黄斑低形成とは
先天的に黄斑部が形態的・機能的に欠損している状態を黄斑低形成という。黄斑部の中心窩の減少または欠如、無血管領域(FAZ)の面積が縮小、黄斑を横切る網膜血管走行異常などを特徴とする。両眼性に視力低下や眼振を呈する。黄斑低形成には先天無虹彩症や眼白皮症をなど合併することが多いとされている。
正常な黄斑部の発達
ヒトでは、中心窩の正常な発達は胎生25週目から始まり、生後15~45カ月で完了する。
黄斑低形成の原因となる疾患
1.眼皮膚白皮症
眼皮膚白皮症は常染色体劣性遺伝で、メラニンの合成障害により、眼、皮膚、および毛髪の脱色素病変をきたす。眼底の色素脱出や虹彩の透光性の亢進が見られる。眼白皮症は眼のみに影響を及ぼす疾患で、X連鎖性劣性遺伝であり、GPR143遺伝子の変異による。眼底の色素脱出や虹彩の透光性の亢進が見られる。
眼皮膚白皮症や眼白皮症の眼症状は視力不良、眼振、斜視、黄斑低形成などがある。血小板機能異常のために出血傾向を示すHermansky-Pudlak症候群や出血傾向を示すChediak-Higasi症候群などでも白皮症が見られる。
2.真性小眼球症
真性小眼球症は強膜の肥厚を特徴とし、強度遠視や漿液性網膜剥離、網膜変性、網膜前膜などを併発する。真性小眼球症は遺伝性の疾患であることが明らかとなり、MFRPやPRSS56遺伝子の変異が報告されている。多くの症例では中心窩は欠失し、さらに網膜内層が突出して皺壁を生じる症例がある。
3.未熟児網膜症
4.杆体一色覚(全色盲)
症状は弱視、羞明、眼振を認める。黄斑低形成は杆体一色覚患者の50-80%に合併する。視細胞エリプソイドゾーンの欠失や視細胞層の萎縮がみられる。
5.家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)
6.Stickler症候群
7.その他
黄斑低形成をきたす疾患として色素失調症やDown症候群、視神経低形成などがある。
黄斑低形成の分類
Thomasらによる、OCTの断層画像をもとにした黄斑低形成のグレード分類
Grade | 特徴 |
---|---|
1 | 中心窩が浅く、網膜内層遺残を認めるが、網膜外層の発達は良好である。 |
2 | 中心窩が見られない。 |
3 | エリプソイドゾーンの隆起(foveal buldge)が欠失し、錐体細胞外節の特異化が認められない。 |
4 | 中心付近での外顆粒層の肥厚が無く、錐体細胞自体の成熟が見られない。 |
※Grade1と2では、錐体細胞の特異化現象が生じており、視力は比較的良好である。一方、Grade3と4では、錐体細胞の特異化現象が損なわれ、視力発達に障害があるため、視力は不良となる。
黄斑低形成の画像検査
- 蛍光眼底造影検査:FAZの描出、黄斑周囲の血管走行異常
- OCTA:網膜血管の描出、FAZの面積計測、網膜深層の毛細血管の評価
- 眼底自発蛍光撮影:短波長の自発蛍光は黄斑周囲では黄斑色素によってブロックされ低蛍光となるが、黄斑低形成眼ではブロックが見られないか軽減している。
※黄斑色素の減少や欠落が無虹彩症や眼白皮症で認められている。
先天無虹彩の診断と治療
弱視として経過観察していて、弱視訓練に反応が乏しい場合に、本疾患が疑われ発見されることが多い。光干渉断層計(OCT)を撮影し、中心窩の有無を確認することで診断できる。有効な治療法はないため、眼鏡等を用いて屈折矯正を行う。
参考文献
- 今日の眼疾患治療指針第3版
- 日本眼科学会専門医制度生涯教育講座[総説87]黄斑低形成