こんにちは!doctorK先生と一緒に記事を書かせていただいています、めめめ(TwitterID@ophthalmicgamer)と申します。関東で眼科医をしています。今回はややこしい(と思われがちな)緑内障の点眼薬についての話題です。
「入院してきた患者さんの緑内障持参薬点眼の意味がわからない!」「残薬がもうなくて院内採用もないけどどうしたらいいの?」「点眼しないと失明してしまうの?」などの内科・外科の先生のお問い合わせをよく受けるので、主な緑内障点眼についてまとめました。
「緑内障の薬は種類が多すぎるよ!!」とお困りの初期研修医の先生にもおすすめの内容だと思います。なお、わかりにくくなるので細かいものは記載していませんのでご了承ください。
- 緑内障点眼は大きくわけて5分類あり、合剤はその中の組み合わせになっている。院内採用がない場合は同分類内での薬剤に変更する。
- それでもない場合は退院までの間だけ、種類がかぶらないように別の薬剤を使用する or 退院まではあるものだけで対応し退院後すぐにかかりつけ眼科へ受診するよう指示する。
- 1週間程度であれば点眼しなかったから取り返しがつかなくなるということは(ほぼ)ないのでどうしようもないなら入院中は中止も選択肢としてありえる。
- よくわからなければ電話でもよいので眼科医に相談する。
※5分類と書きましたが、たくさん種類がある3分類+代えがきかない2分類に分けられます。分類と具体的な薬剤名と注意点を記載します(カッコ内は一般名)。
では、詳しくみていきましょう。
プロスタグランジン(PG)製剤
効果:房水流出促進
具体的な薬
キサラタン(ラタノプロスト)、トラバタンズ(トラボプロスト)、タプロス(タフルプロスト)、ルミガン(ビマトプロスト)
これらはすべて1日1回。使用する際は上眼瞼溝深化(DUES)(最多)、睫毛増生、色素沈着などの副作用に注意しましょう。この中でルミガンだけは他よりも効果も副作用もやや強い薬剤です。
眼圧下降幅はFP受容体作動薬の追加を除いては単剤で1-2mmHg程度にとどまる。
オミデネパグイソプロピル製剤(エイベリス®)
EP2受容体刺激薬で、眼圧下降作用においてラタノプロスト点眼薬に非劣性の点眼薬である。EP2受容体は毛様体と線維柱帯に分布しているため、オミデネパグイソプロピル製剤はぶどう膜強膜流出路および線維柱帯流出路に作用し、眼圧下降作用を示す。
1日1回点眼で、プロスタグランジン製剤にみられる、睫毛増生、色素沈着、上眼瞼溝深化(DUES)などの副作用はないが、結膜充血(22.8%)や角膜肥厚(6.7%)、黄斑浮腫(5.2%)、虹彩炎(3.4%)などを認める。
特に、眼内レンズ挿入眼の患者さんに使用禁忌であり、眼内レンズ挿入眼が他眼のみであっても、使用禁忌とされている。また、タプロスとの併用も羞明や虹彩炎など副作用を高頻度に認めるため、患眼はもちろん、他眼に使用することも禁忌とされている。
炭酸脱水酵素阻害薬:CAI
効果:房水産生抑制
具体的な薬
エイゾプト(ブリンゾラミド)1日2回、トルソプト(ドルゾラミド塩酸塩)1日2回
これは2種類だけです。ダイアモックス(アセタゾラミド)という経口薬もこの分類になります。
βブロッカー
効果:房水産生抑制
具体的な薬
チモプトール・リズモン(チモロールマレイン酸塩)、ミケラン・ブロキレート(カルテオロール塩酸塩)
名前は色々ですがこれも2種類です。βブロッカーですので喘息既往や不整脈既往の方の使用は注意してください。薬剤によって1日1回か2回です。
β遮断薬、炭酸脱水素酵素阻害薬のいずれも眼圧下降効果はあるが、眼圧下降幅は1-1.5mmHg程度である。
α2刺激薬
効果:房水産生抑制
具体的な薬
アイファガン(ブリモニジン塩酸塩)1日2回
ROCK阻害薬
効果:房水流出促進
具体的な薬
グラナテック(リパスジル塩酸塩水和物)1日2回
グラナテックは結膜充血が必発です。使用前には必ず患者さんにお伝えしましょう。
さらに、緑内障点眼には合剤が存在します。緑内障の治療は上記薬剤を組み合わせて使用していくため、病状が進むとどうしても薬の種類が増えてしまいコンプライアンス不良につながってしまいます。
人によっては1種類を1日3回と2種類を1日2回と1種類を1日1回…なんて方もいらっしゃいます。そのため、合剤をうまく組み合わせていくことが重要となります。
PG+βblocker
具体的な薬
ザラカム・ラタチモ、デュオトラバ・トラチモ、タプコム、ミケルナ
CAI+βblocker
具体的な薬
コソプト・ドルモロール、アゾルガ
いかがでしょうか?種類が多いようで、整理してみると意外とあっさりしていませんか?しかし、やはりよくわからなければ眼科医に相談するのがベストかと思います。よく使われている一般薬剤についてはこちら。
点眼薬の胎児への影響
プロスタノイド受容体関連薬には子宮筋収縮作用、ピロカルピンには胎盤潅流障害などがある。また、緑内障治療薬の乳汁への移行は、交感神経β受容体遮断薬、ブリモニジン酒石酸、および炭酸脱水素酵素阻害薬が確認されている。
参考文献
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