と疑問をお持ちの方の悩みを解決できる記事になっています。
急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)とは
眼底が正常であるにも関わらず、急激に視力低下や視野欠損を起こす網膜外層の病気を急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)という。発症の初期に光視症が出現することが多く、近視を有する若年女性に好発する。ときに自己免疫疾患(最多は橋本病、次いで多発性硬化症である)を合併する方もいる。
急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)の診断
診断基準
1.主要項目
1)急激に発症する視野欠損あるいは視力低下、片眼性が多いが、両眼性もありうる。
2)眼底検査およびフルオレセイン蛍光眼底造影検査 (FA)では、視野欠損 を説明できる明らかな異常が認められない。ただし、軽度の異常(網脈絡膜の色調異常や軽い乳頭発赤など)はありうる。
3)OCTにて、視野欠損部位に一致して網膜外層の構造異常(ellipsoid zoneの欠損あるいは不鮮明化とinterdigitation zoneの消失)がみられる。ただし、AZOORの軽症例や回復期では、interdigitation zoneのみ異常になることもある。
4)全視野ERGにおいて振幅低下、あるいは多局所ERGにおいて視野欠損部位に一致した振幅低下がみられる。
5)先天性/遺伝性網膜疾患、網膜血管性疾患やその他の網膜疾患、癌関連網膜症/自己免疫網膜症、ぶどう膜炎、外傷性網脈絡膜疾患、視神経疾患/中枢性疾患が除外できる。
2.副次項目
1)発症前に風邪様の症状を伴う。
2)発症時あるいは経過中に光視症(光がチカチカ見える)を訴える。
3)硝子体に軽度の炎症所見(細胞浮遊)がみられる。
4)青色光あるいは近赤外光による眼底自発蛍光にて、障害部位と健常部位の境界が分かる。
- 20~50歳代の若年者
- 急激な片眼の視力低下や視野欠損、光視症を伴う
→これらがあればAZOORを疑い光干渉断層計(OCT)を行う。眼底所見(52%)やフルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)では異常を示さないことが多い。しかし、視力地下、視野改善と悪化を繰り返し長期間経過する患者では、経過観察中に網膜動脈狭細化、網膜色素変性様のびまん性網脈絡膜萎縮がみられ、最終的には区域性あるいはびまん性に網脈絡膜萎縮をきたすことが多い。
視野欠損部位(マリオット盲点拡大や中心視野欠損が多い。)に一致して、網膜外層の異常があれば強くAZOORを疑う。典型例はellipsoid zone(EZ)、interdigitation zone(IZ)が欠損あるいは不明瞭化していることが多い。また、OCTは予後予測に役立ち、AZOORの改善とともに回復することが多く、逆にこの網膜外層の異常がある部位は機能回復は期待できない。
また、網膜電位図(ERG)も診断に有用で、視野欠損の範囲が広い症例では全視野ERGが低下する。この時、杆体ERGよりも錐体ERGの方が異常が大きく、錐体応答や30Hzフリッカ応答における振幅低下は診断に有用である。障害されている網膜の範囲が狭いときには、全視野ERGよりも多局所ERGや局所ERGの方が診断に有用である。この時、視野異常に一致して、多局所ERGの振幅が低下するため特に診断に有用である。その他にも、眼底自発蛍光で病変部と正常部位の境界が分かることがある(AZOOR線)。AZOOR病変の外側では正常な自然蛍光が観察され(zone 1)、AZOOR病変内では斑点状の過自発蛍光が観察される(zone 2)。脈絡膜萎縮部位は低自発蛍光が観察される(zone 3)。
急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)の治療と予後
確立された治療法はないが、自然に改善する軽症のものが多い。軽症例では無治療で経過観察とし、重症例ではステロイドパルス療法が行われることがある。具体的には、ソルメドロール注1000㎎を1時間で点滴静注を3日間行い、その後プレドニン(5mg)を6~8錠分2で内服し、漸減していくなどである。
AZOORは経過観察中に視機能が回復する患者もいるが、長期に渡り視野欠損が変化ないもの、また、海外の報告では初期には眼底所見がなくても、進行性に網脈絡膜萎縮をきたすことが多いとされている。
参考文献
- 今日の治療指針第3版
- 眼科学第2版
- あたらしい眼vol.39,No.8,2022
- Acute zonal occult outer retinopathy: a long-term follow-up study
- あたらしい眼vol.39,No.6,2022
- 急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)の診断ガイドライン
- Acute zonal occult outer retinopathy in Japanese patients: clinical features, visual function, and factors affecting visual function
- Acute zonal occult outer retinopathy: towards a set of diagnostic criteria
- Multifocal electroretinogram indicates visual field loss in acute zonal occult outer retinopathy