白内障とは
白内障とは「水晶体が混濁する疾患の総称」で、約80種の病型がある。
特に加齢によることが多く、初期混濁を含めた有病率は50歳代で約45%、60歳代で75%、70歳代で85%、80歳以上で100%となる。
中には明らかな混濁を示さず、局所的な変化で視機能障害を生じるタイプもある。危険因子として下記が挙げられる。
- 昔喫煙した人:3.75倍
- 現在喫煙している人:2.34倍
- 喘息あるいは慢性気管支炎:2.04倍
- 心血管疾患:1.96倍
- クロルプロマジンを300mg/日以上を90日間以上投与:8.8倍
- ステロイドを1600mg/日以上で1.69倍、5年以上投与で3.25倍
- マルチビタミンミネラルサプリで2.00倍、ステロイド内服で2.12倍
その他にも
- 高血圧は白内障のリスクを1.05〜1.45倍上昇させた
- アルコール大量摂取者(1日20gあるいは1週間で140g)は白内障のリスクは1.26倍まで上昇するが、節度ある飲酒量(1日20g以下)はそのリスクは0.88倍まで下がります
- 今まで喫煙したことある人は、ない人に比べて1.41-1.57倍の白内障になるリスクがある。また、過去に喫煙していた人より、現在も喫煙している人の方が白内障のリスクがより高い。
など様々である。
白内障の症状
- 視力障害
- 羞明
- 単眼性複視
- グレア
- コントラスト感度の低下
- 核白内障による近視化・不同視
これらの症状の多くは進行がきわめてゆっくりであるため、患者の多くは比較的高度な視力低下をきたすまで自分の視力低下に気が付かない。
白内障の診断
散瞳下、細隙灯顕微鏡により診断する。核混濁はスリット法、皮質混濁および後嚢下混濁は、徹照法により陰影として観察できる混濁だけを診断する。
白内障の分類
白内障の混濁病型としては、
- 核白内障
- 皮質白内障
- 後嚢下白内障
の3主病型がある。また、白内障の硬さについては下記のEmery-Little分類を用いる。
白内障の治療
1.点眼治療
治療薬はなく、予防目的の薬物投与しかない。
- 点眼薬
- ピノレキシン点眼薬(カタリン®、カリーユニ®):蛋白質の凝集を生じるキノイド物質を競合作用によって抑制する。
- グルタチオン点眼薬(タチオン®):酸化抑制。
- 内服薬
- チオプロニン(チオラ®):水晶体たんぱく質の凝集予防
- 牛車腎気丸
2.外科的治療
白内障の治療のためには最終的には白内障手術を行う必要があるが、特殊な状況を除けば手遅れになることはないので、不自由を感じていなければ手術を勧めることはないが、他の疾患の状況によってはこちらから手術を積極的に勧めることもある。
白内障手術をすすめる特殊な状況
白内障手術は患者の希望と意思が尊重されるが、下記の状況においては自覚症状や希望がない場合でも白内障手術が優先される。
- 膨化白内障による緑内障発作の危険性がある。
- 水晶体融解による炎症や眼圧上昇が生じた。
- 白内障が存在するため眼底疾患の管理・治療が困難である。
慎重適応
- 白内障以外の疾患で視力障害をきたしていると考えられる。
- 白内障手術によって他の眼疾患が増悪すると予想される。
通常であれば超音波水晶体乳化吸引術(PEA)を行い、眼内レンズ挿入術を行う。しかし、核硬度が高い、角膜混濁が強いなど難症例では嚢外摘出術(ECCE)、水晶体脱臼を伴う症例では嚢内摘出術(ICCE)が行われることもある。
超音波水晶体乳化吸引術(PEA)の手順
- 点眼麻酔やTenon嚢下麻酔を行う。
- 自己閉鎖創を作成する。
- 前嚢を円形に切開する。
- 核分割を行って核を破砕除去する。
- 眼内レンズを挿入する。
3.白内障手術の合併症
合併症は下記の通りであり、対応は各合併症により異なる。
術中合併症
- 後嚢破損
- 硝子体脱出
- 核落下
- 創口の熱傷
- 虹彩脱出
- 虹彩損傷
- 駆逐性出血
術後合併症
- 感染症
- 角膜内皮損傷
- 眼内レンズ偏位・落下
- 皮質残存
- 一過性眼圧上昇
- 前房出血
- 炎症遷延
- Descemet膜皺壁
- 網膜剥離
- 創口離開
など
白内障の予防
飲食物からのビタミンE摂取、飲食物とサプリからのビタミンE摂取、血清トコフェロール値はそれぞれ0.73倍、0.86倍、0.77倍であり、 飲食物とサプリの併用がより効果的である。ただ、ビタミンEの摂取量に比例して白内障のリスクが下がるわけではなく、ビタミンEを7mg/日以上取ると白内障のリスクは減少してくる。