角膜とその疾患

アカントアメーバ角膜炎

アカントアメーバ角膜炎(AK)とは

1974年にNagingtonらが初報告し、日本では1988年に石橋らが初報告した。アカントアメーバは土壌や淡水に生息し、外傷をきっかけに感染するとされてきた。しかし、近年はコンタクトレンズ(CL)装用者を中心に患者数が増加している。

発症頻度は不明であるが、CL装用者が85~90%を占めるとの報告が多い。また2011年日本で行われた研究では、重症の角膜感染症患者350人中85人、24.3%の角膜標本からアカントアメーバが検出されたという報告もある²。

アカントアメーバは汚染した水道水や生理食塩水で保存している間にレンズに付着すると考えられ、レンズをすすぐ程度では付着しない³。また、HCLよりもSCLで付着しやすい。

アカントアメーバ角膜炎(AK)の病因・病態

外傷 or CLにより角膜上皮障害が生じる
→障害部位でアカントアメーバが付着増殖
→角膜上皮障害が修復せずそこにアカントアメーバ付着
→アカントアメーバは上皮内を移動し感染病巣を形成する

アカントアメーバ角膜炎(AK)の分類¹

石橋らの病期分類①初期②移行期③完成期に分類される。

①初期

感染から1か月程度の時期に見られる。放射状角膜神経炎(radial keratoneuritis;RK)を認める。RKは角膜周辺部から中心に向かう角膜上皮~実質浅層に見られる線状の浸潤で、初期に極めて特徴的。はじめは数mm、本数も数本、進行すると長くなり、本数も増える。

②移行期

病変が次第に角膜中央に限局してくる。やや横長の輪状浸潤が見られるようになる。

③完成期

感染から1か月以降の時期に相当する。輪状浸潤が進行し、円板状角膜病変となる。円板状角膜病変は輪部からの強い血管侵入、前房蓄膿、角膜後面沈着物掻爬もしているため穿孔をきたしうる。

アカントアメーバ角膜炎(AK)の症状

主症状:激しい疼痛、充血、視力低下

※ごく初期は軽度の違和感のみだが、徐々に痛みと充血が増強する。痛みにより涙が増え、しばしば眼瞼腫脹を伴う。眼脂は少ない。さらに病期が進むと瞳孔中央に生じるため視力低下をきたす。

アカントアメーバ角膜炎(AK)の合併症

  • 角膜後面沈着物を伴う虹彩炎
  • 治療薬による角膜障害
  • 上皮障害治癒遅延
  • まれに穿孔

アカントアメーバ角膜炎(AK)の診断

①臨床所見②微生物学的検査を鑑みて診断する。

①臨床所見

A.初期

・初期から強い毛様充血輪部浮腫
・斑状の淡い混濁が散在し、これらが連なって線状・偽樹枝状の病変となる
放射状角膜神経炎(RK)は本症に特徴的所見

B.移行期・完成期

輪状混濁(瞳孔領付近で斑状混濁がリング状になる)
→中心まで拡大すると円板状混濁となる。

ステロイド内服はAKを進行、重症化させることがある¹。

②微生物学的検査

  • 擦過して栄養体(トロホゾイド)あるいは嚢子(シスト)を塗抹鏡検(グラム染色、ギムザ染色、ファンギフローラY、パーカーインクKOH)
    あるいは
  • アメーバ用培地に接種して培養
    あるいは
  • PCR法(18S ribosomal DNA)

※可能ならレンズケース内も検査することも診断に有用である¹。
※潰瘍では潰瘍底部よりも潰瘍辺縁部を擦過するのが基本である¹。

アカントアメーバ角膜炎(AK)の鑑別疾患

ヘルペスウイルス角膜炎と真菌性角膜炎:terminal bulbの有無。アカントアメーバ角膜炎は病変が隆起せず不整な線であり、上皮型とは鑑別可能。

移行期から完成期の病変は実質型ヘルペスや真菌症との鑑別が難しいが、円形病巣の辺縁は斑状混濁が集簇したように”ふわふわ”境界不明瞭である。ヘルペスは境界明瞭、真菌性は膿瘍形成が強い

アカントアメーバ角膜炎(AK)の治療

薬物治療外科的治療の2本立てで行う。初期の段階で治療介入し、円形病変へと進行しなけれ透明治癒が期待できる。治療反応しなければ穿孔、失明に至ることがある。

①薬物治療

1.消毒薬(グルコン酸クロルヘキシジン、ポビドンヨード、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB))やアゾール系抗真菌薬(フルコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール)、ミカファンギン¹、ピマリシン¹
2.消炎にはアトロピン(※ステロイド点眼は使用しない)
3.抗菌薬点眼薬(細菌混合感染対策として)

処方例:
1.ヘキザック水W(0.02%)1(~2¹)時間毎点眼(保険適用外)
2.アトロピン点眼液(1%)1日1~3回点眼
3.クラビット点眼液(1.5%)1日3回点眼

※全身投与として
内服:イトラコナゾール、フルコナゾール
点滴:ミカファンギン、ボリコナゾール

処方例:イトリゾール®(50)3~4プセル/日

②外科的治療

スパーテルなどを用いて病変部を広く掻爬する。病期及び所見により頻度は異なるが、初期から行い、週1~2回(1~3回¹)をめどに行う。

※合併症への対応:上皮の修復が遅い、角膜全体の透明性低下→治療薬によるものと考え、点眼薬の濃度を下げたり、掻爬の間隔を延ばす。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針 第3版
  2. 角膜混濁のすべて (専門医のための眼科診療クオリファイ)p173-
  3. Nippon Ganka Gakkai Zasshi [01 Feb 2011, 115(2):107-115]
  4. 角膜クリニック第2版p157
  5. 眼感染症診療マニュアル (眼科臨床エキスパート)p226-236
  6. 眼科学第2版p107-108
  7. 細隙灯顕微鏡用語活用アトラス事典

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