目の病気

ベーチェット病

ベーチェット病とは

ベーチェット病は口腔粘膜の潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、ブドウ膜炎などの急性炎症を反復しつつ、慢性の経過をたどる炎症性疾患である。シルクロード沿いの地域におけるベーチェット病患者のHLA-B51抗原陽性率は健常群と比較して高く、HLA-B51抗原を主体とした免疫遺伝学的な背景因子が発症に関係している可能性がある。

また、外的な原因として口腔内の連鎖球菌の影響、特に連鎖球菌由来のheat shock protein(HSP)の関与が指摘されている。日本におけるベーチェット病患者数は減少傾向となっている。また、眼症状の重症例は男性に多い傾向があり、全体として重症例は減少しつつある。

ベーチェット病の診断基準

日本では厚生労働省の定める診断基準、国際的には国際ベーチェット病研究グループの定める国際診断基準がある。眼症から見た診断についてはベーチェット病眼病変診断ガイドライン(2012年)を参考にして行われる。

ベーチェット病の眼所見

1.眼所見

①早期、病勢期

下記所見いずれかあるいは両方を繰り返すことが特徴的とされる。重症例では1カ月に数回、軽症例では年に1回程度とさまざまである。

  • 前眼部
    毛様充血、前房フレア及び細胞、虹彩後癒着、微細な角膜後面沈着物、前房蓄膿(サラサラなニボー形成、線維素析出は通常なく、虹彩結節や隅角結節を作ることはない。
  • 後眼部:

    網脈絡膜炎は眼底周辺部や後極部に網膜滲出斑として繰り返し現れ、周囲には網膜の浮腫や出血を伴う。その他にも閉塞性網膜血管炎によって網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)様の出血を生じることもある。炎症発作時には視神経乳頭の発赤腫脹がみられ、視神経乳頭に新生血管を生じ、硝子体出血の原因となりうる。硝子体混濁、網膜滲出斑、網膜出血を生じ、比較的速やかに(1〜2週間)で消失する。

②晩期
  • 網脈絡膜萎縮
  • 視神経萎縮
  • 続発性網膜剥離:急性期の炎症に伴う滲出性網膜剥離、慢性期の毛様体炎膜形成による牽引性網膜剥離がある。
  • 低眼圧(眼球癆):毛様体炎膜による牽引性網膜剥離によって低眼圧が起こる。
  • 網膜血管の白線化
  • 視神経乳頭の蒼白化

など

③その他眼合併症
  • 併発白内障
  • 続発緑内障:虹彩後癒着、虹彩・隅角の血管新生、ステロイドなど原因は様々挙げられる。
  • 嚢胞様黄斑浮腫(CME):炎症寛解期にも見られ、しばしば遷延化する。
  • 硝子体出血

2.全身所見

口腔内再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状(毛嚢炎様皮疹、結節性紅斑)、外陰部潰瘍、関節炎、副睾丸炎、消化管潰瘍、脳脊髄炎、血管炎など

ベーチェット病の検査

フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA):網膜血管からのシダ状(羊歯状)蛍光漏出

※このシダ状蛍光漏出は毛細血管レベルの炎症を示唆する所見で、眼底の広範囲にわたって存在する。炎症発作期だけでなく寛解期にも検出されることが多い。

ベーチェット病の鑑別疾患

  • 真菌性眼内炎:前房蓄膿、眼底に滲出斑、硝子体混濁あるが、滲出斑や硝子体混濁が進行性である点が異なる。
  • HLA-B27関連ぶどう膜炎:急性発症、前房蓄膿が粘稠性で山型線維素析出が高頻度にみられる。

ベーチェット病の治療

1.発作期の治療

基本的にはステロイド点眼薬(リンデロン1日4~6回)+散瞳薬(ミドリンM1日1~3回)を点眼し、消炎と虹彩後癒着抑制を図る。前房蓄膿を伴う激しい虹彩毛様体炎ならステロイド薬結膜下注射(リンデロン注2㎎(0.4%)(2㎎/0.5ml/A)1回0.2~0.3ml 1日1回)あるいはTenon嚢下注射(ケナコルトーA 水濁注40㎎/ml 1回0.5ml)を行う。

また、中等度あるいは高度の後眼部炎症にはステロイドTenon嚢下注射やプレドニゾロン30~40㎎/日の内服を短期間使用する。ステロイド全身投与は減量、中止で眼炎症発作を誘発しうるので、慎重な考えが一般的である。低用量のまま長期に使用した場合には炎症の抑制に有効なことがある。

2.発作抑制治療

第一選択

コルヒチン内服1日2回(通常totalで1.0㎎)(副作用:下痢など消化器症状、催奇形性、ミオパチー、末梢神経炎)

※コルヒチンは白血球遊走抑制作用あり。

第ニ選択

シクロスポリン1日5㎎/kgを1日2回に分けて経口投与腎機能障害が高率で、神経ベーチェット病の発現が20%程度

※シクロスポリンはT細胞を選択的に阻害する免疫抑制剤で、副作用予防のため血中濃度のモニタリングが必要とされる。

※コルヒチンと併用でミオパチーを生じることがある。

※ステロイドの全身投与は漸減、中止後に激しい炎症発作を起こすことがあるので避けた方が無難とされる。

第三選択

視機能維持難しい重症例なら早期にTNF-α阻害薬の導入を検討する。TNF-α阻害薬にはインフリキシマブ(レミケード®)アダリムマブがある。インフリキシマブは高い有効性が示されているが、アダリムマブは症例の蓄積が待たれる。なお、インフリキシマブではごく一部でははじめから効果が得られず(1次無効)、治療の途中から効果が減弱していく症例もある(2次無効)。また、いずれの薬剤も感染症を誘発、増悪させる可能性があり、特に結核や肝炎には注意が必要とされる。事前にそれら感染症がないかスクリーニングしておく必要がある。

その他:

  • アザチオプリンは海外で第一選択として使用されることも多い。
  • トリアムシノロンアセトニド硝子体注射は発作抑制効果あるが、繰り返しの注射が必要で、白内障や眼圧上昇などの副作用がある。
  • インターフェロンα2aは主に欧州ね使用されており、高い有効性が報告されている。
  • フルオシノロンアセトニド眼内埋植はステロイド薬を3年間一定量放出できるが白内障、眼圧上昇の副作用が高頻度にみられる

3.その他眼合併症の治療

白内障や続発緑内障を発症することがあり、それらは各治療方法に準ずる。一つ、閉塞性血管炎に対する網膜光凝固術は、激しい眼炎症発作を誘発することがあるので、安易におこなうべきではない。

ベーチェット病の予後

前眼部を中心に眼炎症発作を繰り返す場合には、消炎のたびに視機能は回復し、長期的な予後も良好のことが多い。一方で、後眼部を中心に炎症を繰り返す場合には、網膜動静脈血管の狭細化や白線化、網膜変性や視神経萎縮などをきたすため、重篤な視機能障害となりうる。

参考文献

  1. クオリファイ5全身疾患と眼(専門医のための眼科診療クオリファイ)
  2. 日本眼科学会会報誌1236
  3. 今日の眼疾患治療指針第3版

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オンライン眼科編集長兼眼科医プロライター/祖母の死→医師を目指す→一浪し眼科医/プロライターとしても500以上の記事を執筆/目の健康、眼科に関する記事をほぼ毎日作成/一緒にお仕事して下さる方はDMして下さい!目の健康に関する情報よ全国へ届け!