クロロキン網膜症とは
クロロキンはマラリアに対する抗マラリア薬として用いられるが、マラリア以外にも慢性腎炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などに用いられたが、クロロキン網膜症をきたすとして現在は国内で販売はされていない。
しかし、2015年9月にヒドロキシクロロキン硫酸塩がプラケニル®として発売され、SLEあるいは皮膚エリテマトーデス(CLE)に対する治療薬として使われるようになった。
網膜色素上皮細胞の代謝阻害によって、主に黄斑部の錐体に毒性を発現する。進行すると、網膜障害は不可逆性となり、薬剤投与を中止しても進行しうる。
報告により投与量や網膜症の診断に用いた検査、その基準などが異なるため、一概には言えないが、クロロキン網膜症の発症頻度は1%未満~8%程度とされている。5年以上の投与期間、薬剤投与量、高齢、腎機能・肝機能障害などが発症のリスクが高い。
クロロキン網膜症の症状と特徴
初期は自覚症状はないが、黄斑部では微細な顆粒状所見や脱色素斑を呈する。
進行すると、クロロキン網膜症で特徴的に見られる標的網膜症(bull’s eye maculopathy)、輪状暗点、動脈の狭細化、視神経萎縮を生じる。また、渦巻あるいは線状の角膜混濁 、白内障(20~40%に後嚢下混濁を生じる)を生じうる。
クロロキン網膜症の検査
- 視力検査
- 細隙灯顕微鏡検査
- 眼圧
- 眼底検査
- 色覚検査
- 視野検査(10-2が鋭敏とされる)
- SD-OCT(スペクトラルドメインOCT)
- ERG
2016年米国眼科学会のガイドラインでは、視野検査(ハンフリー10-2)とSD-OCTの両方を実施することが特に重要とされている。視野検査では10°以内で傍中心窩領域の輪状暗点で観察され、SD-OCTでは傍中心窩から黄斑辺縁領域にかけて網膜層における局所的な菲薄化を認める。
クロロキン網膜症の治療
早期発見と休薬が重要とされる。体外排泄が遅く、中止後も求心性に進行する恐れがあるため定期的な経過観察が必要である。
日本眼科医会によれば下記のように診察することが推奨されています。
1.処方前
2.処方開始後は1年に1回
※下記リスクがある場合は6カ月に1回など頻回に診察するのが望ましい。
- 腎機能障害、肝機能障害
- 累積投与量200g以上(1000gは要注意)
- 視力障害がある
- 高齢者
参考文献
- 眼科学第2版
- ヒドロキシクロロキン網膜症のスクリーニング(日本眼科医会)
- 専門医のための眼科診療クオリファイ5全身疾患と眼
- Hydroxychloroquine retinopathy – implications of research advances for rheumatology care
- The risk of toxic retinopathy in patients on long-term hydroxychloroquine therapy
- Recommendations on Screening for Chloroquine and Hydroxychloroquine Retinopathy (2016 Revision)
- Fingolimod-associated macular edema: incidence, detection, and management
- Long-Term Progression of Pericentral Hydroxychloroquine Retinopathy
- Pericentral retinopathy and racial differences in hydroxychloroquine toxicity