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小児の重症筋無力症 | オンライン眼科
全身疾患と目

小児の重症筋無力症

小児の重症筋無力症とは

15歳以下に発症した重症筋無力症を小児重症筋無力症という。発症機序は成人と変わらない。臨床型には眼筋型、全身型のほかに、潜在性全身型がある。

潜在性全身型は日本独自の病型で、症状は眼筋型であるが、反復筋電図で四肢筋に減衰現象を認める。将来的には全身型に移行しやすいとされる。小児眼筋型における潜在型の占める割合は高く、特に5歳以下発症例の半数が潜在型とされる。コリンエステラーゼ阻害薬に抵抗性を示す。

小児の重症筋無力症の疫学

重症筋無力症の約10%を占め、女児に多い。

眼筋型が約半数を占め、5歳未満では80.6%、5-9歳では61.5%、11歳以降では全身型の比率が増す。初発症状の85~90%が眼症状(眼瞼下垂が経過中最も多い)である。しかし、幼児では複視を訴えることはできず、見た目の変化から家族が発見しやすいため60%以上は初回に眼科を受診する。罹患筋は内直筋が多く、内斜視より外斜視となることが多い。

約半数が抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陰性で、dobule seronegative MGが大部分を占める[3]。MuSK抗体陽性は非常にまれである。抗AChR抗体が陰性の場合には、必ず抗MuSK抗体の測定を行う(同時測定は保険適用外)。その他に、低密度リポ蛋白質受容体関連蛋白質4(Lrp4)も病原性があるが、診断基準には含まれていない。

診断基準にある上方注視試験とアイスパック試験があるが、小児では偽陰性を示すことがある。そのため、塩酸エドロホニウム(テンシロン)試験(陽性率は80%以上)が行われることが多い。

その他特徴として下記がある。

  • 胸腺異常の合併が少ない。
  • 誘発筋電図における漸減現象は5歳未満発症例で20.3%に見られる。
重症筋無力症(MG)眼瞼下垂や複視を初発症状とすることが多い疾患として重症筋無力症が挙げられます。この記事ではそんな重症筋無力症の診断や治療に関して解説しています。重症筋無力症について知りたい方は必見です。...

小児の重症筋無力症の治療

  • 眼筋型では抗アセチルコリンコリンエステラーゼ(AchE)薬(ネオスチグミン)が第一選択薬である。
  • 全身型、潜在性全身型ではステロイドが第一選択薬である。
  • 抗MuSK抗体陽性例は成人より寛解率が低く、再発率も高い。また、抗AchE薬は無効か、クリーゼや過敏反応が誘発されるリスクがある。
  • 小児重症筋無力症はステロイド反応性が良いが、ステロイド治療は初期増悪、長期投与による成長障害に注意する。
  • 症状が消失しても、その量を数カ月維持し、その後漸減する。
  • 年少児では弱視治療を必要とする場合がある(5.5%)
  • 寛解率は25%である[]。

1.抗アセチルコリンコリンエステラーゼ(AchE)薬

眼筋型は抗アセチルコリンコリンエステラーゼ(AchE)薬の内服で治療を開始する。眼瞼下垂は眼球運動障害よりも先に治療に良好に反応する。なお、症状に応じて内服量は増減するが、効果が十分でない場合は、ステロイドへ移行する。

2.ステロイド

全身型および潜在性全身型はステロイド内服から開始し、症状に応じて体重1㎏あたり最大2㎎隔日まで漸増する。小児ではステロイド隔日投与が一般的だが、これはステロイドの副作用を予防するためである。なお、ステロイド加療では開始後2~5日目に重症筋無力症の症状が一過性に悪化する初期増悪に注意する必要がある。特に、全身型重症例やステロイドパルス療法では初期増悪のリスクが高いとされている。そのため、初回治療にステロイドパルス療法は行われない

3.免疫抑制療法

免疫療法をステロイドに併用することがある。どの臨床型でも併用されるのがタクロリムスで、体重1㎏あたり0.05㎎から内服開始し、血中濃度を測定しながら1日3㎎を上限とする。また、免疫グロブリン療法として入院で献血ヴェノグロブリンIH400㎎/kg/日を5日間投与することがある。しかし、無菌性髄膜炎を発症することがあるため、治療中に頭痛などの症状がないかをよく問診する必要がある。

4.胸腺摘出術

胸腺摘出術は、全身型に対する有効性は示されており、術後77%で症状が改善し、29%は完全寛解が得られたという報告がある。しかし、実際には術後に免疫機能異常が起こる可能性もあり、思春期以降で胸腺腫や胸腺過形成合併例に症例は限定されている。

眼瞼下垂があっても、marginal reflex distanceが1㎜あれば弱視にならないとされている。

小児の重症筋無力症の予後

上記治療により、内服中止可能となった完全寛解率は21~31%で成人発症例よりも高く、比較的予後は良好と入れる。また、発症から2年以内に、眼筋型から全身型へ変化することがあり注意が必要である。

眼症状から全身、球麻痺症状が出現するまで、発症後6カ月未満が約45%、6カ月~1年以内が約25%との報告がある。また、眼筋型から全身型へ84.1%が1年以内、97.7%が2年以内に移行したという報告もある[]。

参考文献

  1. クオリファイ5全身疾患と眼(専門医のための眼科診療クオリファイ)
  2. 今日の眼疾患治療指針第3版
  3. 重症筋無力症診療ガイドライン2014
  4. Kristen Fisher et al.:Pediatric Ocular Myasthenia Gravis.:Curr Treat Options Neurol 21:46.2019.
  5. Hiroyuki Murai et al.:Characteristics of myasthenia gravis according to onset-age: Japanese nationwide survey:J Neurol Sci 305:97-102.2011.
  6. Florencia Aguirre et al.:Prognosis of Ocular Myasthenia Gravis in an Argentinian Population:Eur Neurol 79:113-117.2018
  7. あたらしい眼科 Vol.38, No.9, 2021

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