頚動脈海綿静脈洞瘻(CCF)とは
頚動脈海綿静脈洞瘻(CCF)は内頚動脈または外頚動脈から海綿静脈洞へ瘻孔が形成される状態で、海綿静脈洞圧が上昇する。Direct CCFは特発性が多いが、外傷性でも生じる。一方、Dural CCFでは先天性動静脈奇形(AVM)や高血圧、糖尿病などが原因となる。
頚動脈海綿静脈洞瘻(CCF)の分類
1)Direct CCF
内頚動脈本幹から海綿静脈洞へ直接流入するCCFで、一般的に短絡量が多いため症状は重症とされる。
2)Dural CCF
内頚動脈または外頚動脈の硬膜穿通枝から海綿静脈洞へ流入するCCFで、一般的に短絡量は少ないため症状は軽症とされる。中年以降の女性に多い。
頚動脈海綿静脈洞瘻(CCF)の症状
拍動性眼球突出、血管雑音、結膜の充血浮腫(メデューサの頭あるいはcork screw vesselsと呼ばれる)を三徴とする。一般的には片側性とされる。また、海綿静脈洞近傍には動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経が走行しているため、それら麻痺によって各症状をきたしうる(眼球運動障害による複視など)。外転神経が最も障害されやすい。他にも、上強膜静脈圧の上昇による眼圧上昇、網膜出血、網膜静脈・上強膜静脈の蛇行・拡張、網膜中心静脈閉塞、脈絡膜剥離、眼痛・頭痛、耳鳴などの症状を認めることがある。
Dural CCFは下錐体静脈洞などへ主に流出することで、上眼静脈への逆流が乏しいことがある。その場合、海綿静脈洞圧上昇の各症状を認めるが、結膜の充血浮腫などを認めないケースが存在する。
頚動脈海綿静脈洞瘻(CCF)の診断
診断はCT・MRIを行い、上眼静脈の拡張および海綿静脈洞、外眼筋の腫大を確認する。さらに、MRIでは正常の海綿静脈洞は血流速度が遅いため増強効果を認めるが、CCFでは血流速度が速いため無信号となる。しかし、確定診断には脳血管撮影が必須であり、内頚動脈または外頚動脈から海綿静脈洞への動静脈短絡を確認する。
頚動脈海綿静脈洞瘻(CCF)の治療と予後
脳外科にコンサルトし、治療方針を決定する。短絡量が少なければ数か月後に自然閉鎖することもあるため、眼症状が乏しければ経過観察を検討することもある。しかし、短絡量が多く、持続的な眼圧上昇や視力低下、複視を認める場合、自然閉鎖が難しい場合には外科的治療(血管内治療:経動脈的塞栓術と経静脈的塞栓術)の適応となる。もしCCFを放置すれば海綿静脈洞破裂や脳出血、くも膜下出血をきたすことがあるので注意が必要である。
高眼圧に対して線維柱帯切開術は適応にならない。理由としては上強膜静脈圧の上昇により、術後の大量の前房出血をきたしうるからである。また、線維柱帯切除術も脈絡膜がうっ血することで高度な脈絡膜剥離や浅前房をきたしやすい。