おはようございます、doctorKです。
一気に冷え込んできて、そろそろ冬に入ってきましたね。冬になると、皆さんのお子さんは出ずっぱりになり、家でゲームやスマホをやる時間が増えるのではないでしょうか?
そこで心配になるのが、「視力が悪くなる」、眼科的には「近視が進む」ことではないでしょうか。
今日の記事では『子どもの目を悪くしないために最も効果的な方法とは?』と題して、近視が進むことを防ぐ方法を紹介します。
僕のブログではこのように日常生活で役に立つ、目に関する情報を専門書や論文を交えて分かりやすく説明しています。
論文の内容
今日紹介する論文は2016年に温州医科大学のJinhai Huangらが発表した論文で、タイトルは『Efficacy Comparison of 16 Interventions for Myopia Control in Children: A Network Meta-analysis』という論文です。
メタ分析(複数の分析をさらにまとめた信頼度が極めて高い分析)ですから信頼度は高いと思います。
分析したのは30本のランダム化比較試験で、合計5422個の眼です。かなりの数ですね。また、今回は近視の進行の評価として、1年毎の屈折力の抑制と眼軸長の変化を評価しています。
通常、近視が進行すると度が強くなり、眼軸長は長くなります。近視の屈折力は負の値を取るため、結果にあるように、屈折力の変化率が正の値であれば近視は改善したと判断できます。
また、近視が抑制できていれば眼軸長の変化率は負の値を取ります。つまり、結果の絶対値(数字の部分)が大きければ大きいほど近視は改善していると思ってください。
それでは結果を見ていきましょう。
Network meta-analysis showed that in comparison with placebo or single vision spectacle lenses, high-dose atropine (refraction change: 0.68 [0.52–0.84]; axial length change: −0.21 [−0.28 to −0.16]), moderate-dose atropine (refraction change: 0.53 [0.28–0.77]; axial length change: −0.21 [−0.32 to −0.12]), and low-dose atropine (refraction change: 0.53 [0.21–0.85]; axial length change: −0.15 [−0.25 to −0.05]) markedly slowed myopia progression. Pirenzepine (refraction change: 0.29 [0.05–0.52]; axial length change: −0.09 [−0.17 to −0.01]), orthokeratology (axial length change: −0.15 [−0.22 to −0.08]), and peripheral defocus modifying contact lenses (axial length change: −0.11 [−0.20 to −0.03]) showed moderate effects. Progressive addition spectacle lenses (refraction change: 0.14 [0.02–0.26]; axial length change: −0.04 [−0.09 to −0.01]) showed slight effects.
まとめると、プラセボ群あるいは通常の単焦点レンズと比較して、
- 高濃度のアトロピン塩酸塩点眼薬を使用すると屈折度の変化は0.68D、眼軸の変化は-0.21mm
- 中等度のアトロピン塩酸塩点眼薬を使用すると0.53D、-0.21mm
- 低濃度のアトロピン硫酸塩点眼薬を使用すると0.53D、-0,15mm
- ピレンゼピンは0.29D、-0.09mm
- オルソケラトロジーは-0.15mm
- 周辺部焦点修正コンタクトレンズは-0.11
- 累進屈折力眼鏡レンズは0.14D、-0.04
以上から、低濃度アトロピンは近視の抑制という点では非常に有効であると分かります。しかし、アトロピンには副作用も多く、アトロピン点眼薬が合わない方もいます。
また、近視で悩んでいる親御さんの中には「この論文だけでは決められない」という人もいらっしゃるでしょう。そんな方のために別の論文で同じような結論が出ています。
しかも、この研究はメタ分析なので非常に信頼度は高いです。『近視に最も効果が高い治療方法は?』という記事になりますので、こちらも一度ご覧ください。
それではまた次の記事でお会いしましょう!
参考文献
Ophthalmology 123 (4), 697-708, 2016