目の病気

急性網膜壊死(ARN)

ARNとは

単純ヘルペスウイルス(HSV)または水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因となる。強い前房炎症と次第に増強する硝子体混濁を認める。

ARNの診断基準

1.初期眼所見

  • 1a:前房炎症細胞(治療開始後も残る)または豚脂様角膜後面沈着物(整然と密に配列し、角膜裏面全体を覆うことが多い)
  • 1b:周辺網膜に1つまたは複数の黄白色病変(初期は顆粒状または斑状、次第に融合)
  • 1c:網膜動脈炎(炎症極期には閉塞性血管炎による静脈に沿った棍棒状の出血や、寛解期の主幹動脈の閉塞が特徴的)
  • 1d:視神経乳頭発赤
  • 1e:炎症性硝子体混濁
  • 1f:眼圧上昇(HSVでは高率、VZV半数)

※顆粒状病変は融合するかのように濃厚で境界明瞭な地図状白色病変(ウイルスによる直接障害に加え、ウイルスを排除しようとする炎症細胞の浸潤による閉塞性血管炎による浮腫)へと変化する。

※地図状病変は元の色調に戻っても、壊死しているためその部位の視機能は戻らない。

2.臨床経過

  • 2a:網膜病変が急速に円周方向に拡大
  • 2b:網膜裂孔あるいは網膜剥離の発生(約3~4週目に硝子体の器質化による不完全後部硝子体剥離が起こると同時に再び増強し、この時期を境に極端に菲薄化、脆弱化した網膜壊死部に硝子体からの強い牽引がかかるために多発裂孔原性網膜剥離を生じ、約7割の症例で網膜剥離を生じる。)
  • 2c:網膜血管閉塞(炎症極期には閉塞性血管炎による静脈に沿った棍棒状の出血や、寛解期の主幹動脈の閉塞が特徴的)
  • 2d:視神経萎縮
  • 2e:抗ウイルス薬に反応兄

3.眼内液のウイルス検査

PCRまたは抗体率でHSV-1、HSV-2、VZVのいずれかが陽性

眼内液PCRあるいは血清と眼内液中のウイルス抗体価を測定して算出する抗体率でも診断は可能である。

※ただし、発症10日以内には眼内の抗体産生が不十分である。また、血清抗体価だけでは診断はできない(∵既感染が多い)。

●確定診断群(ウイルス確認急性網膜壊死)

初期眼所見項目の1aと1b、および臨床経過項目のうち1つを認め、かつウイルス検査が陽性

▲臨床診断群(ウイルス未確認急性網膜壊死)

初期眼所見項目の1aと1bを含む4項目、および臨床経過項目のうち2項目を認めるが、ウイルス検査が陰性または未施行

ARNの治療

ARNの治療は下記の通り。なお、両眼発症例では左右眼の発症間隔は1か月以内が多いため、抗ウイルス薬の投与は初期療法を2週間行った後も2週間は続けた方が良い。

1.抗ウイルス療法

  • 初期療法(2週間):ゾビラックス注 10㎎/kg(体重)を補液200ml以上に溶解し、血中濃度を高く維持するために2時間以上かけゆっくり点滴静注

※点滴困難なら内服にてバルトレックス500㎎6錠分3

  • 継続療法(初期療法後2週間):バルトレックス500㎎6錠分3

 2.抗炎症療法

  • リンデロン点眼(1%)1日6回点眼で開始し、炎症漸減に従って1日2~4回
  • ミドリンM点眼(4%)1日1回点眼

3.抗潰瘍薬

ガスター錠(20㎎)2錠分2:ステロイド全身投与中は継続する。

4.抗血栓療法

バイアスピリン錠(100㎎)1錠分1で4週間

5.硝子体手術

網膜剥離あるいはその予防に対して硝子体手術を行う。

ARNの予後

一般的にはVZVによるARNの方が予後は悪い。多くが片眼性の発症だが、約15%の症例では経過中僚眼にも病変が出現する。両眼発症例では左右眼の発症間隔は1か月以内が多い。とはいえ、後発眼の病巣拡大は限定されており、視力予後は良好である。抗ウイルス薬開始後1週間で眼底にある黄白色日顆粒状病変はその進展が停止する。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針第3版

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