・悪性黒色腫関連網膜症(MAR)ってどんな病気なの?
・非腫瘍随伴網膜症(nPAIR)ってどんな病気なの?
と疑問をお持ちの方の悩みを解決できる記事になっています。
悪性腫瘍随伴網膜症とは
悪性腫瘍の直接浸潤や転移がないにもかかわらず、種々の中枢神経症状を呈するもののうち、特に網膜を障害するものを悪性腫瘍随伴網膜症という。発生機序は腫瘍組織に網膜特異的な抗原が異所性に発現し、その抗原に対する抗体が産生され、この抗体が網膜を障害すると考えられている。
悪性腫瘍随伴網膜症には
- 癌関連網膜症(cancer-associated retinopathy:CAR)
- 悪性黒色腫関連網膜症(malignant melanoma-associated retinopathy:MAR)
がある。
また、悪性腫瘍随伴網膜症に対して非腫瘍性網膜症(nPAIR)という疾患概念も存在する。
癌関連網膜症(CAR)について
CARは網膜色素変性症に類似しており、亜急性に進行する夜盲や光過敏症、視野狭窄や輪状暗点などの視野障害、視力低下などの症状を呈する。また、網膜中心動脈の狭細化やERGでのa波とb波の平坦化を認める。
CARは原発腫瘍の発見前に発症することが多いため、家族歴がなく、網膜色素変性症様の所見を認めた場合はCARを疑う必要がある。CARの原因腫瘍は肺小細胞癌が最多で、消化器系癌、婦人科系癌がこれに次ぐ。
CARの確定診断には、血清中の抗リカバリン抗体、抗hsc抗体、および他の網膜組織に対する自己抗体検出が重要である。治療は免疫抑制としてステロイド全身投与や免疫グロブリン大量投与、アザチオプリン、アレムツズマブ投与や、自己抗体除去のため血漿交換を行うこともあるが、治療方法は確立したものはない。
悪性黒色腫関連網膜症(MAR)について
夜盲や光過敏症はあるが、視野は中心暗点があり、ERGではnegative ERG(a波はほぼ正常で、b波は著名な低下)を示す。MARは血清中に抗網膜双極細胞抗体(TRPM1など)があれば診断は確定する。
悪性腫瘍随伴網膜症の診断
- 50歳以上の比較的高齢者
- 遺伝歴がないにも関わらず、網膜色素変性のような眼底像や視野狭窄を認める
- 軽度ぶどう膜炎にも関わらず、著しい視野狭窄(Goldmann視野計で中心暗点、輪状暗点など)や視力低下を認める
このような場合には本症を疑い、全身検索を行うべきとされる。確定診断には各種抗原抗体の同定を行う。また、抗体価はその病勢により変動するため、少なくとも3回以上測定する必要がある。
悪性腫瘍随伴網膜症の治療
治療方法は確立したものはない。