロン

インターフェロン網膜症インターフェロンはウイルス性慢性肝炎、悪性腫瘍に対して使われることがあり、その副作用としてインターフェロン網膜症が知られています。この記事ではそんなインターフェロン網膜症について解説しています。インターフェロン網膜症について知りたい方は必見です。...

2.S-1(TS-1)

TS-1の眼への影響この記事ではTS-1の眼への影響について解説しています。TS-1の眼への影響について知りたい方は必見です。...

神経内科

1.フィンゴリモド(イムセラ®、ジレニア®)

多発性硬化症の再発予防、身体的障害の進行抑制に用いられる。投与初期に黄斑浮腫を生じることが知られている。海外の臨床試験だと、0.5㎎/日で0.2%、1.25㎎/日で1.4%とされています。多くは投与開始3~4カ月までに見られる。ただし、日本では使用経験が少ないため定かではない。

また、糖尿病、ぶどう膜炎の既往があると、黄斑浮腫の発現率が高くなるとされている。多くは無症候性であるが、投与開始後3~4カ月後に眼底検査を含む諸検査が必要とされている。投与中止で多くは改善する。

2.抗AchE阻害薬

縮瞳および調節痙攣(通常量の内服では明らかな縮瞳はまれ。中毒量または眼瞼挙上目的で使用する際に明らかになる。)

リウマチ科

1.金製剤

角膜実質沈着物(0.1%未満)

内科

1.アロプリノール

外国における疫学調査報告³で、白内障があらわれたとの報告がある。

2.インドメタシン

渦巻、線状の角膜(上皮内)混濁

3.キニーネ

初期には網膜静脈の拡張が見られる。その後数か月で網膜動脈狭小化、乳頭蒼白化がみられ、末期には眼底全体に網膜萎縮と色素沈着が見られる。霧視、光視症、視野障害、視力低下を生じる。排泄が遅いため中止後も遷延する可能性がある。

4.クロロキン

(ヒドロキシ)クロロキン網膜症クロロキンは目に影響を及ぼす薬として知られています。この記事ではそんなクロロキン網膜症について解説しています。クロロキン網膜症について知りたい方は必見です。...

5.ステロイド

ステロイド白内障とステロイド緑内障については『ステロイド白内障』、『ステロイド緑内障』をご覧ください。

その他にも中心性漿液性網脈絡膜症(血管網膜関門破綻による)、多発性後極部網膜色素上皮症(MPPE、血管網膜関門破綻による)などがありうる。

6.ナイアシン(ビタミンB3)

多量の投与でドライアイ、視力低下、眼瞼の退色、眉毛と睫毛の脱毛、角膜炎。

7.シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン

抗悪性腫瘍薬として知られ、眼科的な副作用は網膜症視神経症が知られている。薬剤に含まれる重金属による毒性あるいは虚血が原因とされる。特に、頚静脈大量投与、頚動脈投与、腎障害がある患者に毒性を生じやすいとされている。

症状は一過性の皮質盲、うっ血乳頭、視神経症、海綿静脈洞症候群、網脈絡膜虚血症状、網膜色素上皮障害などを呈する。治療は投与方法の変更等を検討することだが、視力予後は不良とされる。

婦人科

1.タモキシフェン(ノルバデックス®、タスオミン®)

タモキシフェン網膜症この記事ではタモキシフェン網膜症について解説しています。タモキシフェン網膜症について知りたい方は必見です。...

精神科

1.フェノチアジン系抗精神病薬

まれに角膜後面への色素沈着、角膜内皮細胞数が著名に減少し角膜浮腫を起こすことがある。また、点状表層角膜炎を生じうる。

抗コリン作用があるため、閉塞隅角の患者には眼圧上昇、緑内障発作をきたしうる。白内障(特に前極白内障)や網膜症をきたすこともある。網膜症があればERGでa波、b波の振幅低下、律動様小波の減弱が見られる。どの副作用も内服をやめても不可逆的なこともある。

クロルプロマジン(コントミン®、ウインタミン®)

フェノチアジン系抗精神病薬の一つ。通常使用量(50-450㎎/日)を超える大量使用(800-1000mg/日)で発症しやすい。白内障、長期投与や大量投与で角膜(実質)に薬剤沈着²・結膜にも薬剤は沈着する。

水晶体の変化は角膜よりも先に起こり、初期には茶褐色の瞳孔領中央に塵状色素沈着を生じる。これらは縫合線に沿った星状混濁へ進行し、最終的には前極白内障になるが視力障害をきたすことは少ない。

2.ハロペリドール:

白内障、眼の調節障害、長期又は大量投与による角膜混濁、角膜等の色素沈着

糖尿病内科

1.シタグリプチン

網膜症を悪化させる可能性あり。

2.ピオグリタゾン

既存の黄斑浮腫が内服早期に増悪する恐れがある。

神経内科

フィンゴリモド、シポニモドの副作用として、急性網膜壊死、黄斑浮腫(発症率は0.3%、内服開始後3ヶ月以内に多い)がある。無症状例も多い。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針 第3版
  2. KECG MEDICS各ページ
  3. Arch Ophthalmol. 1998 Dec;116(12):1652
  4. 眼科学第2版
  5. 専門医のための眼科診療クオリファイ5全身疾患と眼
  6. クオリファイ7視神経疾患のすべて(専門医のための眼科診療クオリファイ)
  7. 覚えておきたい神経眼科疾患.2021年12月臨時増刊号(63巻 13号)
  8. あたらしい眼科40(1):43-50.2023
  9. Ethambutol-induced optic neuropathy: a nationwide population-based study from Taiwan
  10. Drug-related mitochondrial optic neuropathies
  11. Diagnostic value of ganglion cell-inner plexiform layer for early detection of ethambutol-induced optic neuropathy
  12. Longitudinal evaluation of visual function and structure for detection of subclinical Ethambutol-induced optic neuropathy
  13. Neuro-ophthalmologic side-effects of systemic medications
  14. Optic neuritis and bitemporal hemianopsia associated with isoniazid treatment in end-stage renal failure
  15. Linezolid-associated toxic optic neuropathy
  16. Linezolid-induced optic neuropathy
  17. Mitochondrial Impairment in Antibiotic Induced Toxic Optic Neuropathies
  18. Amiodarone-associated optic neuropathy: a critical review
  19. Amiodarone-Associated Optic Neuropathy: A Nationwide Study
  20. Amiodarone-Associated Optic Neuropathy: Clinical Review
  21. Dipeptidyl peptidase-4 inhibitor use and risk of diabetic retinopathy: A population-based study
  22. Fingolimod-associated macular edema: incidence, detection, and management
  23. Ethambutol-induced optic neuropathy: Functional and structural changes in the retina and optic nerve
  24. エタンブトールによる視神経障害に関する見解

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