今回の記事は眼科臨床実践講座2019のぶどう膜炎の後眼部所見の見極めをまとめた記事です。
ぶどう膜炎後眼部検査の注目ポイント
・硝子体混濁の性質は?
→細胞の大きさ、びまん性か塊状か
・網脈絡膜病変の性質は?
→大きさ、形、色、深さ、分布
・網膜血管病変の性質は?
→白鞘形成、白線化、分節状かびまん性か、動脈か静脈か
・両眼性?片眼性?
片眼性:急性網膜壊死・後天性眼トキソプラズマ症・CMV網膜炎両眼性:サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病
講演で提示された疾患
1.感染性ぶどう膜炎:急性網膜壊死、サイトメガロウイルス網膜炎、眼トキソプラズマ症、結核性ぶどう膜炎
2.眼内リンパ腫
3.非感染性ぶどう膜炎:サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病
※画像がメインでしたので、文字ベースで分かりづらいと思いますがご了承ください。
1.急性網膜壊死
A.急性網膜壊死(初期〜極期)
円周状に存在する網膜浅層の白色病変で、辺縁は顆粒状でぼんやりしている。網膜動脈炎は感染性ぶどう膜炎の重要な所見である。
B.急性網膜壊死(晩期)
網膜病変は境界が滑らかになり、血管周囲から退色していく。硝子体混濁が強くても周辺部の白色病変は比較的観察しやすい。
2.サイトメガロウイルス網膜炎
サイトメガロウイルス網膜炎(後極部型)→神経線維に沿って扇状に分布する。辺縁は顆粒状でぼんやり。免疫不全、免疫低下の背景因子を考慮する。
サイトメガロウイルス網膜炎(周辺部顆粒型)→血管とは無関係な分布で、辺縁は顆粒状でぼんやりしている。ドーナツ状が多い。
3.後天性眼トキソプラズマ症
網膜病変の中心は白色、周囲はぼんやり白濁(浮腫)。FAではBlack center という。硝子体混濁が強いと”霧の中のヘッドライト“に見える。周囲に色素沈着を伴う菲薄化した網膜瘢痕病巣あり。再発時には主病巣周囲に白色の衛星病巣を複数形成する。
4.結核性ぶどう膜炎
網膜出血、軟性白斑、広汎な網膜無灌流領域あり。網膜周辺部および後極部の網脈絡膜結節性病変あり。FAでは分節状の網膜静脈炎を認める。
5.眼内リンパ腫
前部硝子体細胞は大きいことが多い。オーロラ状、ヴェール状のびまん性硝子体混濁となる。網膜下病変は境界明瞭、不整形(勾玉)、黄白色、表面に色素塊が散在する。OCTでRPE下、Bruch膜上に存在する。腫瘤に一致して高自発蛍光を呈する。一方、網膜浸潤病変では、境界不明瞭な網膜黄白色病変で、OCTではRPE上下に浸潤病変を呈する。
6.サルコイドーシス
中間周辺部に散在する小円形の白色病変があり、瘢痕化したものは光凝固瘢痕に類似する。後極部網膜に散在する斑状網脈絡膜病変を認めたり、びまん性硝子体混濁を示し、癒合した大きな網膜病変を認めることも。
また、サルコイドーシスによる分節状網膜静脈炎は網膜静脈に付着する白色結節、蛍光眼底造影検査でのみ明瞭に描出される。
7.原田病
A.原田病(急性期)
視神経乳頭発赤腫脹、網膜の肥厚、RPEの波打ち、脈絡膜の肥厚と未構造化を認める。
B.原田病(慢性期)
夕焼け状眼底、視神経乳頭周囲萎縮、周辺部の多発斑状萎縮病変を認める。
8.ベーチェット病
A.ベーチェット病(眼底炎症発作)
後極部の網膜出血あるいは虚血、軟性白斑、白線化血管を認め、FAではしだ状蛍光漏出を認める。
B.ベーチェット病(血管炎)
蛍光眼底造影検査でのみ明瞭に描出されるびまん性網膜血管炎を認める。
C.ベーチェット病(萎縮期)
網脈絡膜萎縮、視神経乳頭萎縮、白線化血管を認める。