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網膜分離症 | オンライン眼科
網膜とその疾患

網膜分離症

先天性網膜分離症

先天性網膜分離症とは

車輪状の嚢胞様所見を示す中心窩分離周辺の網膜分離を特徴とする。比較的稀な疾患で、罹病率は25000人に約1人である。X染色体劣性遺伝で通常、男性に発症する。原因遺伝子はXp22.2上のRS1遺伝子である。このRS1遺伝子はレチノスキシンをコードし、それは視細胞と双極細胞で細胞の接着や網膜の分化や機能に重要な役割を果たしている。

典型例は中心窩に大きな嚢胞があり、周囲に車軸状ないし放射状のひだを伴っている。金箔様反射が周辺網膜にしばしばみられ、約半数で眼底周辺部に網膜分離がある。周辺部網膜分離は耳下側に好発し、大きな網膜内層孔を伴うことがある。年齢が上がると黄斑病変は網膜萎縮となる。

先天性網膜分離症の症状

学童期に視力低下を自覚する。年齢が上がって黄斑萎縮をきたすと、視力は0.1に低下しうるが、若年者であれば通常は0.2以上であることが多い。重症例では生後から視力不良である。新生児の硝子体出血や出血性網膜剥離は本症例を疑う。

先天性網膜分離症の診断

1.検眼鏡所見

  • 両眼性の嚢胞様黄斑浮腫
  • 車軸状ひだ
  • 眼底周辺の金箔様反射

2.光干渉断層計(OCT)

中心窩に嚢胞様黄斑浮腫があり、その周囲に網膜外層の嚢胞様変化が広く存在する。中心窩に嚢胞様変化がなくても、周囲網膜の外層に嚢胞様変化を認める。

Research Gate HPより引用

3.網膜電図(ERG)

律動様小波の減弱b波の振幅がa波の振幅より小さい(陰性b波)を示す。これは幼少時から晩期に視細胞障害が進行し、a波振幅が小さくなる時も認められる。また、網膜分離が中心窩に限局している時にも認める。

Ento Key HPより引用

先天性網膜分離症の治療

硝子体手術をすれば中心窩の嚢胞は平坦化できるが、視力は良くならない。一方で、自然経過でその中心窩にある嚢胞は消失することもある。よって、硝子体手術は術者の判断によるが、網膜剥離を生じていれば硝子体手術を行う。

先天性網膜分離症の予後

進行は緩徐で、網膜剥離や硝子体出血などなければ0.1以上の視力は維持できる。しかし、黄斑萎縮があると0.1以下になりうる。

後天性網膜分離症

後天性網膜分離症とは

神経網膜が2層に分離する状態を網膜分離症といい、後天性網膜分離症では外網状層>内顆粒層に分離が生じる。加齢性(老人性)と続発性があり、加齢性網膜分離症は40歳以上の7~30%に発症するとされている。

加齢性網膜分離症は眼性に発症し、成人の周辺部網膜を端とする生理的嚢胞様変性が融合し、分離を形成する。また、耳下側網膜周辺部に多く発生(70%)する。

続発性網膜分離症の原因としては増殖膜または硝子体牽引、嚢胞性変化、網膜内出血および滲出または炎症があり、具体的には糖尿病網膜症陳旧性網膜剥離加齢黄斑変性未熟児網膜症Coats病などが挙げられる。

後天性網膜分離症の症状

後極部まで進行することはまれで、視力は正常であることが多い。進行は緩徐で、赤道部を越えると視野欠損などの自覚症状を認めることがある。

後天性網膜分離症の診断

眼底検査あるいは光干渉断層計(OCT)で網膜分離を確認する。

  • 周辺部網膜ドーム状隆起
  • water silk appearance:隆起表面は平滑で、濡れたように輝いて見える
  • snow flakes:分離層の内層裏面に散在する黄白色の顆粒状混濁
  • beaten metal apperance:金属をたたいたような小さな円形のくぼみ
  • wwp:white with pressure:強膜圧迫部は白濁する

後天性網膜分離症の治療

原則は経過観察を行う。外層孔が生じ、網膜外層剥離が生じても危険性は低く、積極的な治療は不要とされる。しかし、網膜内・外孔が生じ、網膜剥離になった場合(0.05%程度)は硝子体手術など手術加療を行う。

近視性網膜中心窩分離症(MF)

近視性網膜中心窩分離症(MF)とは

網膜内層の分離であり、現在では黄斑円孔を合併するものも含めることが多い。診断には光干渉断層計(OCT)が有効で、治療は硝子体手術が基本である。原因は不明だが、強度近視眼における眼軸伸長、後部ぶどう腫形成と、硝子体や内境界膜、網膜血管の牽引などが関与しているとされている。

近視性網膜中心窩分離症(MF)の症状

視力低下、中心暗点、歪視、霧視などがある。強度近視眼では網脈絡膜萎縮のためもともと視力低下例もあり、自覚症状が乏しい例もある。

近視性網膜中心窩分離症(MF)の診断

OCTにて網膜内層分離および網膜間隙に架橋構造を認め、黄斑円孔や黄斑部剥離を伴う症例もある。

黄斑円孔網膜剥離と鑑別すべきであるが、MFは網膜内層で剥離しているのに対して、黄斑円孔網膜剥離は全層で剥離していることが鑑別点となる。

近視性網膜中心窩分離症(MF)の治療

進行は緩徐だが、自然経過では約半数が数年のうちに黄斑円孔や黄斑円孔網膜剥離へ進展する。治療には硝子体手術が一般的で、強膜バックリング手術を行う施設もある。

近視性網膜中心窩分離症(MF)の予後

手術後、網膜復位までに数カ月以上かかることがあるが、硝子体手術ではほぼ全例で最終的に復位が期待できる。視力予後は症例によるが、術前に黄斑部剥離を伴うものが最も視力予後良好で、術前後に黄斑円孔を生じると視力予後不良となる。

近視性網膜分離症

近視性網膜分離症は強度近視特有の合併症で、後部ぶどう腫を有する眼の9~34%程度に生じると報告されている。原因は不明だが、黄斑部の牽引が原因と考えられている。しかし、検眼鏡的に診断することは困難なため、OCT検査で定期的に経過観察する。

近視性網膜分離症の悪化により黄斑円孔網膜剥離を認めることがある。その危険因子として有意な相関があったのは、視細胞内節外節接合部(IS/OS)ラインの欠損だけであった。欠損がある症例は欠損がない症例に比べて、黄斑円孔網膜剥離の発症が有意に高いとされている。よって、程度が強い場合は慎重な経過観察が必要で、悪化傾向があればIS/OSラインの状態に注意を払いながら硝子体手術を行う。

参考文献

  1. 黄斑疾患診療AtoZ
  2. 今日の眼疾患治療指針第3版
  3. 眼科学第2版

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